テイラー・スウィフト、名誉美術博士号を授与されたN.Y.大学卒業式でスピーチ。そのハイライトを紹介
テイラー・スウィフト(Taylor Swift)は2022年5月2日、ニューヨーク大学から名誉美術博士号(Honorary Doctor of Fine Arts)を授与され、同校の2022年度卒業式でスピーチを披露した。彼女の感動的なスピーチのハイライトをご紹介しよう。
<関連記事>
・テイラー・スウィフト『1989』解説:ポップという芸術の並外れた頂点
・テイラー・スウィフト最新作『Red (Taylor’s Version)』本人による楽曲解説
“普通”の大学生活への憧れ
「私は普通の大学生活を送ることができませんでした。10年生(高校1年生)まで公立高校に通い、その後は(移動中の)空港のターミナルビルでホームスクーリングを続けながら教育を終えました。それから、全米のラジオ局を廻るツアーに出ました。とても華やかなように聞こえますが、実際はレンタカーとモーテル、そして、サウスウエスト航空の飛行機の搭乗中に、私と母の間の空席に誰も座りたくないように、大声で親子ゲンカをする振りをしていた日々でした」
「子供の頃、私は常にどこか遠くの大学に通いたい思っていて、新入生の寮の壁に貼るポスターを想像していました。私の曲“Love Story”のミュージック・ビデオのエンディングも、架空の大学の芝生の上で本を読んでいる理想の男性と出会い、2人はお互いを一目見た瞬間に、前世で恋に落ちていたことに気づくという設定にしたほどです。これって、まさに皆さんがこの4年間のどこかで経験したことですよね?」
テイラーから今年の卒業生へのアドバイス
「私は、頼まれない限りは、誰にも勝手なアドバイスはしないように心掛けています。このことについては、後ほど詳しく説明しますが、今回は、このような状況で正式にその依頼を受けたのだと思い、私の持っている知恵を伝授し、これまでの私の人生において役に立ったことをお話しします。ただ、私は決して、皆さんに何をすべきかを語る資格などないと思っていることだけは心に留めておいてください。皆さんは、今日まで働き、努力し、犠牲を払い、勉学に励み、夢を持ってこの場にいるのですから、自分のやっていることをわかっているはずです。私とは違うやり方で、違う理由で人生を歩んでいくことでしょう」
「ですから、皆さんに何をすべきかを教えるつもりはありませんし、皆さんもそれを望んでいないでしょう。私が夢のキャリアをスタートさせ、これまでの人生、愛、プレッシャー、選択、恥、希望、友情に向き合う中で、知っておきたかったライフハック(生活の知恵)をいくつかご紹介します」
「第一は、人生には辛いこともあり、とりわけ一度にすべてを成し遂げようとすると、その重みがのし掛かることがあります。成長しながら、人生の新章へ移行するというのはある意味、キャッチ・アンド・リリースです。つまり、残すべきものと、手放すべきものを見極めるということです。人への妬みや元彼の近況、学生時代のいじめっ子が叔父が始めたヘッジファンド(国際投機マネー)によって得たうらやましい昇進など、そういったものすべてを引きずり続けることはできないのです。自分の手元に残すべきものは何なのかを決め、残りは手放す。多くの場合、皆さんの人生における良いことは軽くなっているはずなので、その分余裕ができるでしょう。たったひとつの有害な人間関係が、多くの素晴らしい、シンプルな喜びを凌駕してしまうこともあるのです。皆さんは、皆さんの人生をどう有意義に過ごすのか選択することができます。見極めましょう」
「第二に、思い悩みながら生きることを学ぶことです。どんなに思い悩まないように努力しても、人生を振り返ってみると、そうしてしまっているものです。思い悩むことは、生涯にわたって避けられないことです。“思い悩む”という言葉さえも、いつかは思い悩むのかもしれません」
「今の皆さんはきっと、後々振り返ってみてゾッとするような、滑稽なことをしたり着たりしていることでしょう。それは避けられないことなので、どうか受け入れるようにしてください。例えば、2012年の私は、ずっと1950年代の主婦のような格好をしていました。でもね、あの頃の私はそれを楽しんでいました。トレンドも時代の変化も楽しいですし、それを振り返って笑うのも楽しいものです」
「自分たちを尻込みさせているけれど、本当はそうあるべきではないことについてお話しすると同時に、私は、物事に対する熱意を隠さないことを大切にしているということをお伝えしたいです。私たちの文化では、熱心さに対して“周りを気にしない両面感情”という誤った烙印が押されているように思います。 このような物の見方が、“何かを手に入れたい”と思うことは格好いいことではない、という考えを永続させてしまうのです。 努力しない人の方が、努力する人よりも根本的に“粋”なのだという考えです。私自身、これまでいろいろなことをやってきましたが、“粋”であることのエキスパートになれたことはないので、よくわかりません。 でも、今この場に立っているのは私自身なので、これだけは聞いてもらいたいです。努力することを決して恥じないでください。努力が不要だなんて神話です。高校時代、一番努力しない人は、私がデートしたり友達になりたいと思っていた人たちでした。一番努力していた人は、今、私が自分の会社で一緒に働いている人たちです」
