ザ・ラスト・ディナー・パーティー2度目の来日公演初日レポ:成長と進化、全方面での無敵感

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Photo: Masashi Yukimoto

UKのライヴ・シーンから頭角を現したロンドン出身の注目の5人組バンド、ザ・ラスト・ディナー・パーティー(The Last Dinner Party)。

2024年2月にデビュー・アルバム『Prelude To Ecstasy』を発売し、同年7月にLIQUIDROOMで行われた初の来日単独公演はソールドアウトとなり、そのままFUJI ROCK FESTIVAL’24にも出演してメインステージでパフォーマンスを披露した。

そして2025年4月には2度目となる来日を果たし、東名阪の3か所でツアーを実施。この初日公演となった4月15日東京・Zepp Hanedaの粉川しのさんによるレポートが到着した。

今回の日本ツアーは、4月18日(金)大阪・GORILLA HALL OSAKA、4月20日(日)愛知・NAGOYA CLUB QUATTROでの公演が予定されており、当日券の販売も予定されている。

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バージョンアップしたパフォーマンス

ザ・ラスト・ディナー・パーティの初来日は、昨年7月の単独公演&フジロック。そこから約8ヶ月という短いインターバルにも拘らず、彼女たちのパフォーマンスは驚きの進化を遂げていた。誤解しないでほしいのは、ザ・ラスト・ディナー・パーティはもともと素晴らしいライブバンドであったということだ。テクニカルな面でも、ハイ・コンセプトな構築面でも、そして観客を自分たちの世界に全力で誘うガッツの面でも、ザ・ラスト・ディナー・パーティは昨年の段階で早くも新人らしからぬ精度でそれらをやり遂げていた。

デビュー・アルバム『Prelude To Ecstasy』で全英1位を獲得し、2024年に最も跳ねたUK新人バンドとなったのも納得の実力派、それがザ・ラスト・ディナー・パーティだった。しかし、今回の彼女たちはテクニック面でも、構築面でも、ガッツの面でも、昨年から2段階も3段階もバージョンアップしており、濃密で過剰な『Prelude To Ecstasy』の世界がより立体的に立ち上がってくる、圧巻の1時間10分だったと言っていい。

 

全方面での無敵感

ザ・ラスト・ディナー・パーティのトレードマークである天使が左右を固めたステージは、巨大な三日月に照らされたロマンティックな月夜のイメージで作られていた。強烈な逆光の中から赤・白・黒を基調としたドレッシーな装いの5人が現れると、瞬く間にZepp HANEDAは幻想的なムードに包まれていく。筆者が「今日のTLDPは凄い!」と確信したのは2曲目の「Caesar on a TV Screen」で、この曲特有の転調の切れ味といい、妖艶とコケティッシュを気まぐれに渡り歩くアビゲイル(Vo)のショーマンシップといい、「anyone!」連呼のカタルシスといい、まさに全方面で無敵感を増している。

アビゲイルは今やフロントパーソンとしての自信に満ちていて、客席に背中を向けてポージングしている時ですら、目が惹きつけられるカリスマだ。しかしひとたびMCになると、「東京に戻ってこられて嬉しい! ワオ、こんなにたくさんの人が観にきてくれて……今日は楽しんでいってね!」と、飾らない満面の笑み  を見せてくれる。

そんなフレンドリーさから一転、エミリーのフルートを合図にミラーボールが回り始める「Beautiful Boy」、アビゲイルがステージに崩れ落ち、蹲る「On Your Side」はノクターンのように静謐な仕上がりで、この静と動のコントラストもまたザ・ラスト・ディナー・パーティの真髄だ。

 

成長と進化

セットリストは昨年とほぼ同様、曲のレパートリーが増えたわけではないのだが、5人のミュージシャンシップの成長によって一曲ごとの完成度が桁違いで、全14曲1時間強とコンパクトに纏まっているとは思えないほど充足感があるステージだ。エミリー(G)のギターはますます磨きがかかり、特に「Sinner」では、今、こんなに格好良いギターソロを弾きこなす女性ギタリストは他にいないんじゃないかと思ってしまう。

また、今回特に著しい成長を感じたのがリジー(G)を中心としたバックボーカルで、3パートで美しいコーラスを響かせたり、勇ましくユニゾンを轟かせたり、はたまた「Gjuha」では宗教儀式を彷彿させるミステリアスなハーモニーを効かせたりと、声楽としての厚み、面白さが格段に増していた。

進化と言えばジョージア(B)の日本語もさらに上手くなっていて、「次の曲はちょっと哀しいです。一緒に歌いましょうか」「今、新しいアルバムを作っています。次の曲は“大きな犬”、英語だと“Big Dog”です」etc.、この国の言葉でファンと積極的にコミュニケーションを取ろうとしてくれていた。

ちなみに恒例の日本語でのメンバー紹介ではうっかりアビゲイルの紹介を忘れ、メンバー全員笑いを堪えながら「The Feminine Urge」を歌い始める、なんてチャーミングな一幕も。

 

バンドの最新モード

ブロンディの「Call Me」のカバーで会場をさらに温めた後の後半戦は、ザ・ラスト・ディナー・パーティの真骨頂たる過剰さが炸裂! 彼女たちのエキセントリックの極地を示すナンバー「My Lady of Mercy」ではエミリーがフライングVを、オーロラが巨大ショルキーを抱えて5人が横一列で並んだその様に、本当に絵になるバンドだと惚れ惚れしてしまう。客席に飛び込んだアビゲイルが真紅の薔薇の手にしてステージに戻ってくるのが、まるで映画のワンシーンのようだ。

恐らくザ・ラスト・ディナー・パーティの最新モードを示唆するナンバーである新曲の「Big Dog」は、マキシマリズム方向に思いっきりブーストをかけたホワイト・ストライプス、とでも喩えるべき恐ろしくヘヴィ&タイトな演奏。これが彼女たちの未来だとしたら、私たちはまだまだこのバンドの全貌を知らないということになるだろう。

アンコールの「The Killer」は寸劇も交えつつの徹底してシアトリカルなパフォーマンスで、ザ・ラスト・ディナー・パーティは本当に最後の最後まで手を抜かないというか、貫き通すべき美学の在処を確信しているバンドだ。ラストはもちろんこの曲「Nothing Matters」! オーディエンスの大合唱と共に完全燃焼の幕切れとなった。

この日はザ・ラスト・ディナー・パーティにとって2025年のツアー最初のステージだった。つまりある種のウォーミングアップでもあったにも拘らず、かくも凄まじいパフォーマンスを見せてくれたのだから、大阪、名古屋とさらにヒートアップしていくことは間違いないだろう。

 

Written By 粉川しの / All photo by Masashi Yukimoto



ザ・ラスト・ディナー・パーティー『Prelude To Ecstasy
2024年2月2日発売
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music



 

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