テイラー・スウィフトの20曲:ポップ界を制圧するスーパースター
テイラー・スウィフトほど、新作の発表に猛烈な注目が集まるアーティストはいないであろう。そして、非常に待望されていた彼女の6枚目のアルバム『Reputation』は、過去に例を見ないほどの熱狂を巻き起こした。テイラー・スウィフトがアルバムを発表する度に、売る側はセールスの決定的な上昇を期待して喜び、熱心なファンは彼女の曲の歌詞を隅々まで把握して、より深い意味を解読しようと試み、その他の何百万人の人々は、テイラー・スウィフトの最高の曲の数々に安らぎを見出す。それらの強力なポップ・ヒット曲は、その先の数ヶ月、彼らの人生のサウンドトラックになるのだ。しかし、テイラー・スウィフトほど見事なキャリアを辿ってきたアーティストは、稀である。わずか10年ちょっとの間に、彼女がカントリー界の神童からポップ界を制圧するスターになるなんて、誰に予想できたであろう?
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テイラー・スウィフトは、まだ高校生の時に、「Tim McGraw」を作曲した。人生が困難になった時、音楽は元気を与えてくれるという彼女の信念が伝わる優しいバラードだ。テイラー・スウィフトは、長年の間に何度もこのテーマに立ち返っているが、この曲では、ベテランのカントリー・スターの音楽が、若い頃の失恋の最中に必要な支えになったことが、インスピレーションとなっている。テイラー・スウィフトが14歳の時に契約を結んだビッグ・マシーン・レコードから発表された「Tim McGraw」は、キャリアの初期に長らく一緒に作曲をしていたリズ・ローズとの共作で、2006年の夏、全米カントリー・チャートでチャート入りを果たし、全米シングル・チャートでも40位を達成し、レーベルの判断が正しかったことを証明した。テイラー・スウィフトのベスト・ソングに何が達成できるかを、早い段階で暗示した曲である。
その次のヒット曲「Teardrops On My Guitar」は、テイラー・スウィフトにとって真のブレイクとなった曲だ。この曲はBillboard誌のシングル・チャートでトップ20入りし、ライヴで一番人気の曲となった。「Tim McGraw」よりは速めだが、それでもミッド・テンポのこの曲は、彼女にとって初の合唱を巻き起こすアンセムとなり、ライヴで欠かせない曲となった。キラキラ輝くドレスと定番のカウボーイ・ブーツでステージに立つ眩しいテイラー・スウィフトの姿は、この曲と共にわれわれの記憶に残り続けている。アメリカ国外でもリリースされ、チャート入りは果たせなかったものの、彼女の初の全英ヒット曲となり、彼女のセルフ・タイトルのデビュー・アルバムの中で、最もライヴで披露される曲となった。
チャリティー活動に対するテイラーの献身はよく知られているが、「Change」は初期の段階で彼女がそれを行なっていたことを証明する曲だ。この曲の利益は全て、全米オリンピック・チームに寄付された。そして、これはアメリカで初めてトップ10入りしたシングルとなり、テイラー・スウィフトのベスト・ソングに入れるべき曲となったのである。「Change」は逆境を乗り越えて自分に力をつけるという普遍的なテーマを扱っているが、楽曲には究極にポップなフックと、激しいロック・リフが加えられている。振り返って考えると、その後のテイラー・スウィフトがどんなアーティストになるかの徴候が、初めてこの曲で顔をのぞかせている。
彼女が世界中で名前を知られるようになる以前、アメリカ以外のリスナーの多くがこの若手スターを発見するきっかけとなった曲は、「Love Story」であろう。この曲が発表された時、まだティーンだったテイラー・スウィフトは、この曲の有名なミュージック・ビデオの中で、ロマンティックなプリンセスを演じた。この興味深い変化を遂げた彼女のイメージは、それから何年にも渡って横暴なタブロイド紙の餌食になり、歪められることになってしまう。「Love Story」はカントリー・ソングとみなされていたが、明らかにポップな曲であり、そのおかげでラジオで大ヒットし、数々の賞に幅広くノミネートされた。セールス的には、彼女の初のメジャー・ヒット曲であり、全米チャートでトップ5入りし、イギリスでは2位、オーストラリアでは1位を達成した。
