ビー・ジーズ『Still Waters』解説:1990年代にも話題作を発表し続けた3兄弟による会心作

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ビー・ジーズ(The Bee Gees)は何十年にもわたって高い人気を保ってきた。なぜなら、単に音楽のトレンドに適応するだけでなく、トレンドそのものを作り出す力を持ち合わせていたのだ。

彼らは、1960年代にまずポップ・グループとしてブレイクし、1970年代にはディスコ・フィーバーを巻き起こしていた。そして21枚目のスタジオ・アルバム『Still Waters』をリリースした1997年も、やはり彼らは最前線で活躍中の現役グループだった。

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新たなる栄誉を獲得

『Still Waters』はUKでは1997年3月10日に、アメリカでは同年5月6日に発売された。そのアメリカでの発売からわずか9日後、バリー、モーリス、ロビンのギブ三兄弟はロックの殿堂入りを果たし、輝かしいキャリアの中で新たな栄誉を手に入れた(ちなみに授与者はブライアン・ウィルソンと彼らの新しい共同プロデューサー、ラファエル・サーディックという意外な組み合わせだった)。

この年に殿堂入りした他のアーティストは、ジョニ・ミッチェル、ジョージ・クリントンのパーラメント/ファンカデリック、ヤング・ラスカルズ、バッファロー・スプリングフィールド、クロスビー・スティルス&ナッシュという顔ぶれだった。

このとき既に、『Still Waters』はギブ兄弟の膨大なヒット曲に新たな曲を追加していた。アルバム冒頭に収録されていた「Alone」はテンポの速いメロディアスな曲で、珍しくもバグパイプを使用していた曲だ。この曲は、2月17日にアルバムからの先行シングルとしてリリースされ、自信はあるのに結局はいつも孤独な状態に落ち着いてしまう人物が描かれている。

「Alone」は全英チャート初登場で5位という鮮烈なデビューを飾り、さらに2週にわたってこの順位を維持。オーストラリアからオーストリアに至るまで他の多くの国でもトップ10入りを果たし、アメリカではビー・ジーズがトップ40に送り込んだヒット曲30曲の中で最も新しい作品となった。またニュージーランドでは、この年に最もヒットしたアダルト・コンテンポラリー・ソングとなっている。

 

 「優しく魅惑的なエネルギー」

ビー・ジーズは、1995年3月の時点で既にニュー・アルバムの制作を発表していた。その年の7月までに7曲、12月までにさらに5曲が作られ、ほとんどのレコーディングは1996年に行われている。しかしながら『Still Waters』の発表は何度か延期されることになった。というのも共同プロデューサーを務めた超一流の顔ぶれ(前述のサーディックに加え、デヴィッド・フォスター、ヒュー・パジャム、そして旧友であるアリフ・マーディン)が、それぞれAクラスのスタジオ・ミュージシャンを起用したため、そうしたミュージシャンの参加スケジュールを調整するのが必然的に困難になってしまったからである。

参加したミュージシャンは驚異的な顔ぶれとなっており、その中にはデヴィッド・ペイチ、スティーヴ・ポーカロ、マイク・ポーカロ、スティーヴ・ルカサー、ラルフ・マクドナルド、ラス・タイトルマン、リーランド・スカラー、ピノ・パラディーノ、マヌ・カチェなど多数の豪華メンバーが含まれていた。

バリー・ギブはこのアルバムの収録曲のうち5曲でリード・ヴォーカルをソロで担当し、さらに5曲ではロビンと共にリード・パートを歌っている。またロビンはエンディングの「Smoke And Mirrors」で、モーリスは「Closer Than Close」でそれぞれリード・ヴォーカルをとっている。

UKでは「I Could Not Love You More」と「Still Waters (Run Deep)」もチャートのトップ20に入り、このアルバムからさらに2曲のヒットが生まれることになった。

当時Entertainment Weekly誌は、「Alone」と「Smoke And Mirrors」について「過去の傑作のメランコリックな威厳がここでも再現されている」と表現していた。またThe Los Angeles Timesのレビューでは、「I Surrender」が次のように評されていた。

「ハスキー・ボイスが魅力的なブルー・アイド・ファンクだ。これを聞けば、ジョージ・マイケルが誰の影響を受けているのか見当がつく」

また、同じレビューでは、「Closer Than Close」が「優しく魅惑的なエネルギーで脈打っている」と形容されていた。

 

 「何もかもが好転し始めた」

『Still Waters』は、アメリカではダブル・プラチナ・アルバムに認定されるほどの売れ行きになった。またヨーロッパでは100万枚のセールスを記録し、業界団体IFPIのプラチナ・ヨーロッパ賞を受賞。UKでは、2週連続でアルバム・チャートの2位を獲得し、1979年に『Spirits Having Flown』が1位を獲得して以来の好成績となった。ちなみに、『Still Waters』の首位獲得を阻止したのは、スパイス・ガールズのデビュー・アルバム『Spice』だった。

このアルバムを補完する作品として、ドキュメンタリー『Keppel Road: The Life And Music Of The Bee Gees』も作られている。これは、もともとUKの『サウスバンク・ショー』とアメリカの『ブラボー』で放映するために制作されたものだった。

ギブ3兄弟の全面的な協力と関与のもとに制作されたこの映画は、彼らのそれまでの歩みを詳しく振り返る内容になっていた。インタビューのシーンは、UKとアメリカの両方で撮影されている。彼らが生まれ育ったマンチェスターの路上を再び訪れるシーンもあり、そこは非常に印象的な場面となっていた。彼らは若かりし頃に、この街の路上でストリート・ミュージシャンとして活動していたのである。

自分たちのイメージを常に意識していたビー・ジーズは、長年にわたって人気を保ち続けてきたことから、新たな名声を獲得し始めていた。モーリス・ギブはのちに雑誌Mojoのインタビューに応え、以下のように語っている。

「1997年にすべてが変わり始めたんだ。僕たちは3ヶ月のあいだに4つの生涯功労賞を受賞した。ワールド・ミュージック・アワードでの表彰から始まって、それがロックの殿堂入りまで続いた。つまり、あれはかなり妙な感じだったんだ。何もかもが好転し始めて、みんなが曲を聴くようになってくれた」

Written By Paul Sexton



ビー・ジーズ『Still Waters』
1997年3月10日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music


ビー・ジーズ オリジナル・アルバム20タイトル
2022年11月23日再発
CD購入

アルバム・タイトル

①『Bee Gees’ 1st』(1967)
②『Horizontal』(1968)
③『Idea』(1968)
④『Odessa』(1969)
⑤『Cucumber Castle』(1970)
⑥『2 Years On』(1971)
⑦『Trafalgar』(1971)
⑧『To Whom It May Concern』(1972)
⑨『Life In A Tin Can』(1973)
⑩『Mr. Natural』(1974)
⑪『Main Course』(1975)
⑫『Children Of The World』(1976)
⑬『Spirits Having Flown』(1979)
⑭『Living Eyes』(1981)
⑮『E.S.P.』(1987)
⑯『One』(1989)
⑰『High Civilization』(1991)
⑱『Size Isn’t Everything』(1993)
⑲『Still Waters』(1997)
⑳『This Is Where I Came In』(2001)


ビー・ジーズ初の公式ドキュメンタリー
『ビー・ジーズ 栄光の軌跡』

2022年11月25日より
ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館他にて公開

公式サイト




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