ニッキー・ミナージュのベスト・ソング20 : ヒップホップの女王による名曲をランキング

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Photo: Alex Loucas, courtesy of Young Money/Cash Money

ニッキー・ミナージュ(Nicki Minaj)は、ヒップホップ界で最も重要なアーティストのひとりであるということに疑問の余地はないだろう。

今では、彼女は”Billboard”のホット100チャートに最も長いあいだランクインした女性アーティストであり、その記録はあのアレサ・フランクリンのそれさえをも凌駕している。ニッキーは、2010年代を通してヒップホップ界で絶え間なくクリエイティブな力を発揮してきた。彼女は偉大であると同時に物議を醸す存在であり、絶えずニュースを賑わしている。とはいえニッキー・ミナージュの最終的な評価を定めるのは、彼女が作り出した数々の名曲である。

現在ニッキーはさまざまなブランドとのタイアップや記録破りのラジオ番組など多方面に活躍を広げている。とはいえ2004年に彼女が参加していたグループ、フッドスターズ(The Hood$tars)で行った主張、「私は手出し無用の女」という姿勢を一貫して貫いている。いったいどうして”手出し無用”なのか、その理由を証明する代表曲20曲を紹介しよう。

今回のリストから漏れてしまったニッキー・ミナージュの名曲はあるだろうか? もしもお気づきのトラックがあるなら、コメント欄に是非書き込んでいただきたい。

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20位「5 Star Remix」(ヨー・ガッティ feat. グッチ・メイン、トリーナ、ニッキー・ミナージュ)

ヨー・ガッティが2009年にリリースしたこのシングルのリミックスに、ニッキーはオールスター・キャストの一員として参加している。当時の彼女はまだ駆け出しの新人だったが、ここではガッティ、グッチ・メイン、そして昔から影響を受けてきたトリーナに決して引けを取らない強烈な存在感を放っている。

最後のヴァースでは主役の座をかっさらい、フェンディ・プリント、アダルトグッズ (後にツアーのステージにも持ち込んだ)、原宿の女の子を歌詞の中に読み込んでいる。この瞬間、ひとりのスターが誕生した。この数年後、彼女はガッティの「Rack It Up」に再びゲスト・アーティストとして参加し、自らの成長ぶりを見せつけている。

 

19位「Win Again」

もしもニッキーが卒業論文のテーマを探すなら、2014年の『The Pinkprint』にボーナス・トラックとして収録されたこの曲が、そのテーマとなるだろう。自らの圧倒的な力を誇示しながら、彼女は自分をアカデミー賞に21回ノミネートされ、3度受賞したメリル・ストリープと比較している。

そして、「私はもっと批評家に××をかましてやる (I’m gonna s__t on my critics some more)」と警告。このアンセムのようなシングルは、ニッキーの成功の象徴ともいうべき作品になっている。

 

18位「Catch Me」

「Catch Me」は後に彼女のデビュー・アルバム『Pink Friday』の最後にボーナス・トラックとして収録され、ニッキーの未来的なサウンドの青写真を描くことになった曲だ。長い間ファンに愛されてきたこの曲は、彼女のふたつの顔を表現している。つまりマシンガンのように聴き手を攻撃するラッパーと、完全なるR&Bディーヴァというふたつの顔である。

スイス・ビーツがプロデュースしたこの曲は、ハードなトライバル・ベースと宇宙的なシンセサイザーが特徴となっている。このハイブリッド・サウンドは、その後ニッキー・ミナージュが作り出す数々の名曲で前面に出てくることになる。

 

17位「Anaconda」

「Anaconda」は、ニッキー自身も認める、”キワモノ”的な1曲だ。ほかの彼女の楽曲ほど強力ではないかもしれないが、この曲のミュージックビデオは初めてインターネットで公開されたときに大ブレイクし、今も再生回数を増やし続けている。

 

16位「Here I Am」

『Pink Friday』の10曲目に収録された「Here I Am」で、ニッキーはめずらしく自分の不安をさらけ出している。ここでは「どうしてあなたは私の中の最悪の部分しか見られないの? (Why is it that you can only see the worst in me?)」、あるいは「でも嘘をつかないでいるとちょっと傷ついてしまう! (But to keep it all real it’s kind of hurting me!)」といった言葉が放たれている。

