「Here Comes The Night」を語るヴァン・モリソンとゼム
ヴァン・モリソンを2度目のチャートに登場させた曲は、彼が駆け出しの頃に組んでいた北アイルランドのR&Bロック・バンド、ゼムによる1965年3月5日に初めてイギリスのレコード・ショップの店頭に並んだ曲だった。運悪く、10代のシンガーだったルルでは大失敗に終わった「Here Comes The Night」だったが、同曲のゼム・ヴァージョンをレコード・バイヤーたちが聴いたところ、瞬く間に2度目となるゼムのトップ10ヒット曲という結果になった。
最初のシングル「Don’t Start Crying Now」が不発に終わったゼムだったが、彼らのエネルギッシュな「Baby Please Don’t Go」のカヴァーでチャートを賑わせた。彼らも別のクラシック曲「Gloria」の後押しもあり、デッカ・レコードからのシングル曲は1965年2月の初めに全英チャートで第10位まで上昇した。
そのわずか数週間後、「Baby Please Don’t Go」と同じく、1964年10月にプロデューサー兼作曲家のバート・バーンズと共にレコーディングした「Here Comes The Night」で、彼らは再びレコードの棚に並んでいた。この生産的なブッキングに関して、レコード・ミラー紙がのリチャード・グリーンの記事はこう伝えた。「ひとつのレコーディング・セッションに、約4~5時間の作業を費やす。これが2つのスマッシュ・ヒット曲をプロデュースするためにゼムが費やした時間だ」
この曲を耳にしたルルと彼女のバンド、ザ・ラバーズは、その年の終わりごろにスロー・ヴァージョンとしてこの曲をリリースした。アイズレー・ブラザーズの「Shout! 」のカヴァーでセンセーショナルなデビューを飾ったスコットランド出身の歌手、ルルだったが、ゲリー・ゴフィンとキャロル・キングが書いたベディ・エヴェレットの「Can’t Here You No More」のリメイク曲はチャート入りを果たせなかった。彼女が歌った「Here Comes The Night」もチャートでは50位止まりだった。
ゼムのレコーディングで19歳だったヴァン・モリソンのヴォーカルは、セッション・ミュージシャンとして極めて需要の高い、他でもないジミー・ペイジのリズム・ギター、そしてゼムのビリー・ハリソンのリード・ギターによって引き立てられた。3月末には全英チャートの32位に登場したこのシングル曲はその後トップ10を守り抜いた5週間の間、4週目にはトップの座にいたザ・ビートルズの「Ticket To Ride (邦題:涙の乗車券)」に阻止されながらも第2位にまで上昇した。このシングルは全米チャートでは24位に登場した。
「僕らは常に自分たちが好きな種類のことをやっている」とヴァン・モリソンはレコード・ミラー紙の記事で語った。「トレンドなんてそんなものはないと僕らは思っている。僕らは自分たちのことをR&Bとも、他の名前でも呼ばない。だから2つのヒット曲ともそれぞれ違う種類なんだ。気に入った何かがあれば、僕らはやるだけさ」
Written by Paul Sexton
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