シェリル・クロウのベスト・ソング20曲:あなたを満足させてくれる必聴の楽曲【全曲映像付】
2019年にリリースされた傑作『Threads』が自身の最後の作品になるかもしれないというシェリル・クロウのコメントは、例に漏れず、聴き手の欲求をさらに煽ることになりそうだ。まさかもう二度と、このミズーリ州出身の偉大なシンガー・ソングライターの新曲を聴くことができなくなるということはあるまいが、『Threads』が、1993年の『Tuesday Night Music Club』で華々しくスタートした彼女のキャリアを飾る最後のフル・アルバムに成るという可能性は否定できない。いずれにせよ、シェリル・クロウがこれまでに残してきた最高の楽曲群は、彼女の比類なき才能と、カントリー、ソウル・ミュージック、ロックを折衷したその音楽の独創性を、のちのちまで伝え続けるにちがいない。
1962年2月11日に生まれたシェリル・クロウは、幼いころからスポーツに秀でていたが、やがて音楽的な才能を発揮し、それを正式なかたちで証明することになる。大学で取得した作曲、演奏、教育の学士号がその証左である。その後、ミュージシャンとしてのキャリアを歩み始めたクロウの初期の経歴 ―― バックアップ・シンガーとして、かのマイケル・ジャクソンのワールド・ツアーにも同行したこと、1992年に最初のアルバムをリリースすることになっていたものの、土壇場で棚上げになったことなど ―― はよく知られるとおりだ。下積みと挫折を経て、しかし1993年にクロウは遂にレコード・デビュー。絶え間ないコンサート・ツアーと今も衰えることのない優れたソングライティングの才によって上昇気流に乗り、輝かしい歩みを続けてきたのである。
以下のリストにあなたのお気に入りのシェリル・クロウの楽曲が見当たらなかったなら、コメント欄を通じ、知らせてほしい。
20位 : 「Tell Me When It’s Over (with Chris Stapleton) 」 (2019年)
本稿で何度か言及することになるであろう、豪華な面々の客演を得たオール・スター・アルバム『Threads』 (できるならこのアルバムの全ての曲をリストに加えたいくらいだ) から。最初に取り上げるのは、クロウとクリス・ステイプルトンの歌唱が完璧に融和したこの曲だ。カントリー・ミュージックの王者、クリス・ステイプルトンのパフォーマンスは、クロウとの“共演”というよりも、カメオ出演といった方が正しいが、ともあれその歌声はすばらしいムードを醸し出している。ステイプルトンが共作したこの曲は、クロウのこの11作目のスタジオ・アルバムの目玉のひとつになっている。
19位 : 「Sign Your Name (with Justin Timberlake) 」 (2010年)
クロウが過去にも非の打ち所のないコラボレーションを成し遂げていたことを教えてくれるのがこの曲だ。ジャスティン・ティンバーレイクをバック・ヴォーカルに迎えた「Sign Your Name」は、2010年にリリースされた彼女の8作目のアルバム『100 Miles From Memphis』に収録されている。テレンス・トレント・ダービーが「Sign Your Name」のオリジナル・ヴァージョンを発表し、英米のシングル・チャートのトップ5に送り込んだ1987年当時、シェリルは将来有望な25歳だった。
18位 : 「What Can I Do For You」 (1993年)
『Tuesday Night Music Club』もここで幾度か触れることになるアルバムだ。同作は、間違いなく歴史上、最も衝撃的なデビュー・アルバムに数えられよう。ちなみにタイトルは、カリフォルニアでクロウが参加していた夜の気楽なジャム・セッションに由来している。ビル・ボットレルによるリラックス・ムードに満ちたスタイリッシュなプロダクションは、クロウの才能が作り出すエモーショナルかつ知的で、しばしばエッジの効いたロックと完璧にマッチしている。
17位 : 「Beware Of Darkness (with Eric Clapton, Sting and Brandi Carlile)」 (2019年)
これもまた、『Threads』に収録されているカヴァー曲のひとつ。アルバムのほぼすべての収録曲に携わったスティーヴ・ジョーダンのプロデュースと、3人もの豪華なミュージシャンの客演を得た秀逸なリメイクだ。ギターはクロウの古い友人であり、ジョージ・ハリスンの傑作『All Things Must Pass』に収録されたこの曲のオリジナル・バージョンでも演奏したエリック・クラプトン。これ以上ないキャスティングだ。