もともと「Letter To The Media」と題されていたこの曲は、音楽評論家と周囲の人間に対するメッセージとなっており、どちらの面でも効果的なものとなっていた。この「Here I Am」は、『Pink Friday』のアグレッシブさと脆弱さというふたつの相反する性格を反映している。傷ついてはいたものの、それでもニッキーは堂々とした姿勢を貫いていた。ここではヘレン・レディの有名なアンセム「I Am Woman」も引用されている。

 

15位「Chun-Li」

2017年の「Regret In Your Tears」の後、1年間沈黙していたニッキーは2018年4月に「Chun-Li」と「Barbie Tingz」という2枚のシングルで再び姿を現した。これらの曲は、リリースが予定されていたアルバム『Queen』の予告編となっていた。

彼女はここで匿名の攻撃者たちを批判していたが、それだけではなかった。明らかにニッキーは、「一字一句すべての言葉をコピー」するような模倣者たちをものともせず、ヒップホップの王座を目指していたのだ。

慣れ親しんだ1990年代半ばのラッパーを彷彿とさせるこの曲には、彼女のもうひとりの分身であるチュン・リーが登場している (その名前はゲーム『ストリートファイター』のキャラクターにちなんだものだった)。催眠術のように魅惑的なサックスと聴き手を引き込むようなビートに乗ってニッキーはこのシングルを作り、全米シングルチャートでトップ10入りを果たした。

 

14位「Hello Good Morning (Remix)」(ディディ– ダーディ・マネー feat. リック・ロス&ニッキー・ミナージュ)

『Pink Friday』発表前のニッキーは、ほかのアーティストの曲にゲスト参加しては主役の座をかっさらい、曲をスマッシュヒットにしていた。そんな中にはP・ディディのような超大物の作品も含まれている。

たとえば、リック・ロスをフィーチャーしたダーティ・マネーの「Hello Good Morning (Remix)」もそのひとつ。ニッキーの機銃掃射のようなラップは、ロスのよりメロウなラップと好対照をなしている。ここでのニッキーは、自分がリル・キムをしのぐ存在になったとまで主張している。

 

13位「FEFE」(6ix9ine feat. ニッキー・ミナージュ&マーダ・ビーツ)

ニッキー・ミナージュが物議を醸したラッパー6ix9ineと「FEFE」で組んだときは、間違いなく賛否両論が渦巻いた。2018年の夏、この顔合わせはかなりの拒否反応を呼び起こしたが、「FEFE」がヒット間違いなしの曲であることも明らかだった。それはまた、ニッキーがヒップホップのSoundCloud世代の動向をしっかりと把握しており、いまだに印象的なヴァースを提供できることを証明していた。

 

12位「Beez In The Trap」(feat. 2チェインズ)

2010年代のトラップ・ミュージック・シーンにおいて、ニッキーがどれほど重要な存在であったかのを理解している人は少ないだろう。つまるところ、彼女はこのジャンルの最大の擁護者であるリル・ウェインの弟子なのだ。「5 Star Remix」と同じように、この「Beez In The Trap」でもニッキーはニューヨーク風のフローと南部風のラップを自在に切り替えられることを証明した。

 

11位「Roman’s Revenge」(feat. エミネム)

この「Roman’s Revenge」は、リル・キムとの確執が続いていた時期にリリースされた有名なディス・トラック。この曲には、ニッキーの分身のひとりであるローマンが登場し、ヒップホップ界で有名なもう一つの分身スリム・シェイディとバトルを繰り広げている。歌詞はエミネムの怒りの感情にも匹敵するようなダーティな内容で、ローマンの暴力性も露わになっている。ここでのニッキーとエミネムは、お互いを最高に引き立て合っている。

スイス・ビーツがプロデュースを担当した「Roman’s Revenge」はかなり混沌とした音作りになっており、ニッキーの曲の中でも特にワイルドな曲のひとつである。ローマンはこのあともニッキーの作品に登場しており、たとえば『Pink Friday』の続編『Pink Friday : Roman Reloaded』にも顔を見せている。

