ザ・フーのベスト・ソング:必聴のロックンロール・ナンバー20選【動画付】

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Photo: Chris Morphet/Redferns

ザ・フー(The Who)のディスコグラフィーはまさに圧巻と言うにふさわしい。ザ・フーに改名する前に、ザ・ハイ・ナンバーズ名義でリリースしたスウィンギング・モッズのアンセム「Zoot Suit」からわずか3年で「I Can See For Miles (恋のマジック・アイ) 」の強烈なサイケデリアへ、そしてタフな反抗精神の「Won’t Get Fooled Again (無法の世界) 」からシンセ・ポップの要素を取り入れた「Eminence Front」へと、彼らの音楽は急速に進化していった。

それらはすべて、レコーディングされた時代精神を反映しているわけだが、多くの場合はそうしたトレンドの枠を超えて「時代を超越する」という類稀なる価値を得ることに成功している。

何よりまず、バンドのメンバー個性が強烈だ。ピート・タウンゼントのトレードマークと言える、風車よろしく腕を振り回すギター・プレイ (タウンゼントによれば、これはローリング・ストーンズのキース・リチャーズから盗んだものだという) 、マイクのコードを掴み振り回すロジャー・ダルトリー、ストイックな存在感とテクニカルな運指のベース・プレイで存在感を放つジョン・エントウィッスル、そしてドラム・キットの後ろで竜巻のような動きを見せるキース・ムーン。ステージの締めくくりに披露する機材の破壊も、儀式と言っていいもいい彼らのトレードマークだ。

ロンドンのクラブ、マーキーでファンの鼓膜を痛めつけながら闘志を燃やしていた下積み時代から、世界中のアリーナを舞台にマルチメディア・スペクタクルで魅せるバンドになった現在に至るまで、ザ・フーは王座に君臨し続けている。

1978年にムーン、そして2002年にエントウィスルが亡くなり、タウンゼントとダルトリーの2人を核として活動を続ける現在も、そのポジションは揺らいでいない。最初のリハーサルから半世紀近く経てもなお、グループはシンフォニーに匹敵する3分間ロックを作り、壮大でありながらも往々にして親近感あふれるストーリーを語るコンセプト・アルバムを発表している。そんな彼らの代表曲20曲を紹介しよう。

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1960年代

1. I Can’t Explain

ザ・フーが母国UKでチャートの上位に躍り出たのは1964年、ザ・デトゥアーズの中心メンバーであるダルトリー、タウンゼント、エントウィッスルが、ドラマーにダグ・サンダムの後任としてムーンを加入させた年だ。

バンド名をザ・フーに変えた彼らは、この黄金のラインアップによるド迫力のライヴでイギリスのマスコミの注目を集め、1965年にはタウンゼントのギターが鳴り響くモッズ・ポップスの名曲「I Can’t Explain」で初のトップ10入りを果たした。

2. My Generation

この同じ年にリリースされて1960年代の若者達のアンセムになった「My Generation」では、グループにとってのチャート最高位をものにした。曲間にブレイクを連発するこの傑作はグループのライヴ・セットでの主役になり、その演奏時間はときには30分に及ぶこともあった。

3. Disguises

バンドは成長を続け、R&B風のロック・サウンドにインド音楽やサイケデリアの要素を加えながらその影響力を増していった。最初に明らかな変化を感じさせたのは1966年の「Disguises」だ。

これは『Ready Steady Who EP』に収録されていたトラックで、混沌としたサウンドが特徴的な作品だ。性別すら超えて外見を変えてみせる少女をテーマにしたこの曲におけるタウンゼントのリリカルな視点は、世代の賛歌やラブソングなどの枠を超えていた。

4. A Quick One, While He’s Away

1966年にリリースされたアルバム『A Quick One』のタイトル・トラックからもわかるが、彼は安易なシングルよりもコンセプチュアルな曲やアルバムへと視野を広げていった。このミニ・エピックと呼べる「A Quick One, While He’s Away」は6曲の小品で構成された組曲風のトラックで、9分間の中で小説のような物語が進んでいく。

 

5. A Quick One, While He’s Away (Live)

「A Quick One, While He’s Away」はスタジオ・ヴァージョンもすばらしいが、『The Rolling Stones’ Rock and Roll Circus』、『Live At Leeds』といったアルバムに収録されているヴァージョンに明らかな通り、この曲が最大限にその魅力を発揮したのはザ・フーのライヴにおいてであった。

