ビリー・ギボンズが語るB.B.キング、ZZトップ、そして新作『The Big Bad Blues』
2018年9月に発売された『The Big Bad Blues』は、ZZトップのヴォーカリスト/ギタリストであるビリー・F・ギボンズの2枚目のソロ・アルバムだ。このアルバムで、ギボンズは今までずっとインスピレーションの源となってきた音楽、つまりブルースをフルスロットルで演奏している。最初のソロ・アルバム『Perfectamundo』でキューバ音楽を”ギボンズ流”に改造したあと、彼は次のプロジェクトで自らのルーツであるブルースを新たに仕立て直すことを求められた。
今回uDiscovermusicの独占インタビューに応じてくれたギボンズはこう語った。「俺は手を挙げて宣誓したよ。”ブルースは俺たちの出発点、今も俺の土台にあります”ってね」
このアルバムは、”不穏な幕開け”から発展していったという。「俺たちはセッションを始めたんだけど、それが録音されてることに気づいたのはずっとあとのことだった」。そのセッションでは、「Crackin’ Up」や「Rollin’ And Tumblin’」といったマディ・ウォーターズやボ・ディドリーの曲が採り上げられていた。「今こうして『The Big Bad Blues』というかたちになったアルバムは、もともとそういうカヴァー曲の演奏がきっかけで、ブルースっぽい方向に転がり始めたんだ。それを、転がるままに任せたというわけさ」。
テキサス州ヒューストンのスタジオで、ギボンズと彼のバンド(古典的なパワー・トリオ編成で、他のメンバーはガンズ・アンド・ローゼズのマット・ソーラムとオースティン・”レフト・ハンド”・ハンクス)はセッションを続けた。そのスタジオの向かいにあるホールでは、ギボンズの長年のパートナーであるフランク・ベアードとダスティン・ヒルがZZトップの新作を準備していた。「フランクもダスティンもこう言ってくれたんだ。“いいよ、そっちはそっちで自分の活動をやってればいい。こっちは玉ネギの皮を剥いて、ZZトップの新曲を用意しとくから” ってね」。さらにギボンズはこう語る。「おかげですごく自信がついた。信頼できて繰り返しに耐えるもの、つまりZZトップっぽい枠組みのなかで新しいものができるかもしれないと思ったんだ」。
B.B.キングがギターを弾く姿を見て
ギボンズは幼少期にブルースが好きになった。そのきっかけは、子供のころに見たエルヴィス・プレスリーだ。また7歳のときには、ヒューストンでB.B.キングのレコーディング・セッションを目撃している。「B.B.キングがギターを弾く姿を見て、”これだ!”と思ったんだ」とギボンズは語る。
「伝統主義者としてブルースという形式の音楽を解釈する場合と、あの形式を改めて拡大しようとする場合とでは、はっきりとした違いがある。親友のキース・リチャーズはこう言ってた。“ああ、あの同じ3コードを使おうじゃないか。でもそれを拡大して、新しいものを作ってみよう”って」。
さらにギボンズは言う。「今の時代の中で何かを作り出すという点では、俺たちは運が良いほうだね。というのも、俺たちは”解釈するもの”として見られてるからだ。うまい具合に、ブルースの創始者たちが遺してくれた曲は今も古びていない。ああいうブルースのレコードを繰り返し繰り返し聴いてると、ああいう枠組みの世界に浸かって、当時はこんな風だったに違いないと想像することができる。昔と変わらず、ブルースというごくごくシンプルな3コードのやり方は今も続いてる。そうして、だいたい10年周期で再発見されてる。誰かがこれに出くわすわけだ。“ああ、こんな音楽は知らなかった。ブルースっていうのか”っていう風に。そういうことさ」。
活動を続けてきた秘訣
彼の説に従うとするなら、ブルースはZZトップが活動しているあいだに少なくとも5回は再発見されてきたことになる。1969年に活動を始めたZZトップは、大記録を打ち立てようとしている。つまり、結成当時のメンバー編成のまま、50年間活動を続けてきた史上初のグループになろうとしているのだ。
「今どきの夫婦よりも長続きしてる」とギボンズは認める。「ステージに出るとき、誰が最初にミスするのかわからない。俺たちは、ミスのことを”バハマ行き”って呼んでる。つまり、行くのは簡単だけど戻るのは厄介ってことだな」。
音楽業界では、トゲトゲしい解散劇や悲劇的な早世がかなり見られる。そんな業界で、これほど長く活動を続けてきたのには何か秘訣があったのだろうか?
「単刀直入に言えば、1人1人別々のツアー・バスに乗ること。それに尽きるね」
Written By Jason Draper
ビリー・ギボンズ『The Big Bad Blues』