ラムシュタインのベスト・ソング11:東ドイツの男達による全てが過激なバンドの名曲【動画付】

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Rammstein - Photo: Mick Hutson/Redferns

インダストリアル・ロック・バンドのラムシュタイン(Rammstein)がベルリンから登場するや否や、彼らはその過激さで名を馳せることになった。

彼らはドイツ語で具体的な暴力行為やあからさまな性的描写を歌う他、そのライブでは驚くほどの規模の火薬や火炎を使ったステージでも有名だ。ヴォーカルのティル・リンデマンが自分自身に火を付けたり、怒り狂うギターリフに合わせて5〜6mもの火炎放射器をぶっ放したり、ステージの周りに地雷原のように爆薬をしかけたりといった具合だ。

しかしこのラムシュタインというバンドには、そのステージを包む炎以上のものがある。ミニストリー、KMFDM、デペッシュ・モード、そしてドイツ表現主義音楽における歌と語りの中間的なシュプレヒシュティンメ・オペラに影響を受けたラムシュタインは時には裏切るような驚くほど多様なスタイルを見せつける。

ここに挙げたのは、ラムシュタインによる、最も耳から離れなくなるものから最も痛烈なものまで幅広いスタイルの代表的な11曲だ。

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1. Rammstein(ラムシュタイン)

このバンドの最初の曲「Rammstein」は、1988年にラムシュタイン空軍基地で起き、バンド名にもなった航空事故について歌った曲だ。1995年のアルバム『Herzeleid(ヘルツェライト)』からのこの曲はアンビエント風のエレクトロニック音や、速度を落としたヘリコプターの音、そして薄気味悪いキーボードのメロディで始まる。そして、ラムシュタインはそこから曲の最後まで一気にクライマックスに駆け上がるメインのリズムに突入する。

この曲は(ラムシュタインの初期の作品のほとんどがそうであるように)アルバム『Psalm 69(詩編69)』期のミニストリーから強い影響を受けてはいるものの、ティル・リンデマンの真っ直ぐのバリトン・ボーカルは、彼らをこのジャンルの先達たちと一線を画した存在にしている。

聴く者の興味をそそるに充分な「Rammstein」は有名映画監督のデヴィッド・リンチの耳を捕らえ、その監督の映画『ロスト・ハイウェイ』のサウンドトラック盤にこの曲と彼らの他の一曲を収録させたことにより、彼らの名前はヨーロッパ以外で初めて広く知られるようにもなった。

 

2. Links 2-3-4(前進)

20世紀前半のドイツの劇作家、ベルトルト・ブレヒトがドイツ共産党のために書いた『Einheitsfrontiled(統一戦線の歌)』にふれた左翼的な歌詞を持つ「Link 2-3-4」は、“ラムシュタインはネオナチだ”という批判に対して反応した初期の楽曲だ。

この曲を聴いた時にその皮肉的な意味合いに気が付かない者もいるが、曲の最初の軍靴の行進やリズムにアクセントを付ける群衆の叫びなどは、ドイツの醜い過去を擁護するのではなく、糾弾するために使われている。

「Links 2-3-4」はバンドのサード・アルバム『Mutter(ムター)』からの曲で、彼らの初期の作品の多くがそうであるように軍隊を想起させる力強さに満ちており、ネオナチに対してあからさまな嫌悪とドラマティックな軽蔑でその反ファシスト的な歌詞を彩っているので、この曲を演奏する彼らを観るのは最高だろう。

 

3. Mutter(ムター)

ノイエ・ドイチェ・ヘァテ(新ドイツ・ハードロック)シーンの強力なリーダーとしてその地位を確立したラムシュタインは、アルバム『Mutter』のタイトル曲でその炎に包まれた翼を一気に広げた。

この曲は幼児の声とデリケートなギターのアルペジオ、そしてクリーンなメロディのボーカルで始まり、それと好対照な重厚でゆったりとしたペースのコーラスが続いていく。自らをインダストリアル・メタル・バンドと見られることへの無関心さを強調するかのように、ギターのリヒャルト・クルスペはメタリカの「Unforgiven」を思わせる、観客がライターを灯すような荘厳なメロディラインを演奏する。

