クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのベスト20曲 : どんなときでもゴキゲンにしてくれるナンバー
1990年代半ば、ジョシュ・オムはカイアス(Kyuss)というストーナー・ロック・バンドを率いて、カルト的グランジ・バンド、スクリーミング・トゥリーズとツアーを回っていた。その当時、後に彼が21世紀でも指折りのパワフルさと先進的性を持つバンドを率いるとは、誰も想像しなかっただろう。しかし、オムが新たに結成したクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(Queens of the Stone Age)による2000年のメジャー・デビュー・アルバム『Rated R』には、現代のロックになかった危険な雰囲気が漂っていた。
カリフォルニア州パームデザート出身の彼らは、その後20年の間に5枚のアルバムをリリースし、唯一無二のグループとして地位を確立してきた。そのサウンドは現在でも、次世代の音楽を先駆けたものに聴こえる。「男子にはヘヴィー、女子にはスウィート(heavy enough for the boys and sweet enough for the girls)」なロックを奏でる彼らを称え、今回はクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの楽曲ベスト20をランキングにまとめた。
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20位 : Give The Mule What He Wants
初期のクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの中心メンバーはジョシュ・オムとドラマーのアルフレッド・ヘルナンデスのふたりだった。パール・ジャムのギタリストであるストーン・ゴッサードが主宰するルースグルーヴ・レーベルから1998年10月にリリースされたデビュー・アルバム『Queen Of The Stone Age』では、このふたりがすべての楽器を分担して演奏している。
このアルバムは、ローリング・ストーン誌で「アート・メタルのシリアスさとポップの楽しさの中間点」に位置したアルバムと評された。中でも代表曲「Give The Mule What He Wants」の周期的なグルーヴは、オムがクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ以前に在籍していたカイアスの陰鬱なストーナー・ロックをこの時点で凌駕する仕上がりだった。
19位 : Feet Don’t Fail Me
ジョシュ・オムと天才プロデューサーのマーク・ロンソン (ほかにエイミー・ワインハウス、レディー・ガガ、アデルといったアーティストを手がけている) は、ともに現代のロック/ポップ界屈指の独創性をもつアーティストだ。それを考えれば、彼らがコラボレーションしたクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの2017年作『Villains』がどこを取っても傑作といえるアルバムになったのも当然のことだ。
オムは『Villains』のサウンドの方向性について、ロンソンが2015年にブルーノ・マーズと手を組んだ「Uptown Funk」から影響を受けたことを明かしている。病みつきになるビートと冷たいシンセが特徴的な同作のオープニング・トラック「Feet Don’t Fail Me」は、ロンソンの優れたスタジオ技術の賜物といえる。
18位 : Mosquito Song
2002年にリリースされ、マルチ・プラチナに認定された完璧なアルバム『Songs For The Deaf』。同作でクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジは選び切れないほどの楽曲に恵まれていたため、名曲「Mosquito Song」でさえもアルバムの最後に隠しトラックとして収録されていたに過ぎない。それゆえ、付け焼き刃程度の楽曲を想像したファンもいたかもしれないが、彼らは実際聴いて驚いただろう。
彼らの耳に聴こえてきたのは、ジョシュ・オムのアコースティック・ギターと情感豊かなオンマイクのヴォーカルが印象的なマリアッチ風の逸品だ。クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ屈指の感動的なバラードではあるが、サム・ペキンパーの映画を思わせる宿命的な響きの歌詞 ―― 「飲み込まれ咀嚼され喰われるのさ/まだ息はあるが俺達はただの食い物 (Swallow and chew, eat you alive/All of us food that hadn’t died) 」 ―― にはこれでもかというほどの激しさが込められている。
17位 : Make It Wit Chu
もともと「Make It Wit Chu」は、現在も続くジョシュ・オムのサイド・プロジェクト、デザート・セッションズの第9弾EPで日の目を見た1曲だった (ゲストにPJハーヴェイが参加) 。その後、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジとしてもレコーディングして2007年リリースの5作目『Era Vulgaris』に収録したのだ。
