T.レックス『Electric Warrior(電気の武者)』解説:バンド名を改名し、時代の寵児となった名盤
1971年10月9日の全英チャートでは、ロッド・スチュワートが「Maggie May」と『Every Picture Tells A Story』で、シングル・チャートとアルバム・チャートをともに独占していた。しかし、その同じチャートで歴史的に重要な出来事がもうひとつ起こっていた。それはT.レックスのアルバム『Electric Warrior(邦題:電気の武者)』が全英チャートに初登場2位で登場していたことだった。
前年にティラノサウルス・レックスから改名して初めて発売したシングル「Ride With A Swan」でブレイクしたマーク・ボランのバンド、T.レックスにとって1971年は記念すべき年となった。新たなグラム・ポップ・サウンドのスタイルに落ち着き、マーク・ボランがイギリスで最も人気なポップ・スターになるにつれ、「Hot Love」で初の全英シングル1位を獲得、続く「Get It On」でも全英シングル1位を記録。改名後初のアルバム『T. Rex』もその年の初めにチャート入りし、全英最高位7位を記録した。
そのわずか9か月後の1971年9月にリリースされた『Electric Warrior』は、さらに一段上のレベルへと駆け上がっていった。前作同様にトニー・ヴィスコンティがプロデュースし、「Get It On」(T.レックス最大の全米ヒット。アメリカでは「Bang A Gong」と題され、イギリスのタイトルは括弧で表記された)と全英2位のヒットとなる「Jeepster」が収録されていた。
ヒット・シングルに加えて、「Cosmic Dancer」や「Life’s A Gas」などの楽曲がアルバムにさらなる深みをもたらした。『Electric Warrior』ではマーク・ボランが妖精的な詩人から、10代の若者やアルバムを購入した人たちすべてにとっての憧れの存在へと変わっていった。そして彼は、テレビに出るチャンスが増えて明らかに喜んでいたようだった。
「俺はずっとクネクネしてるタイプだよ。ただ踊るのが好きなんだ」とアルバムがチャート入りを果たした週にレコード・ミラー誌にマークは語っている。「ただペレグリン(ティラノサウルス・レックスでのパートナーのスティーヴ・ペレグリン・トゥック)がステージであぐらをかいて座っていると踊りにくかったね」。
「なんていうか、自分自身が俺にとってはファンタジーなんだ。『Electric Warrior』では俺が’Cosmic Dancer’として子宮から踊り出て墓に入るんだ。かっこ良くないからってテレビで600万人の前で踊るのが怖いなんて思わないよ。家だったらこうしてるんだから」。
マーク・ボランのファンは賛同した。最初に2ヶ月間トップ5入りを記録してから、ちょうど1971年のクリスマスの前に1位に浮上して6週間トップを記録し、1972年の2月に再び2週間トップの座についたのだ。
Written by Paul Sexton
T.レックス『Electric Warrior』