テイラー・スウィフトのセカンド・アルバム『Fearless』から選んだ曲は、「You Belong With Me」だ。ポップ寄りのカントリー・アンセムで、全米2位を達成し、アメリカでは彼女の最大のヒット曲のひとつとなった。ミュージック・ビデオの演技により自信を持つようになったテイラー・スウィフトは、この曲のビデオで、若い女性達が共感できる愛らしい女子高生を演じてみせた。しかし、テイラー・スウィフトが演出した強烈なイメージは、この曲の見事な作曲とキャッチーなコーラスの素晴らしさを損なってはいない。この時点で、彼女が提示し始めた強力な作曲能力を無視できるのは、この上なく偏見を持った音楽評論家だけとなった。
インターネット上のリークは多くのアーティストを苦しめているが、2010年の夏、テイラー・スウィフトの3枚目のアルバム『Speak Now』からのリード・シングルも、残念ながらリークされてしまった。のちにカントリー・ミュージック・テレヴィジョンというカントリー専門のTV局のアウォードで年間最優秀ヴィデオ賞を獲得することになる強力なビデオに支えられた「Mine」は、色々な面で、彼女の純粋なカントリー・ルーツに少し回帰した曲であった。今考えてみると、このソングライターは、彼女のキャリアを次のレヴェルに持ち上げるためにギア・チェンジを考えていたのかもしれないとも思えるが、他の多くのテイラー・スウィフトのベスト・ソングと同様、「Mine」の魅力は確かなメロディにあった。
その後に続いたシングル「Back To December」は、テイラー・スウィフトの曲の中で、最も穏やかなバラードのひとつだ。残念ながら、この洗練された曲は他国のチャートには入らなかったが、アメリカのテイラーのファンはこの曲を心から気に入ったようで、全米シングル・チャートで6位を達成し、アダルト・コンテンポラリー・チャートでもチャート入りした。恋愛を良く理解した上で告白をしているこの曲が、20代になったばかりの女性によって書かれたものだとは、なかなか信じられないであろう。
2011年に公開された映画『ハンガー・ゲーム』は、3部作のベストセラー小説を元に制作された巨大な映画だった。アーティストがこぞってこの映画のサウンドトラックに参加することを望んだが、テイラー・スウィフトはロックな「Eyes Open」を提供し、最先端のアーティスト達と並んでもその存在感を見せつけられることを証明してみせた。チャートでも好成績を残したが、それ以上に、テイラー・スウィフトが最初の印象以上の才能を隠し持っていることを知らしめて、アーティストとしての地位を上げる役割を担った曲である。オルタナティヴ・カントリー・バンドのザ・シヴィル・ウォーズとの共作で、もうひとつのサウンドトラック曲となった「Safe And Sound」と共に、テイラー・スウィフトは遂に、より好意的な批評を受け始めるようになった。
テイラー・スウィフトのベスト・ソングが持つ直接性のみならず、若いアーティストが運命をその手に握る方法を示した「We Are Never Ever Getting Back Together(邦題:私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない)」は、テイラー・スウィフトの4作目『Red』の最初のシングルだった。この曲は内容的には、この業界、あるいは人生のあらゆる場面で、女性を利用する男性がいることが本当に暴露される現代に先駆けて、恋愛のコントロールについての自信に満ちたメッセージを語っていた。また、これはテイラー・スウィフトが初めて、偉大なヒットメーカーのマックス・マーティンとシェルバックとコラボレーションを果たしたヒット曲となった。この曲は確かに、若い女性がキャリアの襟首をつかまえてコントロールを握っている音楽であった。伝染的で中毒性がある「We Are Never Ever Getting Back Together」は、彼女の初の全米シングル・チャート1位を獲得。しかしこの歌詞は、ミステリアスなニュー・スターに夢中になり始めたタブロイド紙の熱狂ぶりに油を注ぐことになった。
