エイミー・ワインハウスをアメリカでスターダムに押し上げた5つの瞬間

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Photo: Peter Macdiarmid/Getty Images for NARAS

英国のポップ・アーティストが、広大なアメリカで成功のきっかけを掴むのが難しいことはよく知られているが、エイミー・ワインハウス(Amy Winehouse)は、彼女の代表的なセカンド・アルバム『Back To Black』で、ミュージシャン仲間やファンたちからアメリカの音楽シーンに歓迎された。

しかし、エイミーがアメリカで成功した理由と方法は、簡単に説明できるものではない。『Back To Black』は紛れもなく彼女の驚異的な才能を示す作品ではあったが、本国の聴衆と同じように海外の聴衆に受け入れられる保証はなかった。

ただ、プロデューサーのマーク・ロンソン(2007年当時、彼は自身の作品でも評価を高めていた)との共作、そして2人がこのレコードで掘り起こした、モータウンやシャングリラスのような60年代のガールズ・グループのサウンドは、エイミーの成功の助けになったと言えるだろう。音楽はもちろん重要だが、時には“その瞬間 ”も同じくらい重要なのだ。

当記事では、エイミー・ワインハウスをスターにするために大きな影響を与えたと考えられる、アメリカでの5つの瞬間をまとめてご紹介しよう。

彼女の伝記映画『Back To Black エイミーのすべて』は2024年11月22日から日本劇場公開される。

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1. アメリカでの初TVパフォーマンス

エイミー・ワインハウスがアメリカでブレイクするきっかけとなったのは、2007年に初めて生出演したアメリカのテレビ番組だった。『Back To Black』のリリースから半年後となる2007年3月12日、人気番組“The Late Show with David Letterman”に招かれた彼女は、生バンドとともに、ニューヨークのスカイラインを背景にシングル「Rehab」のパフォーマンスを披露し、その豊かでパワフルな生歌と、ビーハイブヘアに象徴される彼女の纏ったヴィンテージな雰囲気はアメリカの聴衆を魅了した。

アメリカ国内での彼女の知名度に大きな影響を与えたこのTV出演により、彼女は一躍脚光を浴び、『Back To Black』は全米アルバム・チャートを上昇し、最終的に2位を記録した。

2. SXSWでは話題の中心人物

“The Late Show with David Letterman”に出演した数日後、エイミー・はテキサス州オースティンで毎年開催されるミュージック・フェスティバル“SXSW”に出演した。

彼女は、この年の出演者の中で最も話題性のあるアーティストの一人で、金曜夜の彼女の出演日には、ライヴ会場となったラ・ソナ・ロッサに彼女を見るための長い行列ができた。この日は、多くの人々にとって、オースティンでエイミーを生で見ることができる唯一のチャンスだった。理由は明かされていないが、彼女は他のいくつかのショーやパーティーでもパフォーマンスする予定だったが、それらをキャンセルしていたのだ。

この会場で彼女が行ったライヴは、そのソウルフルなヴォーカルから、曲の合間に見せる鋭いユーモアまで(彼女はラ・ソナ・ロッサで、「レイザーライトのオープニングを務めるなんて思ってもみなかったわ」と、この夜のラインナップの後半に登場するイギリス人アーティストに言及し、乾いた皮肉を言った)、アメリカにエイミーの本質をより深く垣間見る機会を提供した。

 

3. コーチェラ・バレーのクイーン

SXSWから1ヶ月余り、エイミー・ワインハウスのアメリカでの勢いは、おそらくこの国で最も権威のある音楽フェスティバル“コーチェラ”のブッキングへと続いた。

満員御礼のGOBI STAGEで、テントの下から覗く興味津々なファンで溢れかえっている中、エイミーは『Back To Black』からの楽曲を中心に、ザ・ズートンズの「Valerie」のカヴァーも交えたセットを披露した。

バックステージでは、ケリー・オズボーンからダニー・デヴィートまで、この年のコーチェラに参加したセレブリティたちが彼女に群がり、後にViceは彼女を“2007年のコーチェラの決定的なパフォーマー”と呼んだ。

 

4. シカゴのロラパルーザで残した影響

同じく2007年にエイミー・ワインハウスがシカゴのロラパルーザに初出演した時のレポートには、観客との交流に無関心なようだったという記録が残っているが、それでも彼女の登場は当時の観客にインパクトを与えた。

それから数年後、LA出身の姉妹トリオ、ハイムが同フェスティバルに出演した際、彼女たちは、同じステージでエイミー・ワインハウスのパフォーマンスを見たことが、彼女たちに音楽を作るインスピレーションを与えたという思い出を語っていた。

 

5. 2008年のグラミー賞では5冠の快挙

エイミー・ワインハウスは、ビザの申請が却下されたため、2008年のグラミー賞に出席できなかったが、それでもロンドンからの衛星中継で授賞式に登場した。

イギリス時間の午前3時にロンドンのリバーサイド・スタジオから行われた生中継では、ヴィンテージのランプ、サテンのカーテン、レッドカーペットなどで彩られたステージで、彼女は『Back To Black』から「You Know I’m No Good」と「Rehab」の2曲を披露した。

この年、彼女は、ノミネートされていた6部門のうち5部門を受賞し、ローリン・ヒル、ノラ・ジョーンズ、アリシア・キーズ、ビヨンセと並び、女性ソロ・アーティストとして史上5人目の快挙を達成した。

同授賞式で、エイミー・ワインハウスが最後に手にしたトロフィーは、「Rehab」での 最優秀レコード賞だった。受賞者はプレゼンターを務めたトニー・ベネットによって発表されたが、彼が彼女の名前を言った瞬間、エイミーの表情は驚きに満ちていた。ロンドンの観客が彼女の名前を唱える中、彼女は彼女の両親やバンドメンバーと共にステージで祝福を受けながら、自身に最も近しい人々と彼女を育てた街に対する感謝の言葉を力強く述べた。

 

Written By Rhian Daly



『Back To Black: Songs from the Original Motion Picture』
2024年4月12日配信
日本盤CD:11月15日発売
CD / LP /Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music



エイミー・ワインハウス『Back To Black』
2006年10月27日発売
CD /Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music



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