人生における困難は、実は恩恵でもあった
「“ノー”と言われた時、あるいは仲間外れにされた時、選ばれなかった時、勝てなかった時、選抜されなかった時、今振り返ってみると、それらの瞬間は“イエス”と言われた瞬間と同じくらい、いやそれ以上に重要だったような気がします」
「地元でのパーティーやお泊り会に誘われず、絶望的な寂しさを味わいながらも、孤独だからこそ、自分の部屋に座って、どこか別の場所へのチケットを手に入れるために曲を書いていたのです。ナッシュビルのレーベル幹部から、カントリー・ミュージックを聴くのは35歳の主婦だけで、13歳の子供の居場所はないと言われ、帰りの車の中で泣いたこともありました」
「でも、自分の曲をMySpace(そう、マイスペース)に投稿しているうちに、カントリー・ミュージックは好きだけど、自分たちと同じ目線で歌ってくれる人がいないという、当時の私と同じ10代の子たちとメッセージを交わすことができたんです。批評家の方たちが私という人物について深く掘り下げて、時には批判的に書かれる度に、私は何か奇妙な模倣の中に生きているような気持ちになりましたが、同時にそれは、自分が実際に何者であるかを知るために、自分の内面を見つめ直すきっかけにもなりました。10代から20代にかけては、自分の恋愛が観戦スポーツのように扱われていた中で、その試合にことごとく負けたことは、恋愛をする上であまり良いことではありませんでしたが、そこから自分の私生活を徹底的に守ることを学びました。若い頃に何度も何度も公の場で恥をかかされたことは耐え難い苦痛でしたが、そのおかげで、刻々と変化する社会適合性や社会的好感度という馬鹿げた概念を軽んじることを余儀なくされました。ネットで排除され、キャリアを失いかけたことで、あらゆる種類のワインに精通することができました」
テイラー・スウィフトは次にどのアルバムを再録するかはまだ発表していないが、先日、1989年の「This Love」のTaylor’s Versionが、6月17日にAmazon Primeビデオで配信されるティーン向けロマンス映画『The Summer I Turned Pretty』の予告編の中で初披露された。また、今年3月には書き下ろしの新曲「Carolina」が起用された映画『Where the Crawdads Sing』の予告編も公開になっている。
Written By Tatiana Tenreyro
テイラー・スウィフト「This Love (Taylor’s Version)」
2022年5月6日発売
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
テイラー・スウィフト『Red (Taylor’s Version) 』
2021年11月12日発売
CDデラックス盤 / CD通常盤 / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
- テイラー・スウィフト アーティストページ
- テイラー・スウィフト「This Love (Taylor’s Version)」を公開
- テイラーの新曲「Carolina」を使用した映画『Where the Crawdads Sing』予告編公開
- Spotify、2021年で最も再生されたアーティスト/楽曲/アルバムを発表
- テイラー『Red (Taylor’s Version)』が8作目の全英1位でマドンナに次ぐ記録に
- テイラー・スウィフト最新作『Red』再録版でSpotifyの記録更新
- テイラー・スウィフト最新作『Red (Taylor’s Version)』本人による楽曲解説
- テイラー『Red (Taylor’s Version) 』を11月に発売することを発表
- 女性初、3度目のグラミー賞最優秀アルバム賞に輝いたテイラー・スウィフト
- テイラー・スウィフトが「Wildest Dreams」再録版を新作アニメに提供
- テイラー再録版「Love Story (Taylor’s Version)」がオリジナルを凌ぐ勢いで推移中
- 新たな代表作『folklore』がもたらした、テイラー・スウィフトのネクストステージ
- テイラーの20曲:ポップ界を制圧するスーパースター
- テイラー・スウィフト『Red』: かつてないほどポップに近づいた変化過渡期のアルバム