6. I Can See For Miles (恋のマジック・アイ)

コンセプチュアルな音楽に向けられた彼らの情熱は、1967年の『The Who Sell Out』に結実した。同作は、UK南東部の沖合約4マイルに停泊していたボートから放送していた海賊放送局”Radio London”への愛情に満ちたトリビュート作品だ。広告やラジオから借用したジングルを楽しめるのでアルバムを通しで聴くのがベストだが、このアルバムからは「I Can See For Miles (恋のマジック・アイ) 」というすばらしいシングルが誕生している。

ステレオ効果を最大限に生かしたパンニングとダルトリーの華麗なヴォーカルでタイトルの広大さを表現したこの曲は、今に至るまでザ・フーの最高に強力なアンセムであり続けている。

7. Pinball Wizard (ピンボールの魔術師)

タウンゼントのイマジネーションは、ザ・フー60年代最後の作品で頂点に達したと言っても過言ではないだろう。アルバム『Tommy』には、目も耳も口も不自由だが、ピンボールの名手という”救世主”を主人公とした非常によく練られたストーリーの魅力もさることながら、グループの4人のメンバー全員の才能がこれでもかとばかりに詰め込まれていた。

特にダルトリーは同作でより魅力的なシンガーに成長を遂げたと言っていいだろう。今では彼らを代表する1曲になっている「Pinball Wizard (ピンボールの魔術師) 」ではブルージーな雰囲気を醸し出している。

8. We’re Not Gonna Take It (俺達はしないよ)

そして『Tommy』を締めくくる「We’re Not Gonna Take It (俺達はしないよ) 」ではいつものダルトリーの歌声に加えて華麗なファルセットを披露している。

 

1970年代

9. Summertime Blues

ザ・フーは当初からきわめて魅力的なライヴ・バンドとして知られていたが、そのパワーを初めて音盤に刻み込んだのが1970年にリリースされた『Live At Leeds』だった。オリジナル・アルバムはステージで披露されたすべての曲の中から8曲を抜粋したものだったが、エディ・コクランの「Summertime Blues」の迫力満点の演奏からはバンドの圧倒的なサウンドと存在感が伝わってくる。

10. Baba O’Riley 11. Won’t Get Fooled Again (無法の世界)

当初はさらなるコンセプト・アルバムをという目標で書かれた曲を中心にして制作されたアルバム『Who’s Next』を皮切りに、バンドは1970年代を通してハードでヘヴィなロックを探求し続けた。

終末後の世界に生きる若者達が失われたロック・ミュージックを学ぶという大きなストーリーは没になったものの、収録曲は大胆でドラマティックで、その中でタウンゼントはエレクトロニック・ミュージックへの新たな可能性を探っている。

今では伝説的存在であるARPシンセのイントロで始まる「Baba O’Riley」や、同じくARPが全編で鳴り続ける「Won’t Get Fooled Again (無法の世界) 」はその好例だ。

12. Behind Blue Eyes

一方、このアルバム『Who’s Next』には、重層的な構成を持ち不安な心情を歌う「Behind Blue Eyes」のように、より従来通りの詩的な歌詞を味わえる作品も収められている。

13. Love Reign O’er Me

タウンゼントは、1973年の『Quadrophenia (四重人格) 』の作曲とレコーディングによって再びスケールの大きなアイデアを手にした。この作品はバンドが発足して間もないころの、少年から大人になる時期のモッズ時代を振り返って書かれたストーリーによる2枚組アルバムだ。

しかし、収録曲のサウンドは若かりし当時のものとはかけ離れたもので、エントウィッスルのアレンジおよび演奏によるシンセサイザーやホーンが、絶妙に配されたSEとともに全面的にフィーチャーされている。そして、アルバムの最後を飾るパワフルな「Love, Reign o’er Me」で自身の声域の限界を超えて歌うダルトリーは、この曲の愛情を求める荒々しい叫びをより完全なものにしている。

14. The Seeker

1970年代のザ・フーは徹底的にバック・トゥ・ベーシックな姿勢を貫いた。おそらく、各メンバーがソロ・アルバムやサイド・プロジェクトに取りかかりやすくする狙いがあったのではないだろうか。ダイレクトで激しい彼ららしさは、一人の男が精神的な悟りを求めることを歌った「The Seeker」のような単発のシングルで頻繁に披露された。

