世界中の音楽博物館13選:プレスリーやビートルズ、アバやモータウンらを今に紹介する観光名所(紹介動画付き)
“聖地”とされるグレイスランドを訪れるエルヴィス・プレスリーのファンや、メンバーが使用していた楽器を間近に見るためにわざわざ飛行機で海を渡るザ・ビートルズのファンは、年に50万人以上を数える。どうしてそれほど多くの人が、こうした場所を訪れるのだろうか? 音楽ファンが好きなのは、お気に入りアーティストの作品だけではない。
それらの作品の誕生の裏にある逸話にも惹かれるのである。アメリカのヒッツヴィルからリヴァプールに至るまで、音楽博物館は世界のさまざまな場所に数多く存在する。ここでは、その中でも特にすばらしい例をいくつかご紹介しよう。
1. モータウン・ミュージアム(アメリカ ミシガン州デトロイト)
ここはあの伝説の”モータウン・サウンド”が生まれた場所。モータウン・レーベルの最初の本社があったデトロイト中心部の一角だ(“ヒッツヴィルUSA”の通称でも知られる)。1959年から1989年まで、ここにはモータウンのレコーディング・スタジオとオフィスがあった。そしてその上の階は、レーベルの創設者ベリー・ゴーディ・ジュニアの住まいになっていた。
モータウンがロサンゼルスに移転すると、ここはミュージアムに改装され、レーベルに所属したアーティストの衣装、写真、そのほかの記念品が展示されるようになった。現在は5万平方フィートにも及ぶ拡張工事が計画中。ゴーディが建てたこぢんまりした建物は、さらに壮大なものになろうとしている。
2. ミュージアム・オブ・ポップ・カルチャー(MoPop)(アメリカ ワシントン州シアトル)
シアトルの観光名所というとスペース・ニードル(184mの塔)とパイク・プレース・マーケット(公営農民市場)が有名だが、”MoPop”ことミュージアム・オブ・ポップ・カルチャーにもかなりの数の観光客が押し寄せている。この未来的なミュージアムは敷地面積が14万平方フィートもあり、フランク・ゲーリーが設計した曲線のデザインがその特徴になっており”音楽のあらゆるエネルギーと流動性を伝える”ことをテーマとしている。
マイクロソフトの共同創設者ポール・アレンが設立したこのミュージアムは、かつてはエクスペリエンス・ミュージック・プロジェクトと呼ばれていた。ここでは最初期のニルヴァーナの作品から、プリンスの『Purple Rain』に至るまで、ありとあらゆるジャンルの音楽が採り上げられている。最近建てられたクリス・コーネルの彫像も見どころのひとつだ。
3. ビートルズ・ストーリー(イギリス リヴァプール)
ザ・ビートルズ・ストーリーは、リヴァプールを訪れたなら足を運ばない手はないすばらしい音楽博物館であり、ザ・ビートルズの活動やグループが残した作品をたどることができる極め付きの名所と言っていい。この博物館はユネスコ世界遺産に選ばれたロイヤル・アルバート・ドックにあり、後にも先にも例のない大スターになったザ・ビートルズの軌跡を臨場感たっぷりに追体験することができる。
ここには当時そのままに復元されたキャヴァーン・クラブや、本人たちが使っていた楽器の現物、珍しい写真といった記念品が展示されている。これらの常設展示に加え、ザ・ビートルズ・ストーリーでは企画展も行われている。そのひとつである”インド滞在中のザ・ビートルズ”では、転機を迎えていたグループの面々がインドのリシケシを訪れたときの記録が特集されている。
4. アバ・ザ・ミュージアム(スウェーデン ストックホルム)
ここはスウェーデンに行ったらぜひ訪れるべき場所だ。このアバ・ザ・ミュージアムでは非常にインタラクティヴな展示が行われており、このグループの驚くべき活動の記録を単に眺めるだけでなく、アバに関する知識や音楽の腕を試すテストも楽しむことができる。カラオケ・ブースに入って、アバの5人目のメンバーになるための”オーディション”に参加できるのだ。
ここではアバの映像と一緒に歌うだけでなく、ミュージック・ビデオの中にも入り込むことができる。さらにこのミュージアムにはレアな衣装も展示されており、その中にはユーロヴィジョン歌謡祭での歴史的なステージで着用した衣装も含まれている。
5. スタックス・ミュージアム・オブ・アメリカン・ソウル・ミュージック(アメリカ テネシー州メンフィス)
“世界で唯一のアメリカン・ソウル・ミュージック専門ミュージアム”と銘打ったスタックス・ミュージアムは、歴史の長い博物館だ。アイザック・ヘイズ、オーティス・レディング、ルーファス・トーマスといったソウルズヴィルのスターたちを讃えるこのミュージアムは、すばらしい宝物の数々を展示している。
その中には、トーマス & リトル・ミルトンが着用していた華やかなステージ衣装、ファロン・ジョーンズのサックス (オーティスとジョーンズを含むバーケイズのメンバーが亡くなった飛行機事故の現場に遺されていた)、アイザック・ヘイズが特注した1972年型キャデラック (ウサギの毛のカーペットと純金製のワイパーもしっかり付いている) といったものが含まれている。
6. ロックンロールの殿堂 (Rock And Roll Hall Of Fame)(アメリカ オハイオ州クリーヴランド)
1995年にオープンしたこの音楽博物館は、ロックン・ロールの聖地と言ってもいい場所だ。ここにはロック関連の貴重なアイテムを陳列した7階建ての展示室や、4室もの上映室が完備されている。また、ロバート・ジョンソンからデフ・レパードに至るまで、さまざまなテーマを扱う企画展も開催されている。
