サンプリングされたジェームス・ブラウンのベスト・ソング20曲 : ヒップホップの土台となった名曲達
ジェームス・ブラウンは”ソウルのゴッドファーザー”や”ニュー・ニュー・スーパーヘビー・ファンクの大臣”といった異名で知られていたが、”ブレイクビーツのブラザー”ということもできるだろう。彼のビートは、多くのラップやR&B、その他さまざまな音楽の基本的な構成要素となっている。ジェームス・ブラウンはBボーイのダンサーたちを踊らせただけでなく、ヒップホップをあらゆる意味でファンキーなものにした。今回は、ジェームス・ブラウンのサンプルの中からベスト20を紹介しよう。ここでは、サンプリングされた回数が少ないものから順にたどっていく。
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20位「Take Some –Leave Some」
1973年にリリースされた傑作アルバム『The Payback』では、レイドバックしたGファンクの先輩として雰囲気たっぷりにメッセージを届けてくれる。これはスタジオ・ライヴのようにも聞こえるが、驚くべきことに実はライヴではない。ここでのジェームス・ブラウンは、フレッド・ウェズリー率いるLAのスタジオ・オーケストラが事前に録音したパッキング・トラックの上でフリースタイルにて演奏している。
この曲は、マスター・エースの「Letter To The Better」やソルトン・ペパーの「Solo Power (Syncopated Soul)」で使われている。
19位 マーヴァ・ホイットニー 「Unwind Yourself」
ジェームズ・ブラウン・レヴューの歌姫マーヴァ・ホイットニーは、ジェームス・ブラウンのプロデュースで実に生々しい楽曲を吹き込んでいる。この1968年の曲もそのひとつ。この曲は、DJ・マーク・ザ・キングの「The 900 Number」(曲名はAKAIのS900サンプラーにちなんでいる)やDJ・クールの名曲「Let Me Clear My Throat」の独特なグルーヴを生み出すことになった。
18位「Give It Up Or Turn It A Loose」
1968年に発表されたこの曲のオリジナル・ヴァージョンでは、“スウィート”・チャールズ・シェレルがベースを弾いている。彼はファンクとソウルに傾倒するあまり、若いころにギターのレッスンを受けるため、カーティス・メイフィールドの車を洗車していた人物だ。とはいえヒップホップ・プロデューサーたちのお気に入りは、1970年の『Sex Machine』セッションでジェームス・ブラウンが自らカヴァーしたヴァージョンだ。こちらでは、弱冠19歳のブーツィー・コリンズがベースを弾いている。
これをサンプリングした例としては、パブリック・エネミーの「Welcome To The Terrordome」、ウルトラマグネティックの「Give The Drummer Some」、デフ・ジェフの「Just A Poet With Soul」が挙げられる。
17位「Talkin’ Loud and Sayin’ Nothing」
ディスはヒップホップの基本構造の一部である。その原型ともいえるこのジェームス・ブラウンによるこの曲は、まさしくサンプリングにうってつけだった。この曲のサンプルを使った例としては、ゲトー・ボーイズの「Talkin’ Loud Ain’t Sayin’ Nothin」、ディヴァイン・スタイラーの「Ain’t Sayin’ Nothin」、デ・ラ・ソウルの「Down Syndrome」が挙げられる。
ちなみに、この「Talkin’Loud And Sayin’Nothin’」という曲はふたつのヴァージョンが存在する。ひとつは1970年に録音された当時未発表のロック・ヴァージョン。もうひとつは1972年にリリースされたファンキー・ヴァージョンである。どうかこのふたつを聴き比べてみてほしい (実のところ、どちらもファンキーだ)。
16位「Blind Man Can See It」
この曲のオリジナル・ヴァージョンは、映画『ブラック・シーザー』のサウンドトラックに収録されていたグルーヴ感あふれる短い曲だった。それでもヒップホップ・アーティストたちは、この曲に大きな魅力があると感じた。その結果、スヌープ・ドッグの「The Vapors」、クーリオの「Sticky Fingers」、ブラックストリートの「No Diggity」でサンプリングされることになった。
15位「Soul Power (Pt.1) 」
ジェームス・ブラウンのファンクの代表作のひとつであるこの曲は、パワフルなソウルを土台としている。曲の原動力となっているのは、ブーツィー・コリンズと彼の兄キャットフィッシュだ。1971年にリリースされたこの曲は、多くのファンを魅了した。この曲をサンプリングした例としては、パブリック・エネミーの「Night Of The Living Baseheads」、BDPの「Poetry」、EPMDの「Total Kaos」が挙げられる。
14位 マーヴァ・ホイットニー「It’s My Thing」
