オールモスト・マンデー記念すべき一夜限りの初来日公演レポート
サンディエゴ出身のドーソン・ドハティー(ヴォーカル)、ルーク・ファブリー(ベース)、コール・クリスビー(ギター)からなる3人組のZ世代インディ・ポップ・バンド、オールモスト・マンデー。
2022年10月5日に日本デビューEP『cough drops (japan special edition)』をリリースし、10月13日に東京・代官山SPACE ODDで一夜限りとなる初の来日公演を行った。そんな彼らの記念すべき初来日公演の様子を音楽ライターの村上ひさしさんにレポートいただきました。
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2019年リリースの「broken people」以来、Z世代の心をガッシリ掴んで次々とヒットを放ってきた米・サンディエゴ発のインディ・ポップ・バンド、オールモスト・マンデーが遂に初来日。東京・代官山SPACE ODDで一夜限りのライヴ・コンサートを行った。
代表曲「broken people」でライヴはスタート
オープニング・アクトのMÖSHIによるメランコリックなDJセットの後、短い休憩を挟んでから、19時40分頃、いよいよオールモスト・マンデーのライヴがスタートした。
デヴィッド・ボウイの「Heroes」のSEと共にステージに登場すると、左からギター担当のコール、ヴォーカルのドーソン、ベースのルークと、横一列に3人のオリジナル・メンバーが配置。その後方にサポート・メンバーのドラマーという4人編成だ。背後のスクリーンには美しい青空と、幾つか白い雲がポカポカ浮かんでいる。この日の東京は生憎の雨模様だったが、「broken people」が始まると、一気に彼らの出身地であるサンディエゴを思わせる、南カリフォルニアの陽気なムードに包まれた。
黒いサングラスを掛けたドーソンがひょうひょうと歌って踊って、ユルっとしたノリで開幕。1曲目から彼らの代表曲というのには正直驚かされたが、続く2曲目「only wanna dance」(未発表曲)は対照的な縦ノリ、しかもまだ正式にリリースされていない新曲というので、続け様に不意打ちを食わされた格好だ。ひと息付いてからドーソンが「コンニチハ。私たちはオールモスト・マンデー……カリフォルニアです」と片言の日本交じりのMCを頑張って披露すると、オーディエンスもエキサイトして大喜び。早くも彼らのペースに飲み込まれていた。
自然と体が動き出す心地よいサウンド
牧歌的な「come on come on」では、繰り返されるフレーズ・パートで一緒に踊って盛り上がり、ドリーミーな「hailey beebs」では、みんなの両手が宙を舞う。特にメンバーが煽るわけではないけれど、彼らの心地よいサウンドに身を任せていると、自然と体が動き出す。まるで砂浜を歩いているかのように心地よい。ゆったりしたドラムやベースと、潮風のように爽やかなギターの音色。そして、とびきり軽妙なドーソンの歌声。曲によってはドーソンもギターを抱えてファンキーなロック度がアップしたり、ベース担当のルークが時折シンセを挟んだり。だが、それ以外は一切の無駄が無く、シンプルそのものだ。グルーヴ感はあっても、決して圧倒しようというのではない。常に風通しの良いサウンドで、うっとり聴き入らせてくれる。
彼らの代表曲はもちろんのこと、新曲も多数披露してくれた。80’sエレポップの香りが華やかな「don’t say you’re ordinary」、パンク寄りの「you look so good」(未発表曲)など、様々なスタイルを聴かせて、彼らの懐の深さも知らしめてくれた。昨年リリースの「this is growing up」では、U2を思わせるスタジアム・ロック的な力強さやスケール感も加わっていた。たとえ楽曲の方向性が異なっていたとしても、必ずカリフォルニアの青空を覗かせ、太陽を感じさせてくれるのが、彼らの最大の魅力と言えるだろうか。
最新ナンバーでラストを締めくくる
ライヴの終盤は、今年に入ってから発表してきた楽曲を立て続けに披露。「sun keeps on shining」では、ラップ風の歌詞が小気味よく繰り出されて、ひと際大きな盛り上がりが。「sunburn」では、レコードよりも切なさが倍増されて、無邪気さとセンチメンタルさが一緒くたになって胸を締め付けられる瞬間だった。そしてラストは、この公演の数日前に発表されたばかりの最新ナンバー「cough drops」で大団円。エッジの立ったギターのリフに合わせて、会場中が飛び跳ねた。
約1時間の初来日ライヴは、デビュー曲「broken people」でスタートして最新曲「cough drops」でフィニッシュ(共に日本デビューEP『cough drops (japan special edition)』に収録)。その構成からも、彼らの成長ぶりや現在の上り調子な状況が感じられたし、自信というのも伝わってきた。アンコール無し、という終わり方も、自然体を良しとするオールモスト・マンデーらしさだろうか。チルでハッピーで、のほほんとしたバイブスに包まれながら、会場を後にしてからも、ずっと彼らの曲が頭の中で鳴っていた。
Written by 村上ひさし/ All Photo by Yuki Kikuchi
オールモスト・マンデー『cough drops (japan special edition)』
2022年10月5日発売
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