実にラムシュタインらしいスタイルの歌詞は、子宮の外で生まれ、その母親と自分自身を殺そうとする子供のことを歌っている。

4. Rosenrot(ローゼンロート)

2005年のアルバム『Rosenrot(ローゼンロート)』からのタイトル曲は爆発するような怒りは控えめにし、ぐつぐつと煮えたぎるような怒りを表現している。そしてバンドは、3音で構成されたベースラインとメロディアスなバリトン・ヴォーカルでその痛烈なトーンを明確に表し、曲が盛り上がっていく中で、曲の根底に流れる効果音や、ハーモニー・ボーカル、嘆き悲しむようなストリングスが徐々に加わっていく。

曲の最後では、バンドは10秒間にわたる耳障りなメタルリフを叩きつけ、それに続いて同じくらい短いオーケストラ音のキーボードのエンディングが流れる。

歌にはグリム童話の『しらゆき べにばら』にヒントを得た歌詞に繰り返し登場している。しかしながら歌詞はその童話の内容とは違っており、熊がずる賢い小びとを殺して王子の姿に変身、そしてその小びとを育て世話をしていたしらゆきと結婚する、というものだ。小びと一丁上がり、あと残りは6人、というわけだ。

5. Amerika(アメリカ)

「Amerika」は少なくとも彼らが最も多作な時期だった2003年、彼ら4作目のフルアルバム『Reise, Reise(ライゼ・ライゼ〜南船北馬)』とその次の『Rosenrot』収録の作品の多くが産み出された年にレコーディングされた多幸感溢れるヒット・シングルだった。

彼らのより音楽的に緻密な2019年の大作「Deutschland」のように、「Amerika」はラムシュタインがアンビヴァレントな気持ちを抱いている強き国へのほろ苦いトリビュートだ。彼らは、アメリカの人々や文化は大好きだが、アメリカという国の留まるところのない資本至上主義と傲慢さに対しては批判的なのだ。

他の楽曲と違い、歌詞が英語で歌われる「Amerika」は勝ち誇ったように聞こえるが、それはほろ苦い陶酔感だ。ヴォーカルのリンデマンは楽しそうにコカ・コーラやミッキー・マウス、ワンダーブラ(豊胸効果のあるブラジャー)のことを歌っているが、同時にアメリカの過去の戦争に関する歴史に触れながら、英語で歌うことの疎外感を「これはラブソングではない/自分は母国語では歌っていない」と表現している。

他の英語の歌詞を書くヨーロッパのバンドたちと異なり、ラムシュタインは大衆に迎合することで自らの尊厳を犠牲にしたりはしないのだ。

6. Haifisch(鮫)

ラムシュタインのメンバーたちが、全てのショーの最後に楽器を持たずにカーテンの前に立って、ブロードウェイのキャストのようにお辞儀をするのには訳がある。彼らは演劇が大好きで、そういった芸術からテーマを採り入れているのだ。

ラムシュタインの6作目のアルバム『Liebe Ist Für Alle Da(最愛なる全ての物へ)』(2009)のハイライトである「Haifisch」は、ドラマティックなホーンの音色で始まり、サビではベルトルト・ブレヒトの有名戯曲『三文オペラ』の一節が登場する。

この曲は刺激的ながら優美なピアノとシンセのリズムと、1920年代のワイマール共和国時代に花開いた進歩的な芸術文化のイメージを想起させるようなシャッフル・ビートで次第に盛り上がっていく、

7. Mein Herz Brennt(燃える心)

ラムシュタインのサード・アルバム『Mutter』のオープニング曲は、悲しげなストリングスと、半分語りのような低い声のヴォーカルで始まり、チェロとバイオリンにドラムとキーボードが加わるに従ってテンションが高まっていく。そして、爆弾が突然着火したかのように、ワーグナーの交響曲とレッド・ツェッペリンの「Kashmir」が合体したように聞こえるヘヴィで歪んだギターと急降下してくるようなシンセのメロディで曲が爆発する。

この曲全体は大仰で歓喜に満ち、その歌詞はメタリカの「Enter Sandman」が子守歌に聞こえてしまうような、子供の頃の悪夢を歌った素晴らしく風変わりなものだ。

8. Engel(エンジェル)

アルバム『Sehnsucht(渇望)』に収録された「Engel」の最も記憶に残る点は、スタートから最後まで何度も聴かれる、ウェスタン映画風の口笛だ。

カリカリとしたサウンドの手のひらでミュートしたメタル・ギターのサウンドが、「Engel」をラムシュタインのナンバーの中でもヘヴィな部類の曲にしている一方、この曲にはデリケートな女性ヴォーカル、唸るようなニュー・オーダーのようなキーボード、曲の根底を流れる効果音、勢いのあるキーボードのソロ、そしてエンディングに向かってさらにハッキリと聴かれるあの狂ったような口笛などがフィーチャーされている。