1969年にリリースされた「It’s My Thing」は、マーヴァ・ホイットニーのデビュー・アルバムのタイトル曲である。アイズレー・ブラザースのヒット曲「It’s Your Thing」にインスパイアされたこの曲では、彼女の生々しいファンキーなスタイルが見事に前面に出ている。この曲は、デル・ザ・ファンキー・ホモサピエンの「Money For Sex」やパブリック・エネミーの「Bring The Noise」などでサンプリングされた。
13位「The Boss」
この曲は、ヒップホップ界で大人気になる運命にあった。なぜならヒップホップ・アーティストたちは、悪党、ポン引き、ギャンブラーだらけの1970年代のブラックスプロイテーション映画に憧れていたからだ。このひどく物憂げなグルーヴは、ジェームス・ブラウンが1973年に手掛けた『ブラック・シーザー』のサウンドトラックに収められていた。これを取り上げたものとしては、ナズの「Get Down」、プア・ライチャス・ティーチャーズの名曲「Word To The Wise」などが挙げられる。
12位「Blues And Pants」
ジェームス・ブラウンはホット・パンツにちなんだ曲を少なくとも4曲作っているが、これはそのうちの1曲。1971年のアルバム『Hots Pants』の収録曲で、ブラウンが音楽監督のフレッド・ウェズリーと共作した曲である。この曲のサンプルは、ゲトー・ボーイズの「Scarface」、アイス-Tの「New Jack Hustler」、ソウル・II・ソウルの「Get A Life」などで聴くことができる。
11位「Escape-Ism」
アルバム『Hot Pants』の収録曲はたびたびサンプリングされてきた。この曲も、やはり同じアルバムに入っていたディープなまでにファンキーな曲だ。オニックス「Throw Ya Gunz」、マスター・エース「Ace Iz Wild」、ラン-DMC「Back From Hell」など数多くのアーティストがこの曲をサンプリングしている。
10位 フレッド・ウェズリー & ザ・JB’s「Blow Your Head」
フレッド・ウェズリー & ザ・JB’sの1974年のアルバム『Damn Right I Am Somebody』に収められていたこの曲は、ジェームス・ブラウン自身のシンセ・サウンドで飾られた灼熱のファンクである。これは、音楽的な殺人行為と言ってもいいだろう。
サンプリングによって尊敬の気持ちを表したアーティストの中には、ディゲイブル・プラネッツ「Rebirth Of Slick」、デ・ラ・ソウル「Oooh」、ボム・ザ・ベース「Beat Dis」、パブリック・エネミー「Caught, Can We Get A Witness?」などがいる。
9位「Hot Pants (She Got To Use What She Got To Get What She Wants) 」
ホット・パンツは、1970年代初頭 (のごく短い時期) に流行した女性のファッション・トレンドだった。ジェームス・ブラウンは、このホット・パンツをとても気に入っていた。しかも好きが高じて、1971年にこの曲のシングル・ヴァージョンがチャートで大ヒットしたあと、同じタイトルのアルバムで8分以上のロング・ヴァージョンを再録音しているほどだ。この曲は、エリック・B & ラキムの名曲「Paid In Full」やギャング・スターの「2 Steps Ahead」などでサンプリングされている。
8位「Get On The Good Foot」
1972年のこのヒット曲で、ブラウンは長髪のヒッピーとアフロ・ヘアの黒人の連帯感を歌い上げている。のちには大勢のBボーイやラッパーもこの曲に共感を示した。この曲のサンプルは、2ライヴ・クルーの「Break It On Down」、EPMDの「Jane」シリーズ、ステッツァソニックの「The Hip Hop Band」で使われている。
7位「Say It Loud –I’m Black And I’m Proud」
噂によれば、ジェームス・ブラウンはアフリカ系アメリカ人の活動家からはっきりとした意見表明をしろと圧力を受けていた。1968年に録音されたこのスリリングな曲で、彼はそうした意見表明を大々的な形で行なった。レコーディングでは、小学生のコーラスもフィーチャーされている。
この驚くほど単純だが効果的なアンセムは、サイプレス・ヒルの「Insane In The Brain」、ピート・ロック & CLスムースの「They Reminisce Over You (TROY) 」、インテリジェント・フードラムの「Black And Proud」などでサンプリングされている。
6位「Get Up, Get Into It, Get Involved」
1970年代初頭のジェームス・ブラウンのレコードは、以前よりもあからさまに黒人の政治活動に傾倒を示すようになり、さらには以前よりもハードになった。このリフが前面に出た1970年のジャムは実にファンキーだが、ヘビー級のギター・パートが聴く者を揺さぶり続ける。この曲は当時アルバムに収録されなかったが、7インチ・シングルでリリースされた。
