ジョン・マーティンのアルバムが、キャリア10年目にして初めてチャートインできた理由
ジョン・マーティンは遅咲きといわれる人物かもしれない。非常に惜しまれ、高く評価されたシンガー・ソングライターは、そこに至るまでの10年間に渡ってアイランド・レコードでアルバムを制作していたが、1978年2月4日にようやく全英チャート・デビューを果たした。それでもチャートに登場したのは1週間だけだったが、『One World』は彼の洗練されたソングライティングとパフォーマンスのスタイルがメインストリームの壁を打破していたことを示した。
60年代に当時の妻のベヴァリーとともにリリースした2枚のアルバムを含め、『One World』はジョン・マーティンの通算9枚目のスタジオ・アルバムであり、皮肉にも、当時もっと分かり易い楽曲よりだった1975年の『Sunday’s Child』に比べて、よりエクスペリメンタルな作品だった。しかし、当アルバムには「Couldn’t You Love More」が収録され、ジョン・マーティンはこのバラードをより商業的にアレンジし、1981年のアルバム『Glorious fool』にも収録したほど気に入っていた。また、『One World』で光るバラードのもうひとつは、チャーミングでストリングスが多い「Certain Surprise」だった。
これほどまでに努力したライヴ・パフォーマーが、やっとチャート入りしたのはそのライヴ活動のおかげだったというのもジョン・マーティンらしい。1977年9月にロンドンのマーキー・クラブで幾つかのライヴを行い、新曲をセットに当てはめようと努め、ジョン・マーティンはその翌月にさらに3回のライヴを行い、『One World』の11月のリリースを控えての全英ツアーへの準備を整えた。
この全英ツアーのスケジュールには、慣れ親しんだ大学でのライヴもあり、エディンバラ、グラスゴー、ブリストルとギルドフォード、そしてロンドンのレインボー・シアターも含まれていた。そして1978年1月10日にジョン・マーティンはBBCの撮影のため、ロンドンのコールゲイト・シアターでライヴを行った。
BBC『Old Grey Whistle Test』のスペシャル番組として放送されたそのコンサートが、ジョン・マーティンのパフォーマーとしての魅力をより多くのオーディエンスへと伝えることになった。同じ夜にBBC2でも放送され、23:15に『Whistle Test』のプレゼンターだったボブ・ハリスが夜のニュースの後、そして24時間いつでもテレビが流れている今の時代にはおかしいかもしれないが、テレビ局が放送を終える直前に紹介したのだった。
その番組の放送のおかげで、『One World』が全英アルバム・チャートで54位という記録を達成し、ジョン・マーティンのファンクラブはさらに拡大し続けていったのだ。
Written by Paul Sexton
ジョン・マーティン『One World』