【映像付き】2000年代の最高のミュージック・ビデオ・ベスト50 : 類稀な10年間に生まれた傑作映像
2000年代のミュージック・ビデオの傑作群はとてもひとくくりにできないほど多彩だ。映像技術に長けた名手の手腕が発揮されたユニークで趣向を凝らした映像もあれば、ネオ・ソウルやヒップホップを代表するビデオもある。また、1981年8月の開局以来 MTV によって作り上げられてきた概念を覆す破壊的な力作も含まれている。
2000年代の名ミュージック・ビデオを選出した本リストを面白くしているのは、同時期の後半に訪れたインターネットの普及だろう。それによりミュージシャンと映像作家のビデオへの取り組み方が明確に変化したのがよくわかるはずだ。善くも悪しくも、それは新時代の到来を意味していた。
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50位 : Sum 41「Fat Lip」(2001年)
ディレクター : マーク・クラスフェルド
カナダ出身のスケート・パンク・バンドによる何でもありのミュージック・ビデオ。酒屋を舞台にした4人の短い即興ラップで始まるこのビデオは、河川敷でのライヴ・シーンに移り、カメラに向かって歌う4人の映像もそこに挿入される。
楽曲そのものに似て、ビデオも熱狂的でありながら統制のとれた仕上がりになっている。騒がしく若々しいSum 41というバンドのエネルギーがそのまま表れているといえるだろう。
49位 : バードマン&リル・ウェイン「Leather So Soft」(2006年)
ディレクター : アーロン・クーサー
ドレッド・ヘアのリル・ウェインは同ビデオでギターを携えたロック・スター像を前面に出しているが、ビデオは一般的なヒップホップのイメージに満ちている。高価なジュエリーや高級車、徘徊する薄着の女性などに代表されるイメージだ。
一方でこのビデオには、子どものバレエ・ダンサーや手話を使う女性など、露骨な性的描写を使った歌詞とは一見相いれないシーンも含まれている。
48位 : ドクター・ドレー feat. エミネム「Forgot About Dre」(2001年)
ディレクター : フィリップ・G・アトウェル
ドレーが自身を非難してきたほかのラッパーたちへ怒りの反撃をした同曲に、エミネムは別人格のスリム・シェイディとして出演している。めずらしい展開だが、ビデオの最後ではドレーの秘蔵っ子であるヒットマンが自身の作品「Last Dayz」を披露している。
47位 : リュダクリス「Get Back」(2004年)
ディレクター : スパイク・ジョーンズ
すべてのポップ・ビデオに派手な設定があるわけではない。リュダクリスの「Get Back」はその好例で、同ビデオは彼が公衆便所で用を足しているときに熱烈なファン (演じたのは元ファーサイドのファットリップ) に絡まれるところから始まる。リュダクリスの腕がポパイのように巨大だというのも注目すべき点だ。
46位 : マライア・キャリー feat. ジェイ・Z「Heartbreaker」(1999年)
ディレクター : ブレット・ラトナー
契約上の理由でジェイ・Zはビデオに出演しておらず、彼のラップ・パートではアニメが使われている。250万ドルと多額の予算が掛けられた「Heartbreaker」の映像の大半は、歴史的なロサンゼルス・シアターで撮影された。予算という点でも仕上がりの面でも2000年代を代表するポップ・ミュージック・ビデオと言っていいだろう。
45位 : パルプ「Bad Cover Version」(2002年)
ディレクター : ジャーヴィス・コッカー、マーティン・ウォレス
バンド・エイドの「Do They Know It’s Christmas」のパロディである偽ドキュメンタリー風の同ビデオの大きな楽しみは、それぞれが誰のそっくりさんか見つけるところにある。デヴィッド・ボウイからミッシー・エリオットまで29人のミュージシャンのそっくりさんが登場しており、パルプのジャーヴィス・コッカー自身もクイーンのブライアン・メイに扮して登場する。
