2017年ベスト・ボックス・セット全27選

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聴きたいものは全て聴き尽くしたと、ちょうど思ったその頃に、心躍る新たなリマスターや、それまで全く公表されていなかったアウトテイク、あるいは長年に渡って捜索が続けられていたものの、所在を突き止めることが出来ずにいたレア音源が登場するものだ。その年を代表するようなボックス・セットは例年発売されるが、2017年のベスト・ボックス・セットは実にユニークな作品揃いとなっている。

“ラッキー7”の験担ぎには、やはり特別な何かがあるのだろう。 1967年、77年、87年、そして97年。そういった末尾が「7」の年には、時代を揺るがす革新的な名作の数々がリリースされてきた。今年はそれらが増補新装版となって勢揃いし、2017年のベスト・ボックス・セットの中で大きな位置を占めている。ザ・ビートルズによる最も伝説的なアルバムの荘厳なリミックスから、セックス・ピストルズジャムのアナーキックなパンク・デビュー作、またステレオから爆音を放つ完全無欠なデフ・レパードのロック・アルバムや、時代を象徴したザ・ヴァーヴの賛歌に至るまで、今年周年を迎えた重要な作品が再発されたことにより、音楽史上における最高傑作の幾つかを再発見することが出来た。これらの名盤がどのようにして作られたのか、その背景について少し追ってみたい。

2017年のベスト・ボックス・セットが皆、必ずしも1作のアルバムに焦点を当てた記念盤となっているわけではない。今回のリストには、そのアーティスト/バンドのキャリア全体を讃えている作品(カーペンターズ、ジョン・リー・フッカー、ザ・フーら)も含まれており、多彩な音楽性を備えていたアーティストに対する愛を甦えらすのに ——もしくは初めてそれを発見するのに—— 一役買っている。

年末に当たり、ここで2017年のベスト・ボックス・セット一覧をご紹介しよう。


ザ・ビートルズ『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band 50th-Anniversary Super Deluxe Edition』/『The Christmas Records 

50年前、アルバム『Sgt. Pepper』は世界を驚かせた。そして2017年、ジョージ卿の息子ジャイルズ・マーティンの舵取りによって完成したこの新たなミックスは、今日の人々にとっても尚、刺激的な作品となっている。“サマー・オブ・ラヴ”の縮図であると同時に、スタジオ・ワークの無限の可能性を世界中に知らしめたこのアルバムは、いつの時代においても最高にして最大の音楽的業績のひとつであり続けている。 その発売50周年記念スーパー・デラックス・エディションでは、ザ・ビートルズの貴重品保管庫にしまわれていた未発表音源の使用権を初めて獲得。この傑作の創作過程で実際どんなことが起きていたのかが、ここで明らかにされている。 2017年におけるベスト・ボックス・セットのひとつであるだけでなく、史上最高のボックス・セットのひとつであることは間違いない。

『Sgt. Pepper』が最初にリリースされた時のことを憶えているファンならきっと、ザ・ビートルズが1963年から69年にかけて、毎年ファンクラブ向けにリリースしていた7インチのクリスマス・シングルのことも記憶しているはずだ。年末年始の挨拶代わりとなっていた、屈託のない楽曲群を収録したこれらのレコードは、これまでリイシューされたことがなかった。だが今回、それがカラー盤7枚組としてボックス・セット化。世界中のザ・ビートルズ・ファンの垂涎の的となっている。

チャック・ベリー『The Great Twenty-Eight』 

ロックン・ロールの先駆者によるベスト盤『The Great Twenty-Eight』(偉大なる全28曲)のオリジナル・リリースから35年。今回は更に、ライヴ・アルバム『Oh Yeah! Live In Detroit』や、レア音源集アルバム『More Chuck Berry』、そして限定クリスマスEP『Berry Christmas』を加え、“偉大なる全58曲”にまで拡大した。今年初めに90歳でこの世を去った、天才的開拓者を追悼するに相応しいコレクションだ。

カーペンターズThe Vinyl Collection 
創造的なソングライティングと気品ある声で人々を魅了し、「(They Long To Be) Close To You(邦題:遥かなる影)」や「Rainy Days And Mondays(邦題:雨の日と月曜日は)」を始めとするヒットの数々を世に送り出したカーペンターズ。12枚組LPボックス・セット『The Vinyl Collection』で、世界は再びその魔法にかかるだろう。