「We Are Never Ever Getting Back Together」で解放されたテイラー・スウィフトは、明らかに元の場所に戻る気はなかったようで、「I Knew You Were Trouble」では、彼女が自ら問題を起こすことになるのを知っていたことを証明した。この鮮やかなポップとカントリーの融合曲は、キャッチーなロック・リフ主体の曲で、イギリスとアメリカの両国で2位を記録しする新たなクロスオーヴァー・ヒットとなった。「I Knew You Were Trouble」は第40回アメリカン・ミュージック・アウォーズの授賞式で初めてパフォーマンスされ、テイラー・スウィフトのステージ上での自信が上昇し続けていることを知らしめた。
『Red』からのセカンド・シングルとなったアルバム・タイトル曲は、彼女のナッシュヴィルのルーツに立ち返りながら、現代的で素敵なポップ風味を加えた曲だ。この時点で、カントリー・チャートでテイラー・スウィフトが本当に競っていたのは彼女自身であり、「Red」は全米ホット・カントリー・チャートの上位で、彼女の他の曲の次に並んだ。
数多くの強い女性スター達が、彼女達が関係した、もしくは関係していない男性によって最終的に性格を決められてしまうことがあるのは、悲しい事実だ。テイラー・スウィフトの恋愛は、桁外れに幅広く歓迎すべきではない興味の的となったが、少なくともエド・シーランとの関係だけは、彼らの共同作業に集中していた。『Red』収録の「Everything Has Changed」は、このアルバムのツアーのハイライト曲となった。テイラー・スウィフトとエド・シーランのヴォーカルは完璧にマッチしており、この曲も大ヒット。特にイギリスでは、最高7位を記録した。
もし、歌詞通りの意味を提供する曲があったとしたら、それは「Shake It Off」だ。彼女のカントリー・ルーツから完全に脱皮した「Shake It Off」は、テイラー・スウィフトにとって完全にポップ革命であった。アルバム『1989』(彼女が生まれた年)からのリード・シングルは、大胆でありつつメインストリームに移行した曲で、永遠にテイラー・スウィフトのベスト・ソングのひとつとして記憶されるであろう。この曲の昔を回顧するヴァイブは、カリスマ的な再発明を達成し、本国のシングル・チャートで首位を獲得して、今日に至るまで彼女の最大のヒット曲となっている。「Shake It Off」でテイラー・スウィフトは、拡大し続ける彼女のリスナー達に有効なメロディを書く才能を維持しながら、最も勇気のあるアーティストは常にリスナーの一歩先を行くものだというマントラを強化した。
この時までに、テイラー・スウィフトは一大行事のビデオの達人となっていた。「Blank Space」は高度に凝ったミュージック・ビデオの典型として永遠に語り継がれていくだろうが、この曲自体が素晴らしいため、彼女のベスト・ソングのひとつとして選ぶのは容易だった。茶目っ気のあるスマートな歌詞には、適度なユーモアも加味されており、このエレクトロ・ポップ曲は全米チャートの首位を達成したばかりか、グラミー賞の複数のノミネートと、MTVミュージック・アウォード、アメリカン・ミュージック・アウォードでの受賞を獲得した。
『1989』収録の「Bad Blood」のシングル・ヴァージョンが、ケンドリック・ラマーとのコラボレーションになると噂された時、多くの人々は、テイラー・スウィフトが行き過ぎてしまったと考えた。その理由のひとつは、この曲の歌詞が、テイラー・スウィフトが他のアーティストと経験したビジネス上の喧嘩という、充分に生々しいテーマを率直に語っていたからだ。それだけでなく、アメリカ国民の恋人的な存在の彼女が、彼女の音楽をヒップホップの方向に進めたことを、無謀だと感じる人達もいたのである。もちろん、テイラー・スウィフトは彼らよりも物事を分かっていた。そして、この曲は同アルバムからの3曲目の全米1位達成曲となり、ハイコンセプトのスーパーヒーローにインスパイアされたミュージック・ビデオには、女性セレブリティ達が集結して出演し、MTVヴィデオ・ミュージック・アウォードで年間最優秀ビデオを受賞した。