彼らのどの楽曲よりセクシーな雰囲気が漂う同曲は、ザ ・ローリング・ストーンズの「Miss You」を彷彿させるようなファンキーで色っぽいグルーヴ感が特徴だ。2007年のMTVのVideo Music Awardsでは、シーロー・グリーンとデイヴ・グロールを特別ゲストとして迎え、パームス・カジノ・リゾートの豪華なステージで演奏している。
16位 : My God Is The Sun
2007年の『Era Vulgaris』ツアーが終わると、ジョシュ・オムの健康問題やメンバー交代などでクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジにとっては落ち着かない時期が続いた。しかし彼らは心機一転、2013年の『… Like Clockwork,』でカムバックを果たすと、Best Rock Albumを含むグラミー賞の3部門にノミネートされた。
同じく、切迫感に満ちた先行シングル「My God Is The Sun」もグラミー賞のノミネートを受けている。それぞれ受賞こそ逃したものの、2014年のグラミー賞ではデイヴ・グロール、ナイン・インチ・ネイルズ、フリートウッド・マックのリンゼイ・バッキンガムが加わったオールスター編成で、短縮ヴァージョンながら同曲を披露している。
15位 : In The Fade
オムはベーシストのニック・オリヴェリや元スクリーミング・トゥリーズのヴォーカリスト、マーク・ラネガンらとともに2000年リリースの『Rated R』を制作。インタースコープ・レコード移籍後の第一弾アルバムとなった同作で、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジは英米両国におけるブレイクを果たした。
オムは『Rated R』について「振り幅が大きい」アルバムだと的確に表現しているが、ラネガンが参加した一部の楽曲は、浮世離れした彼の存在感によって新鮮なサウンドに仕上がっている。その特徴が最もよく表れているのが、心に響く1曲「In The Fade」だ。自殺反対を歌う同曲では、ラネガンのいぶし銀なバリトン・ボイスにオムの妖しげなファルセットが影のように重なって聴こえる。
14位 : 3’s And 7’s
2007年作『Era Vulgaris』は、2005年の前作『Lullabies To Paralyze』にあった壮大なメロドラマ路線が影を潜め、ハードなエッジを効かせたギター主体のアルバムになった。ジョシュ・オムは同作について「土木建設作業員みたいにダークでハードで刺激的」なアルバムと表現したが、「3’s and 7’s」はまさにそのイメージにぴったり当てはまる。
他人のためにつく嘘を肯定的に歌った同曲では、一切手加減なしに繰り返される機械的なリフが強烈な印象を残すリスナーの本能を刺激する1曲だ。シングルとしてリリースされると、全英トップ20のヒットを記録。ポール・マイナー監督の下、カリフォルニアのジョシュア・ツリーで撮影されたミュージック・ビデオは、『チャーリーズ・エンジェル』を思い出させる何でもありの内容だ。
13位 : Better Living Through Chemistry
『Rated R』屈指のサイケデリック・ナンバー「Better Living Through Chemistry」は、曲名の最後にもある「ケミストリー (化学) 」を大きなテーマにした1曲だ。演奏面でも各楽器が錬金術のように混ざり合いながら進行し、6分近くにも及ぶ曲構成はまるでアシッド感たっぷりの組曲だ。
インドの太鼓の一種であるタブラの音で幕を開けると、しばらくは繰り返されるオリヴェリのベース・ラインがリードしていく。次第にオムのノイジーなギターが前面に出たかと思うと、ルー・リードの『Metal Machine Music』のようなフィードバック・ノイズが鳴り響き、息を呑むような即興演奏に流れ込むのだ。
12位 : Everybody Knows That You’re Insane
『Lullabies To Paralyze』収録の「Everybody Knows That You’re Insane」は、わずか4分間のあいだにブラック・サバスを思わせる陰鬱なドゥーム・ロックからスピードの速いオルタナ・ロック、そしてクラシック・ロック・アンセムへと変幻自在に移り変わる力作だ。
この曲の痛烈で冷笑的な歌詞 ―― 「お前がどうしてそんなに空っぽか教えてやろうか?/理由なんてないさ (You want to know why you’re so hollow?/Because you are) 」 ―― は、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの元ベーシストであるニック・オリヴェリに向けたものだというのがファンの間では通説になっている。その真相がどうあれ、「Everybody Knows That You’re Insane」が骨太で強烈なロックン・ロールであることに疑いの余地はない。
11位 : Monsters In The Parasol