 

10位「Starships」

2010年代初頭にEDMが爆発的なブームとなり、メインストリーム・ポップを席巻する中、ニッキーもEDMを取り入れ、同じ時代のポップスターたちと真っ向からぶつかり合った。

「Starships」はヒップホップ・スターというニッキーのイメージを裏切るような大胆な曲で、彼女のコアなファンやヒップホップ界の人間を動揺させた。たとえばヒップホップラジオ局「ホット97」のピーター・ローゼンバーグは、公の場でこの曲を罵倒している。そうした賛否両論が沈静化すると、ニッキーはヒップホップの新たな道を切り開いたとして評価されることになった。

この曲は全米シングルチャートで最高5位に到達。2012年の世界的な大ヒット曲となり、EDMを駆使したニッキーの曲の基本的なトーンを定めることになった。

 

9位「High School」(feat. リル・ウェイン)

ニッキーのさまざまな才能のひとつとして、自らのアルバムをデラックス・エディションなどの形態にパッケージし直す能力があげられる。『Pink Friday. Roman Reloaded』に収録されていた「High School」は、ダンス・ミュージックとヒップホップを融合させた曲だった。

彼女は既に2010年にショーン・キングストンの「Letting Go (Dutty Love)」にゲスト参加してダンス・ミュージックでの成功を手にしていたが、「High School」では師匠であるリル・ウェインとの共演でさらに一歩先に踏み込んでいる。曲の途中で彼女はリディムをブレイクし、自らのトリニダードのルーツを表現している。彼女は2018年の「Coco Chanel」で再びこのサウンドを使うことになった。

 

8位「Truffle Butter」(feat. ドレイク&リル・ウェイン)

「Truffle Butter」のハウス・ビートは、どのヒップホップDJのセットにも入っているように思える。この曲では、ヤング・マネーの「ビッグ・スリー」として知られるリル・ウェイン、ドレイク、ニッキーの3人がスリリングで魅力的なヴァースを披露している。3人とも自分のパートを「Thinkin’ out loud」で始めており、この『The Pinkprint』のボーナス・トラックでの結束力は比類のないものとなっている。

 

7位「Feeling Myself」(feat. ビヨンセ)

『The Pinkprint』の「Feeling Myself」は、長い時間をかけて作られたように思われるコラボレーションだ。ここでは2人の女王が共演している。ビヨンセは、自らの名前をタイトルにしたアルバム『Beyoncé』のサプライズ・リリースで衝撃を放ったあと、ニッキーとの共演でさらに注目を集めた。

コーチェラで撮影されたミュージック・ビデオには、音楽界で大活躍する強い女性アーティストふたりの友情がはっきりと表れている。このふたりは、ビヨンセの「***Flawless」のリミックスで再び共演し、相性の良さを見せつけている。

 

6位「Your Love」

2010年、ニッキーのデビューシングル「Massive Attack」は本人が望んでいたような商業的な成功を収めることはできなかったが、彼女はそれからまもなく第2弾シングル「Your Love」をリリースした。もともと彼女のミックステープ『Barbie World』に収録されていたこの曲はラジオ局にリークされ、たちまちDJたちのお気に入り曲になった。

「Your Love」はアニー・レノックスが1995年に発表した名曲「No More “I Love You’s”」のサンプルを使っており、その上で歌うニッキーの魅惑的なラップと歌声が特徴的だ。原曲の歌詞を少し変えた「Your Love」は、ニッキーがメインストリームのソロ・スターになる能力を持っていることを証明した。この曲は全米シングルチャートで最高14位を記録。さらにホット・ラップ・ソングズ・チャートでは首位を獲得した。女性アーティストがこのチャートでトップに立つのは、2003年のリル・キムの「Magic Stick」以来の出来事だった。

 

5位「Monster」(カニエ・ウェスト feat. ジェイ・Z、リック・ロス、ニッキー・ミナージュ、ボン・アイヴァー)