さらにはロックだけにとどまらず、ヒップホップやポップスに関する展示物も増えつつある。その中には、クリス・コーネルのギターや、ビースティー・ボーイズが「Intergalactic」のプロモーション・ビデオの中で着用している衣装といったものも含まれている。音楽ファンであれば誰もが楽しめること請け合いの博物館だ。
7. グラミー・ミュージアム(アメリカ カリフォルニア州ロサンゼルス)
ロックンロールの殿堂と同じように、ロサンゼルスにあるグラミー・ミュージアムも、ザ・ビートルズからバックストリート・ボーイズに至るまで、ありとあらゆるジャンルの音楽を対象にした展示を行っている。この非常にインタラクティヴな博物館では、実際に楽器を手に取って演奏方法を学ぶことができるほか、手書きの歌詞や貴重な写真なども展示されている。
さらに館内のシアターでは多彩なイベントが開催されており、たとえばガンズ・アンド・ローゼズのダフ・マッケイガンによるソロ・アルバムのプレビュー、あるいはここでしか観ることのできないドキュメンタリーの上映といったものも開催されている。またミシシッピ州には姉妹館もあり、そちらはデルタ地帯のアーティストの関連品を対象にした展示が行われている。
8. ヘンデル&ヘンドリクス・イン・ロンドン(イギリス ロンドン)
ロンドンのブルック・ストリート25番地は、クラシックの有名作曲家ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルが住んでいた場所であり、その200年後にはロックの伝説的ギタリスト、ジミ・ヘンドリクスもガールフレンドと一緒に住むことになった。
ヘンデル&ヘンドリクス・イン・ロンドンは、このたまたま同じ建物に住んでいたふたりの天才音楽家を讃えるというユニークな博物館である。ここでは、このふたりの曲を演奏するライヴや音楽講座も開催されている。
9. ボブ・マーリー・ミュージアム(ジャマイカ・キングストン)
レゲエの伝説的ミュージシャン、ボブ・マーリーの自宅を展示施設として改装したのがこの博物館。ボブは、1975年から1981年に亡くなるまでのあいだここに住んでいた。ここにはボブの大人気曲のほとんどが録音されたレコーディング・スタジオもあり、プライベートな暮らしを垣間見させてくれる思い出の品の数々が展示されている。
さらにはバック・コーラス・グループのアイ・スリーズの衣装や、ボブが受賞したグラミー賞の”Lifetime Achievement Award (特別功労賞生涯業績賞)”の授賞記念品といったものも陳列されている。
10. エディット・ピアフ博物館(フランス・パリ)
フランス・パリのペール・ラシェーズ墓地にはシャンソン歌手エディット・ピアフの墓があり、毎年数多くの人が訪れて、エディット・ピアフ博物館はパリの隠れた観光名所となっている。この博物館はパリ11区の小さなアパルトマンの一室にあり、衣服、写真、プライベートな手紙といったピアフの個人的な所持品が展示されている。ここではガイド付きのツアーは用意されていないが、運営者であるピアフのファン/友人が今は亡き”小さなすずめ”の個人的な思い出を語ってくれる。
11. カントリー・ミュージックの殿堂 (Country Music Hall Of Fame And Museum)(アメリカ テネシー州ナッシュヴィル)
当然ながら、音楽の街ナッシュヴィルにはカントリー・ミュージックやカントリー界のスターの音楽博物館がたくさんある。その例としては、ジョニー・キャッシュ・ミュージアムやパッツィ・クライン・ミュージアムが挙げられる。とはいえ、一箇所ですべてを観たいという人には、敷地面積35万平方フィートの”カントリー・ミュージックの殿堂”がお勧めだ。
ここは3つのフロアに分かれており、カントリー・ミュージックの歴史をたどることができる。また、”Outlaws & Armadillos: Country’s Roaring 70s”や””Emmylou Harris: Songbird’s Flight”といった企画展も好評だ。
12. 国立ブルース博物館(アメリカ ミズーリ州セントルイス)
2016年以降、国立ブルース博物館は”ブルースの伝統を保つ”ことを目的として、貴重な写真や音源のアーカイブを増やしつつある。ここではインタラクティヴな展示、衣装、遺品、資料映像を通じて、アフリカを起点として現在まで続くブルースの歴史をたどることができる。体験できるのは過去のブルースだけにとどまらない。毎週木・金・土曜日には、ライヴ演奏も行われている。
13. グレイスランド(アメリカ テネシー州メンフィス)
エルヴィス・プレスリーの伝説的な豪邸グレイスランドは世界で最も有名なロックンロールの”邸宅”であり、そして今では世界で最も有名な音楽博物館になっている。ここはエルヴィスの驚異的な活動と共に、20世紀中期のキッチュな俗悪文化も体験することができる。エルヴィスのファンでない人でも、彼の人目を引く衣装や有名なジャングル・ルーム(壁に滝を設置し、緑のカーペットを敷き詰めた部屋)を楽しむことができるだろう。
1957年、22歳のエルヴィスは、このベッドルームが8部屋ある建物を購入した。それからこのグレイスランドは大幅に改築されてきた。2017年には4,500万ドルをかけて拡張工事が行われ、エルヴィス・プレスリー自動車博物館やエルヴィス・ジ・エンタテイナー・キャリア博物館も併設されるようになった。ここには今も毎年75万人以上が訪れている。
By Laura Stavropoulos
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