デフ・レパード:『Hysteria: 30th-Anniversary Super Deluxe Box Set 

1987年に発表された本作は、そのタイトル(ヒステリア:hysteria=狂乱、病的なまでの興奮)に相応しく、デフ・レパードを超大物スターへと押し上げた。そして今回の7枚組スーパー・デラックス・ボックス・セットもまた、ファンの間に新たな興奮を巻き起こしている。当時の状況を追体験させてくれるのが、本アルバム期全体を網羅するプロモーション・ビデオ集と、ドキュメンタリー映像作品『Classic Albums』だ。そしてリマスターを通じ、『Hysteria』が今も尚、傑作として賞賛されている理由が証明されている。シングル・エディットやB面曲集も含め、今聴いても驚くほど素晴らしいサウンドを響かせるこのアルバム。一方、1989年のライヴ音源には、当時の彼らの堂々たる姿が捉えられている。

ジョン・リー・フッカー『King Of The Boogie 
“地を這うキング・スネーク”(Crawling King Snake)ことジョン・リー・フッカーの生誕100周年を記念する、豪華写真集付き5枚組CD。ライヴ録音や一連の未発表音源を含む、全100曲を収録。

ハンブル・パイ『The A&M Vinyl Box Set 1970-1975』 


ハンブル・パイの“極上の7切れ”とも言うべき名盤7作品が、今回180g重量盤9枚組LPボックス・セットとして登場。彼らがフィルモアを揺るがせている瞬間を捉えた『Performance Rockin’ the Fillmore』を始め、70年代における最重要級ブリティッシュ・ブルース・ロック・バンドの地位を勝ち取った、彼らの魅力が余すところなく詰め込まれている。

ジャム『1977』

ジャムのデビューは、パンクがメインストリームに躍り出たのと時を同じくしていたが、彼らは昔から、他の同世代のバンドよりも遥かに博識であった。短期間に続けざまに発表され、成功を収めた彼らの最初のアルバム2枚、すなわち『In The City』と『This Is The Modern World』に、未発表デモやライヴ音源を加えたこの5枚組CDボックス・セットは、1977年がジャムの年であったことを証明している。

ボブ・マーリーExodus 40: The Movement Continues Super Deluxe Box Set 

オリジナル・アルバム『Exodus』と、コンサートのライヴ音源からは、ボブ・マーリー本来の強力なメッセージが伝わってくる。だが、ボブ・マーリーの息子ジギーによって新たなミックスが施された『Exodus 40: The Movement Continues』は、絶妙な装飾音を僅かに加え、未発表のセッション・レコーディング音源を発掘したおかげで、本アルバムが現代においても極めて重要な意味を持つエネルギッシュなメッセージ作であることを確実にした。

ポール・マッカートニーFlowers In The Dirt: Deluxe Box Set 
あのレノン/マッカートニーというクレジットを思い出していただけるだろうか? ポール・マッカートニーはコラボレイターとしての鋭さを発揮し、1989年に発表して高い評価を得たこのソロ・アルバムで、エルヴィス・コステロとタッグを組んだ。CD2枚分のデモ音源と、制作の舞台裏が窺えるDVDを加えたこのデラックス・ボックス・セットは、ポール・マッカートニーの最高の瞬間の1つを捉えたアルバムの決定版である。

メタリカMaster Of Puppets: Deluxe Box Set

これは2017年に発売されたベスト・ボックス・セットのひとつであるだけでなく、間違いなく最もラウドな作品だ。メタリカとスラッシュ・メタル全体の両方に大躍進をもたらしたアルバム『Master Of Puppets(邦題:メタル・マスター)』は、80年代のメタル・ミュージック界に君臨。その影響は、現在も感じることが出来る。リマスターを施した本作には、複数のコンサートからのライヴ・トラック、当時のインタビュー、デモ、アウトテイク、ジェイソン・ニューステッドのバンド加入オーディション時の演奏等、追加音源を収録。そこに、耳をつんざかれ目をやられてしまいそうなライヴ映像を収めた2枚のDVDも加わり、史上最もヘヴィなアルバムのひとつが一層ヘヴィなものとなっている。

クイーンNews Of The World: 40th-Anniversary Super Deluxe Box Set

クイーンはこのアルバムで、パンクが挑んできた戦いを受けて立ち、そして勝利を収めた。 1977年にリリースされた『News Of The World(邦題:世界に捧ぐ)』は、正真正銘のスタジアム・アンセム2曲(「We Will Rock You」と「We Are The Champions」)を誇り、彼らにとってそれまでで最も多種多様な楽曲を取り揃えたアルバムとなっている。また本作の不朽のアートワークは、2017年のライヴ・ショーにおいて3Dで復活を果たした。今回は更に、USツアーで彼らが全米をたちまち虜にした様子が収録されたドキュメンタリーDVDの他、アルバム本編全曲を未発表アウトテイクの別ヴァージョンに丸々置き換えたCD2、当時のライヴ音源等をまとめたCD3が一堂に会しており、このボックス・セットは正にトップニュースに相応しい逸品だと言える。衝撃的なボックス・セット開封動画をご覧になれば分かる通り、これが2017年ベスト・ボックス・セットのひとつであることは間違いない。