これをサンプリングした例としては、ビースティー・ボーイズの「Sounds Of Science」、BDPの「South Bronx」、パブリック・エネミーの「Welcome To The Terrordome」などが挙げられる。これは、ほとんどパブリック・エネミーの原型ともいえる曲だ。
5位「The Payback」
ここでのジェームス・ブラウンはゴッドファーザー・モード全開。爆発寸前の怒りの中で、復讐を約束している。この「The Payback」で「カラテのことは知らないが、カミソリなら知っている」と語る彼は、最高の復讐方法を頭の中で考えている。まさしく背筋がゾクッとするような曲だ。
これをサンプリングした曲としては、アン・ヴォーグの「Hold On」やアイス・キューブの「Jackin’ For Beats」などが挙げられる。一方、ジェームス・ブラウンのバック・バンド、JB’sは、同じ曲のバッキング・トラックを使って「Same Beat」という曲を作り上げている。
4位 ボビー・バード「Hot Pants –I’m Coming, I’m Coming, I’m Coming」
ボビー・バードはジェームス・ブラウンの右腕であり、1950年代初頭から行動を共にしてきた。彼はブラウンをプロデューサーに迎え、自らもすばらしいレコードを何枚も吹き込んでいる。彼の曲の中で最も多くサンプリングされているのは、あのすばらしい「I Know You Got Soul」のように思える (実際、サンプリングの回数はかなりの数に上っている) 。しかし実のところ、彼の一番のブレイクビーツになったのは「Hot Pants –I’m Coming, I’m Coming, I’m Coming」のほうだ。
1971年にリリースされたこのファンキーでスリリングな曲は、ガイの「My Fantasy」やアイニ・カモーゼの「Here Comes The Hotstepper」、さらにはジェームス・ブラウン自身の「Static」でサンプリングされている。1988年にレアな12インチに収録されたボーナス・ビーツ・ミックスは特にサンプリングされており、ストーン・ローゼズの「Fools Gold」でも聴くことができる。
3位「Funky President (People It’s Bad) 」
リチャード・ニクソンの辞任を受け、ジェラルド・フォードがアメリカ合衆国大統領に就任した1974年にブラウンが作ったのがこの曲。スタジオ・ドラマーのアラン・シュワルツバーグのおかげで流れるようなグルーヴ感がある。一方ブラウンは、ここでファンキーな大統領が必要だと主張している。クレジットされていない女性コーラス の「Hey!」もすばらしい。
この曲は、NWAの「F__k Tha Police」、UMCsの「One To Grow On」、デ・ラ・ソウルの「Brain Washed Follower」などで使われている。
2位 ザ・J.B.’s「The Grunt」
ヒップホップ・ファンなら誰もがこの有名なサックスのフレーズにすぐに気がつくだろう。これは元々、ジェームス・ブラウンの1970年代のバンド、J.B’sが録音したファンキーなインストゥルメンタルに含まれていたフレーズだった。この曲は、キング・レーベルからシングル両面の2パートに分けてリリースされた。ブーツィ & キャットフィッシュ・コリンズをフィーチャーしたJ.B’sのオリジナル・ラインナップはインストゥルメンタル・シングルを2枚だけ出しているが、これはそのうちの1枚である。
「The Grunt」のパート1は、J.B.’sの1972年のアルバム『Food For Thought』に収録され、長年にわたって絶えずサンプリングされてきた。その例としては、ウータンの「Protect Ya Neck」、パブリック・エネミーの「Night of the Living Baseheads」や「Rebel Without A Pause」、そしてエリカ・バドゥ & コモンの「Love of My Life (An Ode to Hip-Hop) 」が挙げられる。
1位「Funky Drummer」
この曲は無数の曲にサンプリングされた結果、大ヒット曲を何曲も生み出してきた。しかしこの曲そのものは、リリースされた1970年当時は大ヒットにならなかった。「Funky Drummer」は、ヒップホップ、R&B、そして1980年代後半に旋風を巻き起こしたインディー・ダンスのありとあらゆるアーティストにリズムのインスピレーションを与えた。
サンプリングされた回数は1,000近くに及んでおり、さらにはストーン・ローゼズのドラマー、レニはこの曲のループに合わせて練習をしていたほどだ。曲名にある「ファンキーなドラマー」とはクライド・スタブルフィールドのことで、彼が叩く究極のドラム・ブレイクは、2部構成のオリジナル・7インチ・シングルのB面最後まで待たないと聴くことはできない。とはいえ、そこまで待つだけの価値は十分にある。
Written By Ian McCann
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