ジョージ・ハリスンのベスト・カヴァー曲10選
卓越した音楽の才能と明確なヴィジョンを持ち、博愛主義者だったジョージ・ハリスンが残したものは、私たちの頭から消えることはない。しかしジョージ・ハリスンはザ・ビートルズの仲間内で超一流の作曲家として認められるよう努力する必要があり、彼の曲が何千というカヴァー曲を生んだにもかかわらず、以前からジョージは過小評価され十分に認められていない。そこでuDiscoverと一緒にジョージ・ハリスンのベスト・カヴァー曲10選を振り返ってみよう。
■フランク・シナトラ「Something」
1969年2月25日、26歳の誕生日を迎えたジョージ・ハリスンはアビイ・ロード・スタジオに向かい、できあがった曲から3曲をソロでレコーディングを行った。その一曲が「Something」で、9月にアルバム『Abbey Road』の収録曲として、そして10月には「Come Together」と両A面シングル曲としてリリースされた。この見事なバラード曲は、「Yesterday」は別として、他のどのザ・ビートルズの曲よりも多くのカヴァーを生み出した曲でもある。
これらの中でひときわ有名なのが、もちろん、周知の通り「過去50年間で最高のラヴ・ソング」と絶賛したフランク・シナトラが1970年にレコーディングした「Something」のカヴァーである。この曲を愛してやまなかったフランク・シナトラは、1979年にも再度カヴァーしている。今回私たちの10選に選んだのは最初にレコーディングしたカヴァーの方だ。
■コンサート・フォー・ジョージ「While My Guitar Gently Weeps」
彼の友人やファンたちが彼の追悼イベントとしてステージに集まったスター勢揃いのエモーショナルな2002年11月29日に行われた『Concert For George』。このライブ作品のリマスターされた音源から3曲紹介しよう。こちらはエリック・クラプトンとポール・マッカートニーによる歴史に残るデュエットであり、1968年の通称ホワイト・アルバムと呼ばれる『The Beatles』に収録されたジョージ・ハリスンの名曲のカヴァーだ。ここには上記二人に加えて、リンゴ・スター、ジェフ・リン、ダーニ・ハリスン、アルバート・リー、レイ・クーパーらと一緒に演奏した。
■ビリー・プレストン「My Sweet Lord」
ビリー・プレストンのソウルフルな「My Sweet Lord」は、厳密に言えばカヴァー曲ではない。なぜならジョージ・ハリスンは、この曲を彼の友人でアップル・レコードのビリー・プレストンに提供し、自ら共同プロデュースを行った彼のアルバム『Encouraging Words』に収録したからである。ザ・ビートルズのお気に入りアーティストの一人であり、さらに「Get Back」にザ・ビートルズと共に名前がクレジットされた人物でもあるビリー・プレストンは、1970年9月にLPをリリース。その2ヶ月後に、同曲はジョージ・ハリスンの大作であるLP3枚組『All Things Must Pass』に収録され、シングルとしてチャート上位に登場した。
■スティーヴ・ヒレッジ「It’s All Too Much」
アシッド・ロックの原型として一部に受け取られたジョージ・ハリスン作曲の「It’s All Too Much」は、あまり称賛されなかった一曲だ。この曲をザ・ビートルズがレコーディングしたのが1967年、しかし1969年の映画『Yellow Submarine』のサウンドトラックとして登場するまでリリースされることはなかった。あまり幅広く知られていないが、最初にこの曲をカヴァーしたのは、アメリカン・ロックに欠かせない存在になることになるジャーニーで、1976年のはじめにリリースされた彼らのセカンド・アルバム『Look Into The Future』に収録された。今回この曲のカヴァーから選んだのは、イギリスのプログレッシブ・ロックの代表格、スティーヴ・ヒレッジ。数ヶ月後に彼のアルバム『L』に収録したカヴァーである。
■コンサート・フォー・ジョージ「I Need You」
ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで開催された『Concert For George』に話を戻そう。これが1965年のアルバム『Help!』に収録された「I Need You」のカヴァーだ。ハートブレイカーズを率いてジョージ・ハリスンのためにトム・ペティが演奏する姿は、、両者が亡くなった今、より痛切な気持ちを感じさせる。
■テデスキ・トラックス・バンド「Within You Without You」
不朽の名作アルバム『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』からの一曲、「Within You Without You」をテデスキ・トラックス・バンドがコンサートでカヴァーしたのはつい最近だ。テデスキ・トラックス・バンドの2017年に発売された『Live From The Fox Oakland』に収録されたカヴァーは思慮に富み、神秘的な音に仕上げられている。
■コンサート・フォー・ジョージ「Isn’t It A Pity」
『Concert For George』から最後に紹介するのは、「Isn’t It A Pity」を贅沢にカヴァーしたものだ。この曲は『All Things Must Pass』に収録されているジョージ・ハリスンの特徴的で大規模な曲作りの一曲。惜しくも2006年にこの世を去ったビリー・プレストンとエリック・クラプトンがカヴァーした。
■ホリーズ「If I Needed Someone」
ジョージ・ハリスンの作曲の潜在的な魅力をいちはやく認識したポップ・グループが、全英チャートの常連だったホリーズだった。すぐに行動に移した彼らは UKでのシングルとして「If I Needed Someone(邦題:恋をするなら)」のカヴァーをこの曲が収録されたザ・ビートルズのオリジナル・アルバム『Rubber Soul』と同じ1965年12月にリリースした(とはいえ、米国キャピトル編集盤の『Rubber Soul』にはこの曲は収録されておらず、1966年に 「Yesterday and Today」がリリースされるまでアメリカでは公開されなかった)。
■ジョージ・ハリスン「All Things Must Pass」
忘れられないジョージ・ハリスンによる「All Things Must Pass」は、私たちが敬意を表すジョージ・ハリスンのソングブックを飾る最後の一曲に非常にふさわしい曲だ。彼の息子であるダーニ・ハリスンが、ハートのアン・ウィルソン、モデル兼シンガー・ソングライターのカレン・エルソンとノラ・ジョーンズと一緒に、2014年にロサンゼルスのフォンダ・シアターで開催されたジョージ・ハリスンのトリビュート・コンサート「George Fest: A Night to Celebrate the Music of George Harrison」にてパフォーマンスを行った曲ならなおさらだろう。「Sunset doesn’t last all evening(夕日は夜まで残らない)」とジョージ・ハリスンが綴ったように、“心はその雲を吹き飛ばすことができる” のだ。
Written by Paul Sexton
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『Concert For George』
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