レディー・ガガの革新的MV「Telephone」公開10周年に際して、監督が明かす撮影裏話
今からちょうど10年前、ビヨンセをフィーチャリングしたレディー・ガガのビデオ「Telephone」が公開された。レディー・ガガの作品すべてに言えることだが、このミュージック・ビデオはそれまでの常識を逸脱し、音楽業界に大きな革新をもたらした。
この歴史的「Telephone」ビデオの公開10周年を記念して、今作の監督で、この曲の共作者でもあるジョナス・アカーランドが米メディアVarietyの取材に、この野心に満ちたビデオやレディー・ガガのクリエイティヴ・ビジョン、そしてビデオのレガシーについて語っている。
「Telephone」はレディー・ガガ2作目のアルバム『The Fame Monster』の収録曲で、2009年に発表した(同じくジョナス・アカーランドが監督を務める)「Paparazzi」の続編とも言える作品だ。ゴージャスなドレスに身を包んだレディー・ガガが、「Paparazzi」で、ボーイフレンドを装ったパパラッチに毒をもった罪で刑務所に投獄されるシーンからこのビデオは始まる。その後共犯者であるビヨンセによって保釈された彼女は、クエンティン・タランティーノ監督の映画『キル・ビル』に登場する“プッシー・ワゴン”に乗り込む。
タイリース・ギブソンが演じる男をはじめ、ダイナーにいた全員に毒をもった2人が、その後警察から逃走しただろうことは、最後を締め括る「To Be Continued」のキャプションが物語る。そんなストーリーを展開させながら、素晴らしい振り付けを伴ったダンス・シーンや、奇抜で目を引く無数の衣装、そして人気のオンラインデートサービス“Plenty of Fish”や“Virgin Mobile”といった小ネタなどがこのビデオの中で次々に披露されていく。
過去にマドンナ、メタリカ、テイラー・スウィフト、ラムシュタインらの作品を手掛け、グラミー賞受賞歴を誇るスウェーデン出身のジョナス・アカーランド監督は、Varietyのインタビューの中で最初のコンセプトづくりについてこう明かしている。
「僕は早い段階でレディー・ガガが視覚的要素を重視するタイプのアーティストだということを学びました。そして彼女はアイデアの宝庫です。ですから基本的に僕の役目は、彼女のアイデアを全て取り込んだ上で、ふるいにかけ、そこから抽出したものを作品として具現化していくことでした。彼女との仕事は毎回そうですが、お互いをリスペクトしながら行うことができる、素晴らしい共同作業なんです」
驚くべきことに、わずか2日間で撮影されたという「Telephone」のミュージック・ビデオは、その限られた時間の中で出演者や制作チームに即興的な対応を余儀なくした。
「実際にたくさんの衣装チェンジや車のシーン、さまざまな場所でのロケを要する制作者泣かせの作品でした。刑務所での撮影を1日目に、砂漠での撮影を2日目にまとめて行ったのですが、信じがたいことに、ビヨンセとレディー・ガガが、ロケ現場で振り付けを合わせながら文字通り練習をしていました。当初はビヨンセのパフォーマンス・パートを砂漠で撮影する予定だったのですが、日が陰ってしまったので急遽小さくてちょっと不気味なモーテルの部屋で撮影を行いました。今思えばあの撮影は4日か5日くらいかけて行うべきでしたね」
とジョナス・アカーランドは当時の撮影を反省と共に振り返った。
また、彼は「Paparazzi」や「Telephone」をシリーズ化するつもりはなく、両ビデオの最後に登場する「To Be Continued」のキャプションは、続編制作へ意思表示ではなく、単純にスタイル的な要素として取り入れたことを明かしている。一方で「このシリーズの第3弾をつくってみるのも面白いかもしれませんね」とさらなる続編の制作について思案していることも明かした。
現在3億5,000万回再生に到達しようとしている「Telephone」のミュージック・ビデオは、過去のレディー・ガガのビデオ中でも最も高い人気を誇る作品のひとつであり続け、その事実は先日公開されたばかりの最新ビデオ「Stupid Love」他、彼女のこれまでの作品の中に投影されている彼女のユニークなビジョンについて何かしら物語っているように思える。
「ミュージック・ビデオは長い目でみて後世に残すための作品としてではなく、その時代の、その瞬間の中で作り上げるものです。ただ、運が良ければ、人々はその作品をずっと覚えていてくれる。公開から10年経った今尚、人々の記憶に残っているのであればそれは素晴らしいことです。人々はいまだにこのビデオを楽しんで、大好きな作品だと言ってくれます」
ジョナス・アカーランド監督がこのインタビューを通して伝えたかったことは、レディー・ガガの仕事に対する美学、そして彼女のクリエイティヴ・ビジョンの素晴らしさである。
「私が仕事を共にしてきた誰よりも努力家で、彼女との仕事によって自分の内なる能力が引き出されていくのです」と彼は語る。
Written By Sophie Smith
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レディー・ガガ『Chromatica』
2020年5月29日配信
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