間違いなく『Rated R』を代表する1曲である「Monsters In The Parasol」で、ジョシュ・オムはLSDによるトリップの知覚体験を「ああ、壁がまた迫ってくる/一度も見たことがないものが見えたんだ/髪の毛に埋まって (The walls are closing in again, oh well/I’ve seen some things I thought I’d never saw/Covered in hair) 」と事細かに語る 。
その超現実的な歌詞とは対照的に、演奏は緻密に構成されている。ひたすらビートを刻み続けるヴァースから、ニルヴァーナのようなコーラスへ一気に切り替わるのだ。同曲はそうしたラジオ向きのサウンドのおかげで、リリースから歳月を経ても新鮮さを失っていない。
10位 : Hangin’ Tree
クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのキャリアを決定づけたと言っても過言ではない2002年作『Songs For The Deaf』は、オールスターが集結して制作された。当時のバンドの中心メンバーであった3人 (ジョシュ・オム、ニック・オリヴェリ、マーク・ラネガン) に加わったのは、デイヴ・グロールやオルタナ・ロック界で厚い信頼を集めるマルチ・インストゥルメンタリスト、アラン・ヨハネスといった名士たちだ。
重々しい曲調の「Hangin’ Tree」はヨハネスとオムの共作で、もともとはオムのサイド・プロジェクトであるデザート・セッションズの第7弾『Volume 7 : Gypsy Marches』に収録されたもの。だが、ラネガンのダークな歌声が殺人にまつわる不吉な歌詞にぴったり合うクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのヴァージョンこそが決定版といえるだろう。
9位 : Another Love Song
多彩なベーシスト、ニック・オリヴェリは、『Rated R』や『Songs For The Deaf』にあるディー・ディー・ラモーン風のハードコアな楽曲で何度か、肺を潰さんばかりの叫び声を聞かせている。一方で後者の収録曲「Another Love Song」では、及第点以上の魅力的な歌声も披露している。だがこの曲のサプライズはオリヴェリの素敵な歌声だけではなく、サーフ・ミュージックの要素を巧みに取り入れたサウンド自体も大きな特徴だ。
イーボウやオルガン、トレモロを効かせたリード・ギターが印象的な同曲は、クエンティン・タランティーノ映画のサウンドトラックになってもおかしくない仕上がりである。また、ジョシュ・オムがイギー・ポップとコラボした2016年の名盤『Post-Pop Depression』の原型にもなっている。
8位 : Burn The Witch
『Songs For The Deaf』のツアー後にベーシストのニック・オリヴェリが解雇されたため、2005年作『Lullabies To Paralyze』ではドラマーのジョーイ・カステロやマルチ・インストゥルメンタリストのトロイ・ヴァン・リューウェンら、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの新たな顔ぶれがジョシュ・オムの元に集まった。
準レギュラーのように出たり入ったりのマーク・ラネガンも自身のソロ活動と並行してレコーディングに加わっているが、彼は「Burn The Witch」でスペシャル・ゲストのビリー・ギボンズ (ZZ Top) とともに低く唸るようなコール&レスポンスのバック・コーラスを披露。これが見事にオムの険しいリード・ヴォーカルを引き立てている。同曲は、悪名高い17世紀のセイラム魔女裁判を題材にした、パワフルなグラム・ロック調の1曲だ。
7位 : Go With The Flow
『Songs For The Deaf』収録のアップ・テンポなロック・ナンバー「Go With The Flow」は、ジョシュ・オムが愛する砂漠の風景を高速で駆け抜けるような1曲。激しいギターとデイヴ・グロールの強烈なドラミングがリードする同曲は、初めからトップ・ギアのまま至福の3分間を駆け抜けたかと思うと、急に終わりを迎える。
一度聞けばすぐ虜になる同曲はクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ屈指の完成度を誇り、見事グラミー賞にもノミネートされた。
6位 : In My Head
途方もないスケールの『Songs For The Deaf』に比べればメインストリーム寄りだとはいえ、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの4作目『Lullabies To Paralyz』もやはり壮大なアルバムであった。そんな同作では最も取っ付きやすいであろう「In My Head」は、もともとジョシュ・オムのデザート・セッションズ・シリーズ (2003年の『Volume 10 : I Heart Disco』) に収録されていたもの。
カーズ風のリフとリズムに乗ったピアノが感情豊かなオムのヴォーカルを支える『Lullabies To Paralyz』のヴァージョンは、よりタイトでダイナミックな仕上がりになった。楽曲自体がラジオ向きの曲調のためシングルとしてもリリースされ、ビルボードのメインストリーム・ロック・アンド・オルタナティブ・ソングス・チャートではトップ40にランクインした。
