ロック界最高のパワー・トリオ・ベスト10【動画付】
ボーカル、ギター、ベース、ドラムスという伝統的な4人組ロック・バンドの構成から敢えて逸脱し、よりシンプルな要素のみを絞り込むことで強みを発揮するのが最高のパワー・トリオである。
このフォーマットは単なる3つの楽器が作り出すものを遥かに超越し、バンドに大いなる可能性に満ちたサウンドをもたらす。ロック黎明期から現在まで、最高のパワー・トリオはしばしばロックン・ロールにアドレナリンを注入する存在であり続けているのだ。
ここに挙げる10組は、いずれも何十年にもわたってロック界でその影響力を轟かせてきた至高のパワー・トリオである。
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10. ヤー・ヤー・ヤーズ
20世紀から21世紀への移行期、ロック・ミュージックはこれまでにはない様相を呈していた。9.11の後、たった数年の間に、ロックン・ロールの精神を呼び起こそうとニューヨーク・シティから数多くのバンドが出てきた。ヤー・ヤー・ヤーズもそのうちの一組である。
リード・シンガーのカレン・Oが先導する爆発的なライヴ・ショーを原動力に、バンドはインディ・ロックにおける成功者としての存在を見せつけた。アートとガレージ・ロックにポスト・パンクの要素を混ぜ込んで、彼らは2000年代初期にニューヨーク・シティで芽生えたばかりのダンス・パンク・サウンドの急先鋒的バンドとなったのだ。
ヤー・ヤー・ヤーズは近年のワールド・ツアーでも、ロック・バンドの正しい成功のフォーミュラとは粗削りなエナジーとタイトな演奏の掛け合わせであるという手本を示し続けている。
9. グランド・ファンク・レイルロード
このミシガン州フリント出身のハード・ロック・トリオはどうしたものか、数多のヒット曲を携えていながら、レーダーに引っかからずに終わってしまうことがよくある。
長年の活動の間にラインナップを増やしはしたものの、グランド・ファンク・レイルロードは元々はパワー・トリオとしてスタートし、彼らのヒット曲の多くはその時代に生まれたものである。
「We’re An American Band」「Some Kind Of Wonderful」「I’m Your Captain (Closer To Home)」 は、いずれも70年代ロックを象徴する楽曲というだけでなく、アメリカン・ソングブックにおいてこの年代を定義する必要不可欠なパーツなのだ。
この時代のおける随一のパワー・ロック・トリオとして頂点を極めたグランド・ファンクは、多くのファンに愛され、全米のアリーナをソールドアウトにした。グランド・ファンクと肩を並べられるほど、ブギー・ロックとソウルにパワー・コードを巧みに組み合わせ、かつ全米中の共感を得ることができたバンドを他に挙げろと言われたら、きっと誰もが答えに窮するに違いない。
8. ZZトップ
このテキサス出身の3人組が打ち出した、ブルーズとサザン・ロックを足して2で割ったところにパワーとリズムを加えた絶妙かつ痛快なスタイルは、彼らより人数の多いバンドだったとしてもなかなか真似できない種類のものだ。
切れ味が鋭く、轟き渡るギター・トーンで知られるビリー・ギボンズは、ベース兼ヴォーカルのダスティ・ヒル、ドラマーのフランク・ビアードと共に、頑固そうな見た目とは遥かにかけ離れた冒険的な音楽を生み出しており、その影響はカントリーからポップ、トラディショナルなロックまで多岐に及んでいる。
たとえギターがメインの楽曲においても、ニュー・ウェイヴやダンス・ロックの要素を織り込むことを恐れなかったZZトップは、「Sharp Dressed Man」や「Legs」 、「Tush」などの楽曲を大ヒットさせ、2004年にはロックの殿堂入りを果たした。
7. ジェイムス・ギャング
1966年にクリーヴランドを拠点に活動を開始したこのトリオは、純然たるアメリカ生まれのバンドとして英国のライバルたちに対抗すべく出てきた最初のバンドのひとつである。ジェイムス・ギャングは表向きには、度重なるメンバー交替を経て、その様相を変えて行ったが、最もよく知られたラインナップと言えばジム・フォックス、デイル・ピーターズ、そして未来のイーグルスのギタリストであるジョー・ウォルシュというパワー・トリオだった。
実のところ、「Funk #49」の成功とジョー・ウォルシュの卓越したセンスの光るリフにより、彼が籍を置いたバンドとして初めてメインストリームのロック・スターダムへのし上がったのだった。ジェイムス・ギャングはザ・フーの絶頂期に前座を務め、またレッド・ツェッペリンやハンブル・パイ、ザ・キンクス等とも共演を果たしている。
6. ラッシュ
ラッシュというバンドに対する人々の反応に中途半端な妥協点など存在しない。彼らは多くの人々の意識の中で、プログレッシヴ・ロックをメインストリームへと引き入れる役割を果たした史上最高のパワー・トリオという確固たる地位を得ている。
恐ろしく複雑かつ実験的な楽曲と、SFやファンタジー色の濃いテーマを持った歌詞(コンセプト・アルバム『2112』を聴けばその意味が分かるはず)を携えた、難解な音楽的センスで知られるラッシュの重要性は、ファンタジーの領域をも軽々と凌駕するほどだ。
彼らは誰より早くシンセサイザーをバンドのサウンドに採り入れ、その上で成功を収めたロック・バンドのひとつでもある。ニュー・ウェイヴがよりギター志向のサウンドに取って代わられると、ラッシュもその流れに則り、元来のルーツであるパワー・トリオに戻った。解散を発表した今もなお、ラッシュはロック史上屈指の過小評価されているバンドであり続けている。
5. モーターヘッド
1993年の映画『ハードロック・ハイジャック』の中で、ブレンダン・フレイザー演じる売れないロッカーが、ハロルド・レイミス演じる典型的なレコード会社の重役に向かって言うセリフがある。「レミーと神様、レスリングしたらどっちが勝つと思う?」。あいまいな答えを返すレイミスに、フレイザーは勝ち誇ってこう応える。「今のは引っかけ問題でした。レミーは神だもん」。