44位 : ソウルジャ・ボーイ・テレム「Crank That (Soulja Boy)」(2007年)
ディレクター : デイル・レスティジーニ
アトランタのMC、ソウルジャ・ボーイは新たなダンスの流行の火付け役となった。その流行はアメリカのポップ・チャートで7週首位に立ったキャッチーな楽曲のビデオで、アメリカ中に波及したのだ。彼のレーベルのオーナーで業界の実力者、ミスター・コリパークも本人役として出演している。
43位 : ドレイク&カニエ・ウェスト&リル・ウェイン&エミネム「Forever」(2009年)
ディレクター : ハイプ・ウィリアムス
ヒップホップ界の誇る4人の実力者が、バスケットボール選手のレブロン・ジェームズのドキュメンタリー映画『モア・ザン・ア・ゲーム』のサウンドトラックからのファースト・シングルのために集結した。
撮影はマイアミのホテルで行われ、エミネムの出演シーンだけデトロイトでの別撮りとなった。ジェームズ本人の出演はわずかだが、彼はビデオの冒頭でオンライン・ポーカーをしている。
42位 : ダミアン・マーリー「Welcome to Jamrock」(2005年)
ディレクター : ラス・カッサ
ジャマイカ政府観光局は、このパンチの効いたビデオにおけるダミアン・マーリーのジャマイカへの見方を支持しないだろう。レゲエ・シンガーの彼が2005年にヒットさせた「Welcome to Jamrock」のプロモーション・ビデオは、犯罪や暴力、貧困、当局の汚職など、休暇で訪れた観光客は見ない同地の側面を描いている。これを観たら、楽園のイメージも一変してしまうに違いない
41位 : レディオヘッド「Knives Out」(2001年)
ディレクター : ミシェル・ゴンドリー
解剖や外科手術のイメージが多く含まれた2000年代初頭のシュールなビデオ。トム・ヨークは、恋人が奇妙な手術を受けているさなかの病院にいる。有難いことに、ビデオでは「Knives Out」の歌詞にあるカニバリズムのテーマについては触れられていない。だが同ビデオの悪夢のような空気感は、リスナーの不安を掻き立てるようなレディオヘッドの音楽のトーンをうまく捉えているといえる。
40位 : フォール・アウト・ボーイ「Sugar We’re Goin Down」(2005年)
ディレクター : マット・レンスキー
アメリカでトップ10・ヒットを記録した「Sugar We’re Goin Down」のプロモーション・ビデオでは、自分らしさと社会規範との間でもがく若者の怒りが表現されている。撮影地となったのはキャッツキル山地のマーガレットヴィル。角の生えた少年が登場し、自己嫌悪に苛まれていた少年がありのままの自分を受け入れるまでが描かれている。
39位 : ビョーク「Triumph of a Heart」(2005年)
ディレクター : スパイク・ジョーンズ
アイスランドのアヴァン・ポップの女王の「Triumph of a Heart」のビデオは、2000年代に残されたプロモ・クリップの中でもとりわけ強烈なインパクトを残している。ここでビョークは、夫から逃れるために飲んで騒いでのパーティに出かけるが、その夫というのはベストを着た猫なのだ。途中、バーで騒がしいボイス・パーカッション合戦が始まり、最終的にビョークは夫と再会する。今度はスーツを着て現れる猫の夫は人間のサイズに成長し、彼女と踊り出す。当時SNSが発達していたなら、このビデオから多数のミームが作られていたことだろう。
38位 : グリーン・デイ「American Idiot」(2004年)
ディレクター : サミュエル・ベイヤー
アメリカの主要メディアの回し者と見なされていた自らのイメージに反抗したグリーン・デイのプロテスト・ソング。「American Idiot」には、カリフォルニア出身のネオ・パンク・トリオが緑色の星条旗を背景に演奏する破壊的なビデオが作られた。そこには蓄積されたグリーン・デイのエネルギーと、彼ら本来の反抗性がよく表れている。
37位 : エルトン・ジョン「I Want Love」(2001年)
ディレクター : サム・テイラー・ウッド