R.E.M.Automatic For The People: 25th-Anniversary Deluxe Edition 


1992年のリリース以来、R.E.M.の『Automatic For The People』の不可解さは —— そして聴き手を引きつけるその魅力は —— 全く失われていない。デモ・トラックや、未リリース曲、そして『Automatic』期の唯一のライヴ・コンサート音源を収めたこのスーパー・デラックス・ボックス・セットは、R.E.M.が最も勢いに乗っていた当時を蘇らせるタイムカプセルだ。

ザ・ローリング・ストーンズTheir Satanic Majesties Request: 50th-Anniversary Special Edition 

ザ・ローリング・ストーンズ自身にとってでさえ、『Their Satanic Majesties Request』は変化球であった。“サマー・オブ・ラヴ”と呼ばれたあの社会現象を作品で表現しようというサイケデリックな挑戦は、ブルースやR&Bという彼らのルーツとは相入れなかったからである。このデラックス・ボックス・セットは、モノラル&ステレオ・ヴァージョンの両方をそれぞれ収録したLP盤2枚と、同じくハイブリッドSA-CD盤2枚から成る4枚組仕様。更にサイケデリックなストーンズの貴重な写真が満載の20ページのブックレットと、1967年のオリジナル・アルバムに準じた3Dアートワークが再現されている。

ラッシュ2112: 40th-Anniversary Super Deluxe Edition』/『A Farewell To Kings: 40th-Anniversary Super Deluxe Edition 

2017年における最高レヴェルのボックス・セットが2組手元にあるのなら、1組だけ出すに留めておく手はないだろう? 70年代半ば、4作目『2112』で頂点を極めたラッシュは、次の『A Farewell To Kings』でプログレ・ロック界の王位の座を確実なものとした。今年登場した両作の拡大版ボックス・セットは、そこに収められている音楽同様、それ自体がしかるべき仰々しさを備えた芸術作品だと言える。リマスターされたオリジナル・アルバム本編の音源と、当時のライヴ音源等に加え、このボックス・セットにはスリップマットとリトグラフを封入。更に『A Farewell To Kings』の方には、特製の“王の指輪”(King’s Ring:ヴェルヴェットポーチ入り、ネックチェーン付き)が特典として付属している。

セックス・ピストルズNever Mind The Bollocks… Here’s The Sex Pistols: 40th-Anniversary Deluxe Edition 

政治的な先行きが極めて不透明な状況にある今年、折よく40周年を迎えたセックス・ピストルズの鮮烈なデビュー作は、まさしく新旧ファンの心に火をつけることになるだろう。ここに含まれているデモやオルタネイト・ミックスから分かるのは、史上最も忘れることの出来ないアルバムの1つである本作のレコーディング過程で、正に何が起きていたかということだ。一方、ノルウェー公演のライヴ録音では、妥協を許さない彼らの本領が存分に発揮されている。

ロニ・サイズ/レプラゼントNew Forms: 20th-Anniversary Deluxe Edition 
『New Forms』は、ドラムンベースのアルバムとして、唯一正真正銘の傑作と言ってほぼ間違いない、歴史的な作品だ。リマスターされ、2枚組となった本作には、B面曲や既発リミックスの他、未発表リミックスや再編集音源からロニ・サイズ自身が作り上げた”ライヴ・ハードウェア・ミックス”を追加。

ステイタス・クォーVinyl Singles Collections Vols 1-3 
2017年のベスト・ボックス・セット選に3作品を送り込むことが出来るのは、稀有なバンドのみである。疲れを知らないこのロック・バンドの異なる3期(1972〜79年、1980〜84年、1984〜89年)を対象に、それぞれ該当する7インチをまとめた3組のボックス・セット『Vinyl Singles Collection』は、フランシス・ロッシと故リック・パーフィットが不滅の業績を成し遂げたこと、そして彼らの音楽がロック界有数の熱烈さを誇るファン層を獲得したことの証だ。