16位 : 「Tomorrow Never Dies」 (1997年)
007映画のテーマ曲を歌うというすばらしい栄誉にあずかったこのとき、クロウは世界的なトップ・スターの一人としての地位を確固たるものにしたと言っていいだろう。ピアース・ブロスナンが二度目の主演を務めた、ジェームス・ボンド・シリーズ18作目ために書かれたこのムーディーな一曲は、クロウと同曲のプロデューサー、ミッチェル・フルームの共作だ。
15位 : 「Soak Up The Sun」 (2002年)
クロウの4作目のアルバム『C’mon C’mon』からの最初にシングル・カットされたこの陽気な楽曲は、好調なセールスを記録し、やがてゴールド・ディスクに認定。米ビルボード誌の”Adult Top 40”チャートでは首位をマークした。リズ・フェアのバック・ヴォーカル、そしてミュージック・ビデオ (ハワイのビーチで撮影された) でクロウが披露するパフォーマンスに注目してほしい。
14位 : 「The First Cut Is The Deepest」 (2003年)
『Threads』のずっと前から、クロウはオリジナル・ソングの創造力によって築いたキャリアを、適切なリメイク作品によって勢いづけることもできることを実証していた。2003年の『Very Best Of Sharyl Crow』の収録曲の中で特別に目を引いたのが、1967年のP・P・アーノルドのカヴァー・ヴァージョンで有名になったこのキャット・スティーヴンスの作品である、
13位 : 「Home」 (1996)
クロウの最もよく知られた曲の一つというわけではないが、巧みな作曲能力の賜物。聴き手を魅了せずにはおかない爽快な1曲だ。自らプロデュースを担当し、その分野での才能をも印象付けた2ndアルバム『Sheryl Crow』に収録。
12位 : 「Prove You Wrong (with Stevie Nicks and Maren Morris) (2019年)
これもまた、3人のアーティストの豪華な共演をフィーチャーした『Threads』の収録曲。アルバムのオープニングを飾ったこの曲は、ソフト・ロックの女王と、カントリー・ミュージックの新人大スターという世代の異なるふたりを結びつけた1曲にもなっている。クロウ、ニックス、モリスはアルバムのリリースに先立ち、2019年の6月の”CMT Music Awards”のステージで共演。この曲を披露している。
11位 : 「Leaving Las Vegas (さらばラス・ヴェガス) 」 (1993年)
『Tuesday Night Music Club』からの4枚目のシングルに選ばれたこの曲は、同名の小説 / 映画と同様、私たちを魅了する。クロウ、プロデューサーのボットレルと’クラブ”の仲間たち――デヴィッド・ベアウォルド、ブライアン・マクラウド、デヴィッド・リケッツ、ケヴィン・ギルバート――の共作。
10位 : 「Run Baby Run」 (1993年)
クロウがボットレル、ベアウォルドと共作した『Tuesday Night Music Club』のリード・トラック。なお、ベアウォルドと前述のリケッツは、かつてヴィッド&デヴィッドとして活動。このデュオが1986年に発表し、ゴールド・ディスクに認定された唯一のアルバムは再評価されて然るべきものだった。シングル「Run Baby Run」の初動は芳しいものではなかったが、クロウがブレイクしたあと、数ヶ国であらためてシングル・カットされ、イギリスのチャートではトップ30圏内に入るヒットになっている。
9位 : 「Live Wire (with Mavis Staples and Bonnie Raitt) (2019年)
『Threads』の収録曲にあってもとりわけキャッチーな「Live Wire」もまた、同作が、ゲスト・アーティストの最高のパフォーマンスをとらえた作品であることの証左である。ステイプルズのゴスペル・ソウル、レイットの比類ないスライド・ギター、そして安定感に富んだ歌唱だ。
8位 : 「A Change Would Do You Good」 (1996年)
……しかし、それだけではないのがシェリル・クロウだ。アルバム『Sheryl Crow』からシングル・カットされた5曲のうちの1曲「A Change Would Do You Good」はぐっとファンキーなトラックだ。これはクロウがジェフ・トロット、ブライアン・マクラウドとニューオーリンズ滞在中に共作した作品で、ステイプル・シンガーズの最高のソウル・ナンバーを想起させる。「Live Wire」の次に取り上げるに、これ以上のチョイスはないだろう。
7位 : 「Don’t」 (2019年)