アイアンマン役で有名なロバート・ダウニー・Jrが出演するこのビデオでは、彼がエルトン・ジョンの悲しげなバラードに合わせ、ビバリー・ヒルズの美しいグレイストーン・マンションを物憂げに徘徊する。全編ワン・カットで撮影されているが、監督の満足いく出来になるまで16回もテイクが重ねられたという。
36位 : デスティニーズ・チャイルド「Say My Name」(2000年)
ディレクター : ジョセフ・カーン
レコーディングには参加していないものの、この「Say My Name」のプロモーション・ビデオには新メンバーのミシェル・ウィリアムズとファラ・フランクリンも出演している。急遽の加入となったため、彼女たちは振付を覚える十分な時間がなかったはずだが、ふたりは予想を超える自信たっぷりのダンスを見せている。カラフルなこの作品は2000年代を代表する1作に数えられる。
35位 : ファウンテンズ・オブ・ウェイン「Stacy’s Mom」(2003年)
ディレクター : クリス・アップルバウム
ニューヨーク出身のパンク・パワー・ポップ・バンドがアメリカのヒット・チャートに送り込んだ最大のヒット曲、「Stacy’s Mom」のビデオでは俳優/モデルのレイチェル・ハンターがタイトルになっている”ステイシーのママ”を演じ、少年の性的な妄想を掻き立てる。笑いを誘う描写が満載で、2003年の MTVとVH1両局でチャートを制したのも納得だ。
34位 : ヤー・ヤー・ヤーズ「Y Control」(2004年)
ディレクター : スパイク・ジョーンズ
子どもたちが臓器の摘出や手足の切断をし合ったり、死んだ犬で遊んだりするショッキングな映像だったため、このビデオは一部から猛抗議を受けた。それでも、特に刺激が強い一部のシーンをぼかしながらMTVではオン・エアされている。
33位 : ジャスティス「D.A.N.C.E.」(2007年)
ディレクター : ジョナス&フランソワ
フランスのエレクトロ・デュオのジャスティスは、「D.A.N.C.E.」でシックに影響を受けたディスコのグルーヴと子どものヴォーカルを融合させた。目を奪われる同曲のビデオは、ポップ・アートとアニメーションを巧みに組み合わせている。映像の大半は、ふたりのミュージシャンのTシャツに次々と現れるイメージで構成されている。間違いなく2000年代最高のMVのひとつだ。
32位 : テイラー・スウィフト「You Belong With Me」(2009年)
ディレクター : ロマン・ホワイト
複数の賞に輝いた同ビデオでは「自分らしくあれ」というメッセージが中心に据えられ、テイラー・スウィフトは正反対のふたつの役柄を演じている。ひとりは物静かで勉強好きで繊細な少女、もうひとりは図々しくて浅はかで外向的な、男子から人気のある少女だ。ふたりはロマンティック・コメディ風の恋の争奪戦で敵同士になるが、最終的には心からの気持ちがうわべだけの言動を打ち負かすのだ。
31位 : レッド・ホット・チリ・ペッパーズ「Californication」(2000年)
ディレクター : ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス
ハリウッドが世界中の人にいかに強力で、ときに望ましくない影響を与えているかを分析した楽曲。バンド・メンバーがテレビ・ゲームのキャラクターになった「Californication」は、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの最も人気のあるプロモーション・ビデオになった。YouTubeでは現在までに9億回以上再生されている。
30位 : ダフト・パンク「Interstella 5555」(2003年)
ディレクター : 松本零士
謎に満ちたフランスのエレクトロ・デュオは、セカンド・アルバム『Discovery』のリリースに際し、セリフのない65分の壮大なSFアニメーションを用意した。『The 5tory of the 5ecret 5tar 5ystem』のサブタイトルが付けられたこの映像作品は、オンラインで4回に分けて公開された後、全編がDVDに纏められている。
29位 : ウィーザー「Pork and Beans」(2008年)