5位 : Little Sister
『Lullabies To Paralyz』からの驚異的なファースト・シングル「Little Sister」は、同名のエルヴィス・プレスリーの名曲 (ドク・ポーマス作曲) から着想を得た1曲。ジョシュ・オムは「“お姉ちゃんがしたことはするなよ (Little sister don’t you do what your big sister done)”という歌詞の性的な含みが気に入っている」と話す。
鋭いキレのギター・リフを中心に据え、ドラマーのジョーイ・カステロがリードするジャム・パート (プラスチック製のカウベルを使用) が印象的な同曲は、スタジオ・ライヴの形を取って一発録りでレコーディングされた。2006年のグラミー賞ではBest Hard Rock Performanceにノミネートされたが、ノミネート止まりでは勿体無いほどの出来栄えである。
4位 : First It Giveth
聖書からの引用がなければロックン・ロールの面白味は半減していただろう。だから「First It Giveth」がタイトルをヨブ記の一節 (「主は与え、主は奪う (The Lord gave, and the Lord hath taken away) 」) から取っているのも、聖書に詳しい人からすれば驚くような話ではない。
だが、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジが「First It Giveth」で歌ったのは、ドラッグが創作能力に与える影響というテーマだった。ジョシュ・オムはザ ・フェイド誌の取材でそのことについて「最初はアイデアが浮かんでくるけど、そのうち何のアイデアも思い付かなくなる」と語っている。
テンションが高く一切世間に媚びていないロック・ナンバーではあるが、グラストンベリーのステージやレッド・ホット・チリ・ペッパーズとのツアー中の賑やかな様子を収めた印象的なビデオのおかげもあって、UKではトップ40に入るヒットとなった。
3位 : Feel Good Hit Of The Summer
『Rated R』からの悪名高いセカンド・シングル「Feel Good Hit Of The Summer」は、セックス・ピストルズさながらの論争を巻き起こした。コーラスの歌詞 (「ニコチン、バリウム、バイコディン、マリファナ、エクスタシー、アルコール!」) を問題視したアメリカのチェーン店ウォルマートは、この問題作が削除されない限りアルバムを店頭に置かないと表明。クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジはドラッグの使用を美化しているのではとの批判も噴出することになった。
確かに彼らに慢心はあったのかもしれないが、ファンや批評家は粉骨砕身の同ロック・ナンバーを熱狂的に支持。ヴィレッジ・ボイス誌の著名な批評家であるロバート・クリストガウは、「アメリカのロック史において、 “Smells Like Teen Spirit”に匹敵する1曲」と激賞している。
2位 : The Lost Art Of Keeping A Secret
「Feel Good Hit Of The Summer」は何でもありのスリルで注目された面があったが、同じく『Rated R』収録の「The Lost Art Of Keeping A Secret」は、ジョシュ・オム率いるバンドが急成長を遂げていることをはっきりと知らしめた。最初から最後まで張り詰めた緊張感に満ちた同曲は、キャッチーだが影のあるノワール風のアンセムだ。
デヴィッド・リンチの映画を思わせる印象的なビデオも相まって、UKではヒット・チャートのトップ40圏内に浮上。米ビルボード誌のメインストリーム・ロック・チャートでも最高位21位を記録し、バンドは初めて世間で名を知られるようになった。
1位 : No One Knows
2002年の『Songs For The Deaf』に収録されたクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの代表曲「No One Knows」は、ジョシュ・オムが5年間温めた末にようやく完成させた1曲だった。そして、その年月の価値は十分にあったといえる。
自信に満ちたオムのギター・リフに、手数の多いニック・オリヴェリのベース・ライン、そしてダイナミックなデイヴ・グロールのドラムは、神懸り的なほど正確なアンサンブルを生んでいる。ギター主体のロックン・ロールとしてこれ以上のものはないと言ってもいい。
クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジが世界的にブレイクするきっかけとなった同曲は、ビルボードのモダン・ロック・チャートで当然ながら首位を獲得。UKでもトップ20に入り、グラミー賞のノミネートも受けた。しかし、その受賞を阻んだのは皮肉にもデイヴ・グロール率いるフー・ファイターズの「All My Life」だった。
Written By Tim Peacock
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