彼の言い分は間違ってなどいない。モーターヘッドのハード・ロック・サウンドはヘヴィ・メタルの台頭におけるパイオニア的存在だったのだ。ギタリストの“ファスト”エディ・クラーク、ドラマーのフィル・“フィルシー・アニマル”テイラーと、ベース兼リード・ヴォーカルのキルミスターを擁するこのグループは、パワー・トリオの“パワー”の部分を前面に押し出し、後のスラッシュ・メタルが進む道を切り拓いた。
4. ザ・ポリス
70年代後期は新人ロック・バンドにとって実り多き時代だった。パンクは全盛期を迎え、レゲエを採り入れたロックが人気を集め始め、ポスト・パンクとニュー・ウェイヴはまだ形成段階にあった。そこへ出現したのがザ・ポリスである。
スティング、アンディ・サマーズ、スチュワート・コープランドは、これら全ての要素を、僅かばかりのジャズの要素と共に彼らのバンド・サウンドへと落とし込み、やがて世界を征服することになる英国史上最高のパワー・トリオのひとつへと進化したのだった。
彼らが飛ばした大ヒット曲の数々はいまだにラジオの定番になっている。しかもそれはロックに限ったことではないのだ。彼らの代表曲「Every Breath You Take(見つめていたい)」は80年代にジャンルを超えたスマッシュ・ヒットを記録した上に、90年代に全米チャートで頂点を極めたパフ・ダディの「I’ll Be Missing You」の中でサンプリングされて大復活を遂げた。
バンドは人気絶頂のさなかに解散し、メンバーたちは各々ソロとして成功を収めているが、ザ・ポリスが昔ながらのロック・サウンドの殻を打ち破り、パワー・トリオとして新たな定義を作り変えたことは紛れもない事実である。
3. ニルヴァーナ
カート・コバーン、クリス・ノヴォゼリック、デイヴ・グロールが革命をスタートさせたのは1991年のことだった。彼らはその過程で最高のパワー・トリオは、個々のメンバーの持つ才能を遥かに凌ぐ力や激情を引き出すことが可能であることを世界に知らしめた。
当初は4人組だったニルヴァーナだが、人々の記憶に残るバンドの姿は永遠に3人組だ。1991年、アルバム『Nevermind』のリリースと共に、ニルヴァーナはあっと言う間にこの世代における最も重要なバンドになった。
結論から言えば、彼らのキャリアは1994年のコバーンの自死によって悲劇的なほど短命に終わり、もしもバンドが存続していたらどれほどのことを成し遂げたことだろうと、世の中の多くの人々がただただ思いを巡らすばかりになってしまった。
しかしながら、グランジの先駆者たちがオルタナティヴ・ロックとパンク、そしてシアトルの音楽シーンをメインストリームへと押し上げる役割を果たしたことは確かであり、色褪せることのないニルヴァーナのレガシーや、ジャンルの定義代わりとなったアンセムを書き上げたという功績以外にも、後の世代のバンドたちにとっては大いなる刺激となっているのだ。
2. ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス
60年代、シアトルで生まれた稀代のブルーズ・ギタリストを、当時の流行最先端の街ロンドンに連れて行き、彼と互角の腕を持つリズム・セクションと出逢わせたら何が起こるだろうか?
ここでご紹介するのは、そこから生まれた音楽史上最も革新的なパワー・トリオである。言うまでもなく、そのギタリストとはジミ・ヘンドリックスであり、リズム・セクションとはノエル・レディングとミッチ・ミッチェルのことだ。
それから僅か3年の間に、当時の流行の先端だった彼らはサイケデリック・ロックの権化となり、預かり知らぬうちにハード・ロックのパイオニアにもなっていた。ヘンドリックスが縦横に操るリズムとリード・ギターのコンビネーションは、渦を巻くようなサウンドを生み出し(これには彼のフィードバックとワウワウ・ペダルの使い方が大いに関係している)、後世のパワー系ギタリストたちに絶大なる影響を与えた。
ジ・エクスペリエンスの傑出した才能に手っ取り早く触れるなら、「Purple Haze」「Hey Joe」「The Wind Cries Mary」 、それから 「Voodoo Child (Slight Return)」は最高のサンプルである。
1. クリーム
エリック・クラプトン、ジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカー。おおよそこの3人に匹敵するほど強烈なヘヴィ級パンチを繰り出せるパワー・トリオを見つけるのは至難の業だろう。
1968年のバンドの3枚目のアルバム『Wheels Of Fire』が史上初めてプラチナ・ディスクを獲得した2枚組アルバムだったなどという記録を持ち出さなくても、60年代を代表するイカした曲を幾つも生み出したクリームが、この史上最高のパワー・トリオのリストにおいても難なくNo.1の座を手に入れることに、異議を差し挟む余地はないはずだ。
冒頭から特徴的なリフをフィーチャーした「Sunshine Of Your Love」や、次々に展開して行くサウンド・スケープが鮮烈な「White Room」といったヒット・シングルを繰り出しながら、サイケとブルーズ・ロックをメインストリームへと押し上げたクリームはまさしく、バンド名さながら[訳注:creamには「最良のもの」という意味がある]、クラプトンにとってはロック界における最初のギター・ヒーローという確固たる地位に定着させる足ががりになった。
Written By Wyoming Reynolds
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2022年4月15日発売
国内盤CD:6月8日発売
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