ボブ・マーリーが世界的成功を収めるターニング・ポイントは「No Woman, No Cry」のライブ音源
今では想像することさえ難しいが、かつてのボブ・マーリーは世界的な大スターではなかった。しかしザ・ウェイラーズの「Simmer Down」がジャマイカでチャートの1位になってから11年後の1975年9月27日、ついに歴史的な転機が訪れた。ライヴ録音のシングル「No Woman, No Cry」で、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの名が全英チャートに初登場したのである。
この「No Woman, No Cry」はザ・ウェイラーズがジャマイカ以外で出した初ヒットだった。珍しいことに、この曲はスタジオ録音よりもライヴ・ヴァージョンのほうがはるかに有名になっている。オリジナルの録音はザ・ウェイラーズの1974年のアルバム『Natty Dread』に収録されていたが、シングルは1975年7月にロンドンのライシアム・シアターで行われた有名なコンサートのライヴ音源が収録されている。このコンサートの音源は、同じ年の12月にアルバム『Live!』にも収録された。
「No Woman, No Cry」は混じりっけなしのジャマイカ文化を伝える作品であり、その鮮烈な歌詞はトレンチ・タウンの貧しい生活を描いていた。アイランド・レコードの社長クリス・ブラックウェルは、やがてレゲエのスーパースターとなるボブ・マーリーに次のような手紙を送っていた。1975年8月20日付けのその手紙には、人気が爆発する前の興味深い状況が垣間見える。
「親愛なるボブへ。ライシアム・シアターで録音した‘No Woman No Cry’と‘Kinky Reggae’のミックスが完成した。出来映えは素晴らしく、聴いた人はみんな気に入ってくれたよ。アイランドはこの2曲をシングルにする予定だ。A面は‘No Woman No Cry’に、B面は’Kinky Reggae’になる。ジャマイカでも発売できるように、プレス用のスタンパーとサンプル盤をそちらに送るよ。9月9日ごろに何日かジャマイカに滞在する予定なので、そのときにまた会おう」。
素晴らしいライヴ・ミュージシャンとして、またレゲエ・ミュージックの新たな親善大使としてボブ・マーリーが世界的に有名になると、このシングルは全英チャートの22位にまで上がった。またオランダやニュージーランドでもトップ30入りのヒットになっている。
ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズは、ゆっくりではあったものの、着実に世界的大スターの仲間入りを果たしていった。「No Woman, No Cry」がヒットしたおかげで、アルバム『Natty Dread』は遅ればせながら1975年10月に全英チャートにランク入りしている。しかしボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズがイギリスで初のトップ20ヒット「Exodus」を出すのは、さらに1年半後だった。
Written by Paul Sexton
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パンクで揺れる激動のロンドンで録音された後期の重要アルバムにして、アイランド第6作。1999年にタイム誌により、「20世紀最高の音楽アルバム (the best music album of the 20th century)」に選ばれた本作が40周年を迎える今年6月に3枚組豪華エディションで登場!!ディスク2にはジギー・マーリーによって再構築された『『Exodus 40 : The Movement Continues』を収録
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