意外な選曲だと思われるかもしれないが、『Threads』の収録曲の中で、我々は、バート・バカラックの傑作群を彷彿させるこの曲に強く惹かれる。この新しいトーチ・ソングで、クロウは、自身がきわめて優れたポップ・ロック・アーティストであることをあらためて印象付けた。
6位 : 「Strong Enough」 (1993年)
『Tuesday Night Music Club』は計り知れない魅力を持ったアルバムだった。どの曲もシングル・カットされて不思議はなかったし、実際、過半数のトラックがシングルとしてリリースされている。自己分析できわめて成熟したこの「Strong Enough」はファンと関係者の双方に強力にアピールし、アメリカのシングル・チャートでは5位、カナダのチャートでは首位に達した。
5位 : 「Everyday Is A Winding Road」 (1996年)
セカンド・ルバムで発表されて以来、クロウのステージで、ほぼ例外なく披露されてきた定番。2020年1月の終盤、メキシコはリビエラ・マヤのハード・ロック・ホテルで開催された”Girls Just Wanna weekend”では、メインのセット・リストの締めくくりに取り上げられている。米ビルボード誌の”Adult Alternative”部門ではチャートの首位をマーク。イギリスでは、クロウの3曲目のトップ10ヒット曲になっている。
4位 : 「Redemption Day (with Johnny Cash) (2019年)
私たちは、このきわめて刺激的なデュエット・ナンバーこそが、『Threads』を代表する圧倒的な傑作だと考えている。あなた方がどう思われるにせよ、これ以上に誠実な作品がないであろうことだけは断言できる。クロウはヒラリー・クリントンとボスニアを訪れたあと、自身の2作目のアルバムに収録すべく、この反戦を訴える情熱的な作品を書いた。キャッシュは、この数年前に、リック・ルービンのプロデュースの下、この曲のカヴァー・ヴァージョンを録音。その成果は、彼の死後にリリースされた”American Recordings”シリーズの6作目『American VI : Ain’t No Grave』 (2010年) に収録されている。『Threads』に収録されているこの”共演版”に聴けるクロウとキャッシュのヴォーカルの組み合わせは息を呑むほど魅力的だ。
3位 : 「My Favorite Mistake」 (1998年)
1990年代は彼女が主要なヒット・シングルを数多く生み出した時期であったが、そんなころに生まれた官能的な「My Favorite Mistake」は、クロウの最高傑作のひとつであり、今なお人気が高い。この曲が収録されているアルバム『The Globe Sessions』は、グラミー賞で’Best Rock Album(ベスト・ロック・アルバム)”に選ばれ、「My Favorite Mistake」も、グラミーの”Best Female Pop Vocal Performance (最優秀女性ポップ・ボーカル・パフォーマンス) ”にノミネートされている。
2位 : 「If It Makes You Happy」 (1996年)
アルバム『Sheryl Crow』が絶賛された理由はいくつもあるが、陽気でノリのいいトラックが並んでいたことが何より大きい。英米両国のシングル・チャートでトップ10ヒットを記録したこの豪快なトラックはその筆頭に挙げられよう。当初はカントリー・オリエンテッドな楽曲だったが、クロウはそれをロック調に改作。それが功を奏し、彼女は、今度はグラミー賞の”Best Female Rock Vocal Performance (最優秀女性ロック・ボーカル・パフォーマンス) ”部門で賞を獲得することになった。
1位 : 「All I Wanna Do」 (1994年)
聴き手を選ばない楽曲の多くは悲しみという感情を秘めているものだが、クロウの代表作に挙げられるこの「All I Wanna Do」はその典型といえるもので、実のところ”無気力と絶望”がテーマになっている。この点について、彼女自身、以下のように述べている。「表面的には陽気なポップ・ソングに聴こえると思う。だけど、本当は、酷く打ちのめされ、バーに座ってただ時が過ぎるのを待っているような人のことを歌った曲」 ―― ここで歌われている人たちは、火曜日の昼日中にビールを飲んでいる。そしてそんな彼らに世界中の聴き手が共感を覚えたのだ。
Written By Paul Sexton
2019年8月30日発売
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