「Pull up in that monster automobile gangsta … (そのモンスターみたいな車を止めて、ギャングスタ…)」

残りの部分は繰り返す必要もない。なぜなら、これを読んでいるあなたの頭の中ではちゃんと聴こえているはずだからだ。これはニッキー・ミナージュの最も象徴的なヴァースであり、彼女の最高のゲスト参加作品である。これによってニッキーは、男女問わずヒップホップ・アーティストの中で地位を確固たるものにした。

カニエ・ウェストの『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』で堂々たる「Monster」のMCを務めたニッキーについて、ファンや評論家は「彼女が主役の座を奪った」という意見で一致した。どんなパーティーでも、この曲が流れてきたら客はみんな一緒に歌い始める。そしてほかのゲストが霞んでしまうようなニッキーのヴァースが始まるのを今か今かと待っている。

 

4位「Moment 4 Life」(feat. ドレイク)

ニッキー・ミナージュの登場は、まるでおとぎ話のような物語に思える。特にデビュー・アルバムの『Pink Friday』を振り返ってみると、そう思えてくる。

ドレイクをフィーチャーした「Moment 4 Life」で、ニッキーは自分が高い評価を得たことを嬉しさいっぱいに表現。2人のMCは完全に正反対の関係で、ドレイクはヴァースのあいだに「プロポーズ」のチャンスを得ている。この曲はラジオでも人気を博し、全米チャートでは最高13位を記録。またラップ・ソングズ・チャートでは、ニッキーにとって2度目の1位獲得曲となった。

 

3位「Super Bass」

ヒップホップ界で既にスターの座を確保していたニッキーは、メインストリーム・ポップの世界でもセンセーショナルな存在になるための起爆剤を必要としていた。そして『Pink Friday』のこのエネルギッシュでまばゆいボーナス・トラックがその起爆剤となり、彼女を世界中に知らしめた。

やみつきになるようなプリ・コーラスとフックを含む「Super Bass」によって、ニッキーのラップと歌のカラフルな性質はファンにおなじみのものに、最終的には、彼女がこの後進んでいくダンスポップ路線の出発点にもなった。

 

2位「Lookin’Ass」

ラッパーは、まったく手を緩めることなく誰かの急所を責めるような曲を作ることがある。多くの場合、その曲は完膚なきまでに相手を叩きのめし、最終的には議論の余地すらなくなる。

2014年、『The Pinkprint』をリリースする前のニッキーはイメージ・チェンジの途中のように見えた。ピンクのウィッグと『Pink Friday : Roman Reloaded』のカラフルな曲に飽き飽きしたニッキーの新しい方向性は、評論家たちを打ちのめすようなものになっていた。

「Lookin’ Ass」でニッキーは最高に荒々しい姿を見せており、女性差別に対して牙を剥くと同時に女の子らしさも打ち出している。これはTLCの「No Scrubs」に対するヒップホップからの返答ともいうべきトラックだったが、その内容はより厳しいものになった。「Lookin’Ass」は、紛れもなく彼女の最も強力なラップ・パフォーマンスのひとつであり、この曲はニッキーのベスト・ソング・リストの中でその座を揺るぎないものにしている。

 

1位「Itty Bitty Piggy」

ニッキ・ミナージュのベスト・ソングを語るなら、彼女のミックステープ時代を忘れるわけにはいかない。「Super Bass」がリリースされる前、ビヨンセとのコラボレーションよりも前、リル・ウェインやドレイクとのコラボレーションよりも前、「Monster」にゲスト・アーティストとして参加して主役を奪う以前。そこには2009年のミックステープ『Beam Me Up Scotty』があり、「Itty Bitty Piggy」があった。

ソウルジャ・ボーイの「Donk」のDJ・ホリディ・ビートを改作したバッキング・トラックに乗せてニッキーはラップを繰り広げ、見事なフロー、ライミング、パンチラインを披露している。彼女は4分足らずのあいだに、テレビのシチュエーション・コメディ『A Different World』のウィットリー、童話の『赤ずきんちゃん』、オスカー・メイヤーのウィンナー、イスラム教の挨拶「As-salāmu ‘alaykum」などを引用。こうした歌詞の見事さによって、ニッキーは一躍有名になった。簡単に言えば、「Itty Bitty Piggy」はニッキーの最も純粋な姿を表した曲である。

Written By Da’Shan Smith



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