ディレクター : マシュー・カレン
“もっとコマーシャルなものを”というレコード会社の要望に対するウィーザーの回答がこの「Pork and Beans」だった。このビデオで彼らは反抗的に個性を主張し、インターネットにヒントを得たカメオ満載の笑えるビデオを作った。初週だけで100万回以上再生され、2009年のグラミー賞で”Best Short Form Music Video (最優秀ミュージック・ビデオ賞) “を獲得している。
28位 : カイリー・ミノーグ「Come Into My World」(2002年)
ディレクター : ミシェル・ゴンドリー
オーストラリアのポップ・ミュージックの歌姫が同じ道路を周り続けるミュージック・ビデオというのは、あまり気の利いたアイデアとは思えないだろう。だがフランスの映画作家であるミシェル・ゴンドリーがメガホンを取れば、凡庸なコンセプトもすばらしい視覚体験になり得る。
2000年代を代表する同ビデオの撮影はパリで50人のエキストラを迎え、全編ワン・カットで行われた。
27位 : ビヨンセ「Single Ladies (Put A Ring On It)」(2008年)
ディレクター : ジェイク・ナヴァ
この時期のポップ・ビデオの多くは複雑な視覚イメージで溢れていたが、このビデオでビヨンセは比較的シンプルなアプローチをとった。全編白黒の同ビデオでは、彼女が変化のない背景をバックに踊る姿が捉えられている。そこに力強さが感じられるのは、全編ノー・カットでビヨンセのパフォーマンスが映されているような印象を与えるからだろう。彼女のダンスからは魅惑的なエネルギーが感じられる。
26位 : バット・フォー・ラッシーズ「What’s a Girl to Do」(2006年)
ディレクター : ドゥーガル・ウィルソン
イギリスのシンガー/映像作家のバット・フォー・ラッシーズ (ことナターシャ・カーン) は、自身のお気に入りのSF映画『ドニー・ダーコ』の精神性をこのビデオに反映させている。そこでは夜道で自転車を走らせる彼女の後ろに、不気味な動物たちが付いてくる。シュールで悪夢のようなビデオの空気感は、浮世離れしたアンビエントなサウンドの楽曲と見事に調和している。
25位 : マイ・ケミカル・ロマンス「Helena」(2005年)
ディレクター : マーク・ウェブ
ニュージャージー出身のマイ・ケミカル・ロマンスはシングル「Helena」で、激しくも物思いに耽るようなエモのサウンドをメインストリームに持ち込んだ。葬儀を題材にしたぞっとするようなプロモーション・ビデオは、ロサンゼルスの長老教会で撮影されている。
この曲はフロントマンであるジェラルド・ウェイの祖母の死去の影響下で生まれたとされるが、おそらく実際の見送りはビデオと異なるものだっただろう。
24位 : ゴリラズ「Clint Eastwood」(2001年)
ディレクター : ジェイミー・ヒューレット&ピート・カンデラン
アニメーションを使用した活動で知られるブラーのデーモン・アルバーン率いる覆面バンド、ゴリラズは、マカロニ・ウェスタン映画『続・夕陽のガンマン』からヒントを得たというこの曲を、タイトルにもなっているハリウッド・スターに捧げた。
カラフルなアニメーションから成るビデオはゾンビ映画を思わせる楽しい仕上がりで、ゾンビの巨大ゴリラを使ってマイケル・ジャクソンによる1980年代の名曲「Thriller」を再現したシーンも見どころになっている。
23位 : カニエ・ウェスト「Stronger」(2007年)
ディレクター : ハイプ・ウィリアムス
完璧主義者として知られるカニエ・ウェストは、この映像の編集に3ヶ月、撮影に12日を費やしている。東京とロサンゼルスでゲリラ撮影され、ロボットが支配する未来的な世界が描かれた「Stronger」のプロモーション・ビデオは、8つの賞に輝き2000年代を代表する作品になった。
22位 : ケミカル・ブラザーズ「Star Guitar」(2002年)
ディレクター : ミシェル・ゴンドリー