歌詞では、リンデマンは天使を詩的に表現したのち、「俺は天使になんてなりたくないってのは神は先刻ご承知だ!」と宣言している。

9. Deutschland(ドイチュラント)

不安を煽り、三連符を連打するキーボードのメロディとそれに合わせるような、アイアン・メイデンを思わせるエレクトリック・ギターで始まる「Deutschland」は、メタルとインダストリアル・ダンス・ミュージックを絶妙に組み合わせ、壮大で映画的な曲に作り上げられている。

ただ「Deutschland」の歌詞はそれほど多幸感に満ちているわけではなく、バンドの母国に対する批判を隠そうともしない内容だ。バンドはこの曲のために美しく撮影され、露骨で恐るべきビデオを公開したが、その内容は全体主義と暴力について書かれたこの曲の歌詞を強調したものだ。

音楽的には、バンドは曲全体を通じて、エコーの利いたヴォーカルによるサビや、中近東風の女性ヴォーカル、フェイス・ノー・モアの有名曲「Epic」のエンディングを思わせる、かすかで若干テンポのずれたピアノのメロディ、そしてこの歌が血にまみれた海岸に押し寄せる潮の満ち引きのように感じられる固い音とサステインの利いた音が渾然一体となったギターで、エモーショナルな要素を作りあげている。

2019年にリリースされた、7作目のアルバムのオープニング曲でもある「Deutschland」は、ラムシュタインが過去をしっかり把握し、未来に向けて鋭い目を向け、彼らを特別な存在にしている全てのスタイルをがっちりと維持していることを如実に表現しているのだ。

10. Du Hast(ドゥ・ハスト)

デヴィッド・リンチは確かに『ロスト・ハイウェイ』のサウンドトラック盤で、ラムシュタインがアメリカで名を成すのに手を貸したが、アメリカのリスナーを魅了したのは、バンドのセカンド・アルバム『Sehnsucht』に収録されたのは前に突き進むような「Du Hast」だった。

テクノっぽいキーボードとエレクトロニック・サウンドの蚊のような音によって人畜無害な感じで始まるこの曲は、KMFDMとミニストリーの楽曲が合体したかのようなガシガシとした戦闘的なメタル・リフで一気に爆発する。

リンデマンのメロディアスなサビのヴォーカルがポップな要素を加え、軽快なキーボードのメロディが軽薄さを注入するが、ビデオゲームの挿入曲のようなシンセのソロですら沸き返るモッシュピットを止めることはできない。

ダークでエネルギーに満ちた「Du Hast」は、ヨーロッパの音楽が歌詞が英語でなくてもアメリカで受け入れられることを証明し、ラムシュタインは自らの信条をまげることなく、世界制覇を求める旅に出るための重く錆び付いた鋼の扉を開いたのだ。

11. Mein Teil(マイン・タイル)

おそらくラムシュタインがリリースした中でも最もねじ曲がった曲(というのがこの曲をよく物語っている)である「Mein Teil」は、自分を食べてもらうためにオンライン広告を出した男と、その犠牲者の申し出を受けた主人公のアルミン・マイヴェスの実話を語っている曲だ。

曲はゴスなキーボードの音で始まり、ナイフが研がれる音、そして雑音だらけの声で「屠殺されるための体格のいい18歳から30歳の男を求む。肉屋の主人より」と翻訳されるドイツ語が流れる。そこから、削り取るような激しいリフにヴォーカルのコーラスが寄り添い、犠牲者を遠い宇宙に吸い込む真空の銀河系を思わせるような効果音の影で威嚇的なヴォーカルが聞こえてくる。

「Mein Teil」は激しく戦闘的だが、曲が進むにつれてオリジナルのダークな歌詞の迫力をそぐようなキャッチーなリフとコーラスにつながっていく。ただし歌われている歌詞はそうはいかない。「ほら、それは俺のあの部分だ/違う!だってお前自身がお前を食べているんだからそれが何かはわかってるだろう」といったような調子だ。エンディングのメロディにかぶさる地獄のような叫び声が、この曲に認知的不協和の要素を加えている。

このラムシュタインのベスト・ソング・リストから抜けている曲があると思いますか?下記のコメント欄に書き込みください。

Written By Jon Wiederhorn


ラムシュタイン最新アルバム

ラムシュタイン『Zeit』
2022年4月29日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music



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