15. Who Are You

1970年代の締めくくりにリリースした2枚のアルバムでザ・フーのそのパワーはさらに磨きがかかっていく。このうち2枚目に当たるのが、ポップとパンクの影響を融合させた傑作『Who Are You』だった。タイトル・トラックは問答無用の名曲で、タウンゼントの禁酒との闘いを歌ったその曲でうなり声を上げるダルトリーのヴォーカル・パフォーマンスは彼の最高の歌唱のひとつに数えられよう。

しかしこのアルバムは、一時代の終わりを告げる作品でもあった。『Who Are You』がリリースされた3ヶ月後、キース・ムーンが処方薬の過剰摂取による事故で亡くなったのである。

 

1980年代から現在まで

16. You Better You Bet

1980年代の前半、ザ・フーはキースを欠いたままその活動を維持していた。彼らの友人で元フェイセズのドラマーだったケニー・ジョーンズを起用し、ニュー・ウェイヴやラジオ・ポップのサウンドで彼ら本来の筋肉質なサウンドに味付けを施し、変化する音楽シーンの前線に留まったのである。

違和感を感じさせることも時にあったが、うまくはまった時には相変わらずすばらしいサウンドを生み出した。ムーン逝去後の初シングルになった「You Better You Bet」はまさにその典型で、新しいロマンスの喜びとほろ苦いノスタルジアを感じさせる、ピアノを多用した軽快な作品だ。

17. Eminence Front

1980年代最後のアルバム『It’s Hard』に収録されている「Eminence Front」も新しいロマンスの喜びとほろ苦いノスタルジアを感じさせる傾向の強い1曲だった。

この曲は「Won’t Get Fooled Again」のようなシンセのパターンで始まり、かつてタウンゼントが「ドラッグで気が大きくなることのバカバカしさ」と呼んでいたものを彼とダルトリーが呼び起こしているかのような、よりしなやかなテンポとムードを持っている。

18. Wire & Glass

1982年にリリースされた『It’s Hard』以降、ザ・フーのレコーディングは断続的なものとなり、バンドは1983年に解散。しかし、存命のオリジナル・メンバーがお互いに遠ざかることはなかった。グループは1985年の”Live Aid”に登場。1989年にはグループの25周年記念ツアーを行い、ダルトリーとエントウィッスルは共にタウンゼントのソロ作品『The Iron Man』に力を貸した。

2002年にはエントウィッスルが亡くなったが、その後もバンドは活動をつづけた。実際、以降、彼らがリリースした作品はどれも間違いなく既に確立された地位にある彼らのレガシーにふさわしい強力なものばかりだ。

2006年に発表されたミニ・オペラ「Wire & Glass」によって、ストーリーを音楽で語ることへのタウンゼントの興味は続いていることがわかった。これは、ザ・フーとしては20余年ぶりとなるフル・アルバム『Endless Wire』に収録されていた作品だった。

同曲のフル・ヴァージョンはすばらしい出来栄えだったが、アルバムに数ヶ月先行してリリースされたエディット・ヴァージョンもその魅力を伝えるに十分なトラックになっていた。キース・ムーンを思わせるかのようなピーター・ハンティントンのドラムワークとダルトリーのすばらしいヴォーカルが光る7分間は、先鋭的で、きわめてプログレッシヴだ。

 

19. Ball and Chain

バンドはまだ終わっていない。2019年、彼らは、シンプルに『WHO』と題したニュー・アルバムをリリースした。だ。ザ・フーが何世代にも亘ってロック音楽に与えてきた影響を十分わかった上で、タウンゼントは年齢とともに温かさを帯びたダルトリーの声に合うソングライティングを心掛けている。

また、先行シングルの「Ball and Chain」では、グアンタナモ収容所の囚人の視点に立った歌詞によって地政学に対する彼らの関心の高まりを表現している。ザ・フーは、活動期間のどの年代にあっても、パーソナルであると同時に普遍的な真実を語るアンセムを常に生み出し続けてきたのである。

最後の1曲は下記コメント欄にみなさんが思う1曲を書き込んでください。

Written By Robert Ham



バンド最新アルバム
ザ・フー『WHO』
2019年12月6日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify



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