高額な予算を費やして派手なビデオを作らなくてもリスナーから支持されるという楽曲がある。田園風景や都市部を疾走する車窓を映し続けるケミカル・ブラザーズによる「Star Guitar」のプロモーション・ビデオはその好例だ。その旅の風景は、マンチェスター出身のダンス・デュオの心揺さぶる音世界と見事に調和している。
21位 : ボン・ジョヴィ「It’s My Life」(2000年)
ディレクター : ウェイン・アイシャム
10億回以上再生されている、ニュージャージー出身の同グループ最大のミュージック・ビデオ。主要キャラクターのトミーとジーナを演じるのは、俳優のウィル・エステスとシリ・アップルビーだ。トミーが数々の障害を交わしながらジーナのもとへと走る筋書きは、1998年のドイツ映画『ラン・ローラ・ラン』のアクション・シーンに触発されたものだ。
20位 : ネリー「Dilemma」(2002年)
ディレクター : ベニー・ブーム
郊外の架空の町”ネリーズヴィル”を舞台にした同ビデオの中で、ネリーは元デスティニーズ・チャイルドのシンガー、ケリー・ローランドへ密かに想いを寄せる。ローランドの母親役の女性に見覚えがあるという向きもあるかもしれない。その役を演じているのは伝説的なソウル・シンガー、パティ・ラベルである。
19位 : スヌープ・ドッグ feat. ファレル・ウィリアムス「Drop It Like It’s Hot」(2004年)
ディレクター : ポール・ハンター
剥き出しのビートにクールなライムを乗せたヒップホップのダンス・グルーヴがキャッチーな1曲。その楽曲本来のシンプルさが、賞にも輝いた白黒で個性的なビデオの無駄のなさにも表れている。
マリファナや薄着の女性、派手な車、デザイナー・ジュエリーなどラップのビデオに典型的な要素は漏れなく登場するが、このプロモーション・ビデオには確かな品格が感じられる。
18位 : ファイスト「1234」(2007年)
ディレクター : パトリック・ドーターズ
ポップ・ミュージックのプロモーション・ビデオを全篇ワン・カットで撮影するのは至難の業である。このビデオのように、100人のダンサーに複雑な振付をさせようものなら尚更だ。長時間に亘るリハーサルの後、「1234」のビデオは20回以上のテイクを重ねて完成した。だが美しい映像の仕上がりを見れば、監督の完璧主義は正しかったといえる。2000年代屈指の複雑さ (そして完成度) を誇るプロモーション・ビデオだ。
17位 : クリスティーナ・アギレラ「Dirrty」(2002年)
ディレクター : デヴィッド・ラシャペル
女性のボクシングの試合や泥レスリング、腰を激しく動かすダンスなど汗にまみれたシーンが多く、見るだけで冷たいシャワーを浴びたくなるようなビデオだ。ある批評家から”終末後の世界の乱交”と評されたように、アギレラのこのプロモーション・ビデオは大いに物議を醸したが、MTVではビデオ・チャートを制している。
16位 : ストロークス「Last Nite」(2001年)
ディレクター : ロマン・コッポラ
ニューヨーク出身のこのロック・バンドは、キャリア初期に残したこのビデオをシンプルなコンセプトに基づいて制作している。”The Ed Sullivan Show”出演時のザ・ビートルズを彷彿させる大舞台でのパフォーマンスを撮影するという発想だ。原点回帰的なロック・グループのデビューにはまたとないプロモーション・ビデオだったと言っていいだろう。
15位 : レディー・ガガ「Bad Romance」(2009年)
ディレクター : フランシス・ローレンス
人身売買の標的として誘拐され、奴隷にされたガガが復讐を果たすという、アート・ポップの女王による際どい内容のビデオ。創作のためならリスクを厭わず、常に限界を超えようとするアーティストである彼女らしい作品だ。
風変わりな衣装と目を見張るようなグループでのダンスに満ちた同ビデオで、ガガは2000年代のポップ・ミュージックの世界で最も刺激的なプロモーション・ビデオを作るアーティストのひとりとして知られるようになった。
14位 : ホワイト・ストライプス「Fell In Love with a Girl」(2002年)
ディレクター : ミシェル・ゴンドリー