『1989』からの一連のパワー・ポップ曲に続き、2015年8月に発表された「Wildest Dreams」は、いいタイミングでより穏やかな方向に転換を計った曲だ。この優美なドリーム・ポップ・アンセムは、映画『愛と哀しみの果』にインスパイアされミュージック・ビデオと共に披露された。このビデオでスコット・イーストウッドと共演したテイラー・スウィフトは、過去最高に魅惑的な姿を披露。この曲もまた大ヒットし、リミックス・ヴァージョンは、全米ダンス・ラジオ・チャートで彼女が初めて首位を獲得した曲となった。テイラー・スウィフトのベスト・ソングが、彼女を新たな領域に連れて行くのは簡単であることを証明している。
ゼイン・マリクの人気が広まっているのは疑いの余地がなく、2017年の映画『フィフティ・シェイズ・ダーカー』のサウンドトラック用に、彼とテイラー・スウィフトがコラボレーションした結果として生まれた「I Don’t Wanna Live Forever」は、全くのアダルトなエレクトロ/R&B・バラードで、この映画シリーズの中で描かれた性的な緊張感が明らかに添えられていた。もちろんゼインは、シアやM.I.A.、クリス・ブラウン、その他にも色々なアーティストと一緒に曲を作っていたが「I Don’t Wanna Live Forever」は、彼にとって最大のコラボレーション曲となり、彼らは世界中のチャートでトップ5入りを果たした。テイラー・スウィフトはこの曲を、ヒップ・ホップ・アーティストのサム・デューと、F.U.Nのジャック・アントノフと共作した。
ライト・セッド・フレッドが、彼らの1991年の大ヒット曲「I’m Too Sexy」がテイラー・スウィフトの2017年のカムバック曲「Look What You Made Me Do」の一部をインスパイアしたとの知らせを電話で受けた時、彼らは宝くじに当たったと思ったに違いない。実際のところ、多分その通りなのだ。この曲は世界中で次々に記録を破り、テイラー・スウィフトと、共作プロデュースを手がけたジャック・アントノフに、全英1位という報酬を与えた。この曲の中でテイラー・スウィフトは、「昔のテイラーは死んだ」と世界に告げた。そして新しいテイラー・スウィフトも、問題なく成功しそうである。
以前より大胆な「Look What You Made Me Do」の後に発表された「Gorgeous」は、ミドルテンポのバラードで、より優しく親しみ易いテイラー・スウィフトに戻っている。ポップ・ラジオ局はすぐに、このマックス・マーティンとシェルバックの共作曲に夢中になった。そして、この2曲は共に、新作『Reputation』が、このテイラー・スウィフトの20曲のベスト・ソングと並ぶような、様々なテイラー・スウィフトのスタイルを巧みにカヴァーした作品となるであろうことを提示している。
Written By Mark Elliott
2021年11月12日発売
CDデラックス盤 / CD通常盤 / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
・日本盤デラックス盤仕様:CD2枚組/歌詞対訳/ライナーノーツ付/紙ジャケ仕様/ギター・ピック付
・日本盤通常盤仕様:2枚組/歌詞対訳/ライナーノーツ付
2021年4月9日発売(日本盤CDは4月30日)
日本盤CDデラックス / iTunes Store / Apple Music / Amazon Music
- プレイリスト『テイラー・スウィフト の20曲』
- 『Reputation』特設サイト
- テイラー・スウィフト アーティストページ
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