ユニバーサルミュージックグループがフランク・ザッパの全作品を獲得

Published on

7月 3, 2022

ItoMasaki

Frank Zappa 'Apostrophe' cover - Courtesy of Universal Music Group

ユニバーサルミュージックグループ（以下UMG）は、フランク・ザッパの遺族であるムーン、ドゥイージル、アーメット、ディーヴァらによるザッパ・トラスト（Zappa Trust）が、故フランク・ザッパの膨大な録音物、代表曲の出版権、映画アーカイブ、および彼のライフワークを収めた倉庫“The Vault”で保管されているコンテンツを含むフランク・ザッパの全財産獲得に合意したことを発表した。

これらのコンテンツは、ジャンルの境界線を押し広げた伝説のミュージシャン、高く評価された作曲家、名ギタリスト、そして傑出した活動家でもあったフランク・ザッパの40年にわたる多作なキャリアを網羅するものとなる。

UMGのグローバル・カタログ・カンパニーであるユニバーサル・ミュージック・エンタープライズ（以下UMe）と、その音楽出版社であるユニバーサル・ミュージック・パブリッシング・グループ（以下UMPG）は、フランク・ザッパの名前と肖像権も追加で取得することにより、ザッパ・トラストと提携しながらすでに成功を収めている実績をもとに、先駆者、聖像破壊主義者、優れた音楽家、恐れ知らずのアーティストとして音楽や文化に挑み、型破りで妥協なきビジョンと主張を貫いてきた彼のキャリアをさらに拡大させていく予定だ。

この新たな契約により、UMPGは、「Watermelon In Easter Hay」「Cosmik Debris」「Peaches En Regalia」「Uncle Remus」「Joe’s Garage」といったアイコニックな楽曲を含む、ザッパ楽曲の全出版権を取得することになる。

アメリカン・ソングライター誌に“作曲の天才”と評されたフランク・ザッパは、社会への賢明な助言（「Don’t Eat The Yellow Snow」）から鋭い文化批判（「Valley Girl」「Trouble Every Day」）、ディスコ風刺（「Dancin Fool」）、本格的オーケストラ楽曲（「The Perfect Stranger」、「Strictly Genteel」）など、幅広い作品群を手掛けてきた。

ザッパ・トラストは、声明で次のように述べている。

「10年前、ゲイル・ザッパはUMeと提携し、フランク・ザッパの音楽をデジタル時代に移行させ、フランク・ザッパのビジネスを世界中に拡大するための飛躍的な成長をもたらす実りあるパートナーシップをスタートさせました。この10年間、私たちはフランクの膨大な音楽カタログをストリーミングやダウンロードで入手できるようにしたり、彼の重要なアルバムの多くをアナログ盤で再発した他、フランク・ザッパの恒例ハロウィン・コンサート・シリーズなどの刺激的なアーカイブ盤や大規模なボックス・セットを多数制作し、またロサンジェルス・フィルハーモニックによるオーケストラ・アルバム『Frank Zappa: 200 Motels-The Suites』はグラミー賞にもノミネートされました」

「UMGはフランクの芸術に対する情熱を十二分に証明してくれましたので、ムーン、ドゥイージル、アーメット、ディーヴァのザッパ・ファミリー全員が、この新たな永久管理人にフランク・ザッパの全財産を管理するバトンを託せることを大変嬉しく思っています。新旧のファンは、今後何年にもわたって、さらに多くのフランク・ザッパの音楽を楽しむことができるでしょう。フランクは1966年にヴァーヴ・レコードからザ・マザーズ・オブ・インヴェンションのデビュー・アルバム『Freak Out!』を発表しており、あれから50年以上経った今、スタート地点に戻り、彼の音楽とレガシーは、今後何世代にもわたって、最高の形で受け継がれていくことでしょう」

UMe社長兼最高責任者のブルース・レズニコフはこう述べている。

「この10年間、ザッパ・ファミリーと共にフランク・ザッパの音楽を世界中でリリースしながら彼の聴衆を増やし、彼のレガシーを守ることができたのは光栄なことでした。ザッパは、先駆的で先見の明のあるアーティストであり、素晴らしい作品を生み出しました。ゲイル、そして彼の子供たちが、彼の重要なレガシーを私たちに託してくれたことを大変誇りに感じています。私たちは、長年のファンや彼の才能を知ったばかりの人々のために、その膨大且つ影響力のある作品群を讃えるための革新的な方法を拡充し続けるつもりです。フランク・ザッパは、時代を先取りした多作なアーティストとして、常に創作と録音を続けていました。彼は、次時代のフランク・ザッパ・ファンを導くために、まだ未発表の素晴らしい音楽と映像の宝庫を自身の保管庫に残していました」

ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング・グループの最高執行責任者であるマーク・チミノは、こう述べている。

「音楽と文化のパワフルな“ヴォイス”であるフランク・ザッパは、その時代において最も優れたアーティストの1人でした。我々は、ザッパの影響力のあるカタログ作品群を歓迎し、彼の芸術性を維持しながら、その素晴らしいレガシーを世界中に広めるために、彼のエステートがUMGを選んでくれたことを光栄に思っています」

過去10年間、ザッパ・トラストとUMeは密接に連携し、刺激的なアーカイブ盤のリリース、名作アルバムのアナログ盤再発、ストリーミング配信、そして彼の音楽をこれまで以上に広く世界中に提供することによって、フランク・ザッパのカタログを活性化させてきた。UMGは、フランク・ザッパ楽曲のストリーミング配信を毎年2桁の割合で増やしており、近年ではザッパのカタログ作品の多くが初めてハイレゾ音源で配信され、ダウンロードおよびストリーミングで入手できるようになった。

UMeとザッパ・トラストの多角的な取り組みと、UMeがサウンドトラックを提供し、高い評価を得たアレックス・ウィンター監督による2020年の長編ドキュメンタリー『ZAPPA』の公開により、フランク・ザッパとその音楽は、彼の死後20年近くを経て、新たな人気を獲得しつつある。

2012年、ザッパ・レコードとザッパ・トラスト（妻ゲイル・ザッパが代表を務める）は、UMeとの提携により、彼の全カタログ作品を初めて配信でリリースした。半数のアルバムはオリジナルのアナログ音源からのリマスタリング、残りのアルバムはオリジナルのデジタルテープからの再転送によってCDとストリーミング、ダウンロード用の音源が作成された。

また、多くのアルバムがアナログ盤の再発のためにリマスターされてきたが、その直後、ザッパ・トラストはUMeとグローバルなライセンスと配給の契約を結び、60タイトルものカタログ群の再発が実現した。2015年には、ザッパの全音源カタログの長期的かつグローバルなライセンス契約と、文化的象徴であるザッパの他の創作物に対する権利管理参加について提携。このパートナーシップは、ブルース・レズニコフとUMeとの間で、新製品のリリース、商標ライセンス、映画や演劇作品を含む広範囲にわたるライセンス契約へと発展していった。

現在までに122タイトルものフランク・ザッパのオフィシャル作品がリリースされているが、これは彼の“The Vault”に眠る膨大且つ包括的な財産から、一般公開されている録音のごく一部であり、今後の展開のほんの一端に過ぎない。執拗なまでの記録主義者だったフランク・ザッパ、ほぼすべてのレコーディング、リハーサル、ライヴ・パフォーマンス、そして何気ないジャム・セッションでさえ、生涯にわたって様々なオーディオおよびビデオ・フォーマットで記録していた。

UMGは、今後数十年にわたり、新たなアーカイブ・プロジェクトのために“The Vault”を掘り下げていく予定だ。さらにUMGは、フランク・ザッパの名前と肖像権を使ったグッズ制作、長編映画、インタラクティブ体験、非代替性トークン（NFT）、次世代Web3プロジェクトなどで、世界中の既存ファンや新規ファンを魅力していく予定だ。

Written By Max Bell

『ZAPPA (Original Motion Picture Soundtrack)』(3CD)
輸入盤/デジタル：2020年11月27日発売
日本国内盤：2022年4月20日発売
国内盤CD / LP/ iTunes Store / Apple Music / Amazon Music
＜日本盤のみ＞解説付／歌詞対訳付SHM-CD仕様

フランク・ザッパ『ZAPPA/ERIE』(6CD)
2022年6月17日発売
国内盤CD / iTunes Store / Apple Music

映画情報

『ZAPPA』
2022年4月22日(金)日本劇場公開

公式サイト

監督：アレックス・ウィンター｜出演：ブルース・ビックフォード、パメラ・デ・バレス、バンク・ガードナー、デヴィッド・ハリントン、マイク・ケネリー、スコット・チュニス、ジョー・トラヴァース、イアン・アンダーウッド、ルース・アンダーウッド、スティーヴ・ヴァイ、レイ・ホワイト、ゲイル・ザッパ
キングレコード提供｜ビーズインターナショナル配給
シネマート新宿・シネマート心斎橋ほかにて

2020年｜アメリカ映画｜129分｜原題：ZAPPA