高度な技術を要する華やかな演出を避けるビデオもある中で、ホワイト・ストライプスのガレージ・ロックの名曲「Fell In Love with a Girl」には、手作業で組み立てたレゴだけで作られたビデオが用意された。同じ画角で撮った写真を丹念に繋ぎ合わせて、記憶に残る映像を作り上げたのだ。このプロモーション・ビデオに見られる精神は、バンドが持つDIYの美学を反映しているようだ。
13位 : 50セント「In Da Club」(2003年)
ディレクター : フィリップ・アトウェル
この未来的な「In Da Club」のビデオのセットでドクター・ドレーとエミネムは、秘密組織”Artist Development Center/アーティスト育成センター”の科学者を演じている。50セントはそのセンターの手術台で修理されたサイボーグ (現実に7度撃たれた経験を基にしていると思われる) として登場するのだ。MTVのアワードで2つの賞に輝き、2020年にはYouTubeで10億回再生を突破している。
12位 : アヴァランチーズ「Frontier Psychiatrist」(2000年)
ディレクター : トム・カンツ&マイク・マグワイア
ドラッグ未経験者は、このビデオを見ればその幻覚がどのようなものかおおよそ体験できるだろう。それほどシュールな映像なのだ。ひとつのステージの形態を取るこのプロモーション・ビデオでは、サンプリングされた会話の断片をさまざまなキャラクターに当てている。
11位 : リアーナ feat. ジェイ・Z「Umbrella」(2007年)
ディレクター : クリス・アップルバウム
2007年のMTVミュージック・ビデオ・アワードで、リアーナのこのプロモーション・ビデオが”Video Of The Year”年間最優秀ビデオを獲得したのは予想に違わない結果だった。「Umbrella」の驚くべきビデオには、白黒の映像の中で彼女が身体中に銀色のペイントを施しているシーンも含まれている。印象的な同シーンや、ネオンのように光る雨の演出が奏功し、ポップ史に残るミュージック・ビデオが生まれたのだった。
10位 : ジョニー・キャッシュ「Hurt」(2003年)
ディレクター : マーク・ロマネク
キャリアの終盤に差し掛かっていたキャッシュは、このビデオを撮影した7ヶ月後にこの世を去っている。「Hurt」はナイン・インチ・ネイルズの陰鬱なバラードをジョニー・キャッシュが魅力的にカヴァーした1曲。
用意された映像は、若かりしころのキャッシュの映像と年老いて弱った姿を交互に映し出すことで、伝説的なカントリー歌手の人生とキャリアを振り返るというもので、まるで鎮魂歌のような、胸を刺す作品に仕上がっている。
9位 : エリカ・バドゥ「Honey」(2007年)
ディレクター : エリカ・バドゥ&クリス・ロビンソン
レコード店を舞台にしたこのビデオは、エリカ・バドゥのジャンル横断的な音楽性を表現すると同時に、彼女に影響を与えたアーティスト/グループへのオマージュにもなっている。
ここではひとりの客がジャンルの異なるレコードの棚を物色する様子が描かれているが、登場する作品はファンカデリックの『Maggot Brain』からザ・ビートルズの『Let It Be』までさまざま。そしてそれらすべてのアルバムのジャケットをバドゥ自身が映像でパロディしているのである。
8位 : ブリトニー・スピアーズ「Toxic」(2004年)
ディレクター : ジョセフ・カーン
“見かけは当てにならない”というメッセージを持った、往年のスパイ映画を思わせる映像作品。金髪の客室乗務員に扮したスピアーズは、スリルを求める赤髪の女性に変身したかと思うと、最後には黒髪の魔性の女になる。途中、スピアーズがダイヤモンドをあしらった透明のボディスーツで現れるが、これは物議を醸し、MTVも、このプロモーション・ビデオを夜間の放映に限定するという措置をとった。
7位 : ミッシー・エリオット「Work It」(2002年)
ディレクター : デイヴ・マイヤーズ
手の込んだ振付が施された活気あるこのプロモーション・ビデオには、エリオットをプロデュースするティンバランドと彼の秘蔵っ子でシンガーのトゥイートも出演している。また、映画『12人のパパ』に出演した子役、アリソン・ストーナーもブレイクダンスを披露している。