スティングThe Complete Studio Collection

スティングの活動の幅の広さには、いつも仰天させられる。それを思えば、このボックス・セットに僅か16枚のアナログ盤しか収められていないことの方が驚きだ。ジャズやワールド・ミュージックに影響を受けたアルバムから、クラシックへの挑戦、エレクトロニカの実験、そしてロックな方向性への回帰と、彼の軌跡を辿っているこの『The Complete Studio Collection』が、たった一人の人間の手による作品であることもまた、実に信じ難いことである。

U2The Joshua Tree: 30th-Anniversary Edition 
かつてないほどの勢いで『The Joshua Tree』の伝説は今も成長と拡大を続けている。今年、本作の再現ツアーを行ったU2は、それを通じて活気を取り戻したのではないだろうか。ダニエル・ラノワ、スティーヴ・リリーホワイト、フラッドが手掛けた2017年版リミックスの他、B面曲やリミックスを収録し、更にジ・エッジが当時撮影した未公開写真を掲載した豪華ブックレットが封入されたこのボックス・セットで、『The Joshua Tree』は再生を果たした。

ザ・ヴァーヴUrban Hymns: 20th-Anniversary Super Deluxe Edition 
デビュー作『A Storm In Heaven』と2作目『A Northern Soul』によって、彼らがカルト的な人気を獲得し、熱烈なファン層を築いたとすれば、この3作目『Urban Hymns』は、残りの全世界にその秘密を明かしたアルバムとなったと言える。ザ・ヴァーヴは恐るべきバンドであり、彼らの描いていたヴィジョンは、「Lucky Man」や「Bitter Sweet Symphony」といった大ヒット曲を通じ、何百万人もの人々の心に伝わった。5枚組CD+DVDから成る本作には、リマスター版オリジナル・アルバムに加え、シングルB面曲集、ライヴ・セッション音源、プロモーション・ビデオ映像の他、1998年5月24日に地元ウィガンのヘイ・ホールで行われた凱旋公演の模様がCDとDVDの両方に完全収録されている。

ザ・フーMaximum As & Bs 
何かと騒動を引き起こす芸術家ぶったモッズから、ロック・オペラの先駆者へ。電撃的なパワーコードと、ピート・タウンゼントによる独特の世界観を振りかざし、モダン・ロックの新境地を切り開いたザ・フー。彼らの歴代シングル全A面&B面曲を5枚組CDに収めた『Maximum As & Bs』は、ヴォリューム最大の爆音でかけてもらうことを狙いとしている。

ジョン・ウィリアムズ:『A New Hope: 40th-Anniversary Box Set』 
ジョン・ウィリアムズが最初に手がけた『スター・ウォーズ』のサウンドトラックは、映画自体が革新的だったのと同様、映画スコアに求められるものを一変させた。同作のメイン・テーマ冒頭の旋律は、映画『スター・ウォーズ』のオープニング・クレジットから受ける永久不滅のスリル感を凝縮したものとして、今も聴く者の心を躍らせる。これほどまでに壮大なスコアに値するのは、やはり壮大な記念ボックス・セットであり、それに相応しい期待通りの作品が届けられた。ウィリアムズの歴史的作品の40周年を記念して、このサウンドトラックは今回180g重量盤アナログ・レコード3枚組となった上、ハードカバー本が付属。だが、とりわけ目を楽しませてくれるのは特殊加工された3枚目のレコードで、そのA面には“デス・スター”が浮かび上がる3Dホログラムがエッチングされている。

ヴァーヴ・レコードのジャズ名盤 
世界屈指の伝説的ジャズ・レーベルとしてその地位を確立している<ヴァーヴ・レコード>が自信を持ってリリースするのが、2017年のベスト・ボックス・セットに数えられる3作品だ。ヴァーヴのような逸材揃いのレーベルであれば、まず間違いはない。ビリー・ホリデイの『Classic Lady Day』には、史上最も崇拝を集めたジャズ歌手の一人である彼女が世に送り出してきた曲の中から、選りすぐりの音源を収録。一方、無視することなど不可能なダイナ・ワシントンの強烈な存在感が全体に染み渡っているのが、『The Divine Miss Dinah Washington』である。その対極に位置するスタン・ゲッツの『Bossa Nova Years』は、彼が牽引役となり、ボサノバ音楽がメインストリームに足を踏み入れるようになった時代の記録だ。これら3つの5枚組ボックス・セットを総合すれば、そこには妙なる調べでターンテーブルを飾る史上最高のジャズ作品の幾つかが含まれており、それによって個々のアルバムがアナログ盤という本来の家への帰宅を果たしている。

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ザ・ビートルズ『クリスマス・レコード・ボックス』&『サージェント・ペパーズ ピクチャー・ディスク』 2017.12.05 Release


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