時代の終焉:老舗ニュース/カルチャー誌「ヴィレッジ・ヴォイス」紙媒体での発行を終える
ニューヨークをベースとするヴィレッジ・ヴォイスが紙媒体としての発行を停止する。非常に優れたアメリカのニュース/カルチャー誌であり、アメリカ発のオルタナティヴ・ニュース週刊誌として知られるヴィレッジ・ヴォイスは60年に渡り、アメリカのニュースを取り上げてきた。しかし、2015年にヴォイス・メディア・グループを買収したピーター・バービーは、このオルタナティヴ週刊誌の紙媒体での発行を中止することを決定した。
「60年以上に亘り、ヴィレッジ・ヴォイスのブランドは、アメリカのジャーナリズム、政治、カルチャーにおいて、並外れた役割を務めてきました」とピーター・バービーは火曜日に発表された声明で語った。「そして、それらの発展の導き手であり、ヴィレッジ・ヴォイスがなければ聞かれることのなかったアイディア、意見や多くの人々のアイデンティティを文字という形の声で伝えてきたのです。そういったことは(紙媒体ではなくデジタル媒体としても)これまで以上に続いていくことを期待しています」。最も伝説的で、力を持ったメディアのひとつともいえるヴィレッジ・ヴォイスでさえも、世間の広告費のデジタル比重が増えたことによる広告収入の低下等と戦い続けていた。紙媒体は大部分を広告収入に頼っていたのだ。
「ビジネスはオンライン化に向かっています。そして、ヴィレッジ・ヴォイスの読者も我々が伝えることを週に一回の紙だけではなく、毎日、言葉や写真からpodcastやビデオや他のフォームを使って紙媒体よりも幅広いメディアで受け取ることを望んでいるのです」とピーター・バービーは語った。
ヴィレッジ・ヴォイスは、1995年にダン・ウルフ、エド・ファンシア、ノーマン・メーラーによって創立、ニュー・ヨークのクリエイティヴ・コミュニティのプラットフォームとして始まった。創立以来、3度のピューリッツア賞を受賞、ナショナル・プレス・ファウンデーション・アワード、ジョージ・ポルク賞を受賞している。
ヴィレッジ・ヴォイスは、ライターのエズラ・パウンド、漫画家リンダ・バリー、アート評論家のロバート・クリストガウやJ.ホバーマンなどの多様なライターやアーティストを擁してきた。このひとつのメディアがロックン・ロールの歴史において行った決定的な貢献は、ロバート・クリストガウによって設立された「Pazz & Jop」である。これは1971年以降、ヴィレッジ・ヴォイスが毎年、その年を代表する作品を選ぶ人気投票企画である。
何百もの音楽評論家により提出された年度末のトップ10リストから集計するこの人気投票は、今は現存しない雑誌「Jazz & Pop」からその名をとり、「Pazz & Jop」と名付けられ、出版物の恒例評論家による投票システムを採用した。1971年に初開催された「Jazz & Pop」ではザ・フーの『Who’s Next』が受賞、 そのほか、スティーヴィー・ワンダーの『Songs In The Key Of Life』、セックス・ピストルズの『Never Mind The Bollocks…Here’s The Sex Pistols(邦題:勝手にしやがれ)』、プリンスの『Sign O’ The Times』、べック の『Odelay』、そしてデヴィッド・ボウイの『Blackstar』らの影響力の大きいタイトルが「Jazz & Pop」を受賞している。
ヴィレッジ・ヴォイスの紙媒体が終了するという発表は、さまざまな衝撃と落胆をメディア業界に与えた。しかし、ピーター・バービーはそうではないと語る。「ヴィレッジ・ヴォイスにおいて最もパワフルなことは、はそれが紙メディアで週刊で発行されていたことではありません」。「ヴィレッジ・ヴォイスは生き続けます。それは変化に対応するもので、時代を反映するものです。世界は進化し続けているのだから。ヴィレッジ・ヴォイスのブランドが新世代の人々やこれからくる世代を代表するようなものになるようにしていきたいと考えています」。
Written by Tim Peacock