エリオットはここで、この世を去ったR&Bスターに敬意を表しており、映像には<大切な思い出に/In Loving Memory>というメッセージとともに車のボンネットに描かれたアリーヤとリサ・レフトアイ・ロペスの肖像が登場する。間違いなく2000年代を代表するミュージック・ビデオのひとつだ。
6位 : ピンク&マヤ&クリスティーナ・アギレラ&リル・キム「Lady Marmalade」(2001年)
ディレクター : ポール・ハンター
ヒットを記録したバズ・ラーマン監督の映画『ムーラン・ルージュ』のサウンドトラック用に制作された、1970年代の名曲 (オリジナルはラベル) の活気溢れるカヴァー・ヴァージョン。
思わず目を奪われる同曲のビデオではランジェリー姿のスターたちが、往年のパリのキャバレー風の舞台で現代のヒップホップ的な生意気さを表現している。2002年のMTVビデオ・ミュージック・アワードで”Best Video Of The Year”に選ばれたのも納得の仕上がりだ。
5位 : エミネム「Stan」(2000年)
ディレクター : ドクター・ドレー&フィリップ・アトウェル
「Stan」にはイギリスのシンガー、ダイドの「Thank You」の一部がサンプリングされているが、ドラマ仕立てのこのプロモーション・ビデオにはそのダイド自身が出演している。彼女は妊娠している女性を演じているが、その恋人は執着心が強く精神的に不安定なエミネム・ファンで、ビデオの最後には悲劇的な結末を迎える。
「Stan」のプロモーション・ビデオは2000年代を代表する1本となっただけでなく、”スタン”という単語がファン・カルチャーに広く浸透するきっかけにもなった。
4位 : オーケー・ゴー「Here It Goes Again」(2006年)
ディレクター : トリッシュ・シー
シカゴのインディ・ロック・バンドによるこの「Here It Goes Again」ほど動きが計算されたミュージック・ビデオは2000年代でもめずらしい。メンバーたちは緻密に配置された8台のランニング・マシンの上や間でダンスしてみせる。ワン・カットでの撮影となったため17回目でようやく完璧なテイクが得られたが、出来上がったビデオはグラミー賞にも輝くなど、間違いなくその努力の甲斐のある仕上がりとなった。
3位 : ファットボーイ・スリム「Weapon of Choice」(2001年)
ディレクター : スパイク・ジョーンズ
スパイク・ジョーンズとの2度目のコラボとなったこのビデオに英国のDJ/プロデューサーであるスリム自身は出演していないが、代わりにポップ・カルチャーのアイコン的存在であるクリストファー・ウォーケンが無人のホテルをダンスしながら突き進む。ハリウッドの伝説的俳優がホール内を空中浮遊するシーンがハイライトだ。
2位 : アウトキャスト「Hey Ya」(2003年)
ディレクター : ブライアン・バーバー
複数の賞にも輝いた、アトランタ出身のヒップホップ・デュオによる全米ナンバー・ワン・シングルのビデオ。ロンドンを舞台にしているが、エド・サリヴァン・ショーにビートルズが初出演した際のステージを模している。歓声を上げるファンに向けて演奏する架空の8ピース・バンド、ラヴ・ビロウのメンバーは、すべてシンガーのアンドレ・3000が演じている。
1位 : ディアンジェロ「Untitled (How Does It Feel?)」(2000年)
ディレクター : ポール・ハンター
鍛え上げられた肉体のディアンジェロと一対一の時間を過ごしているかのように感じられるコンセプトのビデオ。上半身しか映らないものの裸姿に見えるディアンジェロが、カメラに向けて歌いかける。同ネオ・ソウル・ナンバーの親密な空気感が見事に表現されており、現在でも2000年代を代表するミュージック・ビデオとして支持を得ている。
Written By Charles Waring
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