二人の脱退を乗り越えた10ccのアルバム『Deceptive Bends』
10ccが5枚目のスタジオ・アルバムを発表した頃、最もダークなユーモアを持ち合わせた巧みで発明的なブリティッシュ・ポップ・ロック・バンドとして5年間活動していた。前作『How Dare You』をリリースしてから、メンバーのケヴィン・ゴドレイとロル・クレームが脱退し、残った二人を“5cc”だと喜んで指摘したメディアをよそに、新たに発表したアルバム『Deceptive Bends』は彼らが期待された音楽の質を維持し、グループのそれまでの実績を持続することになった。
エリック・スチュワートとグレアム・グールドマンは二人の脱退に臆することなく、マルチ・インストゥルメンタリストのポール・バージェスのサポートを得て、それまでと同じグループ名、10ccで活動を続けた。新しいアルバムからは、1976年のクリスマスにシングル「The Things We Do For Love」を先行して発表。シングルはイギリスでは6位とヒット。のちにアメリカではトップ5入りを果たしてゴールド認定を受けた。アルバムは、1977年5月14日に全英チャートに初登場している。
自身のストロベリー・スタジオでいつも通りレコーディングされたアルバムは、ヒプノシスがデザインしたもので、10ccのそれまでの見事なアルバム・カヴァーに続くものとなった。以前のアルバムにあったようなコンセプトやエピソードによる構造を避け、『Deceptive Bends』はもっとダイレクトなアプローチになった。そしてキャッチーなシングル「Good Morning Judge」がリリースされ、「The Things We Do For Love」より1ランク上の5位を記録したことで、再びアルバムに注目が集まった。
『Deceptive Bends』は全英チャート15位でデビューし、翌週に3位まで登り、その最高位の記録を2週後に再び達成、通算21週の間チャート入りを果たした。さらにバラード曲のシングル「People In Love」をリリース。イギリスではチャート入りしなかったものの、全米シングル・チャートでトップ40入りを達成した。『Deceptive Bends』はイギリスとカナダでゴールド・アルバムとなり、そのリリースのわずか6ヶ月後、1977年にロンドンとマンチェスターの10ccのライヴで収録された楽曲を集めた『Live And Let Live』で再びバンドの名前は店頭に並んだ。
Written by Paul Sexton
10cc『Deceptive Bends』