映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』のシクスト・ロドリゲスが81歳で逝去。その功績を辿る

Published on

Rodriguez - Photo: Mark Horton/WireImage

2012年に公開され、アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞に輝いたドキュメンタリー映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』(原題:Searching For Sugar Man)の主人公として晩年になって名声を得た、デトロイト出身のシンガーソングライター、シクスト・ロドリゲス(Sixto Rodriguez)が2023年8月8日に81歳で逝去したことが、彼の公式ウェブサイトとソーシャルメディアを通じて伝えられた。

<関連記事>
映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』で脚光を浴びたロドリゲスの物語
ザ・バンドのメンバー、スコセッシ映画の音楽でも知られるロビー・ロバートソンが逝去

 

その生涯

メキシコから移民した両親のもとデトロイトで生まれたシクスト・ロドリゲスは、晩年有名になる「Sugar Man」や「I Wonder」を収録した『Cold Fact』(1970年)と『Coming to Reality』(1971年)という2作のアルバムをリリース。これらのアルバム発表後、事実上音楽キャリアを終え、代わりに工場作業員として働き始めた彼は、過去に1981年のデトロイト市長選を含む、公職に何度も立候補している。

彼の夢は遂には叶わなかったが、映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』の公開後、彼の人生は勝利の物語として広く知られることになった。

 

映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』

シクスト・ロドリゲスは、ロサンゼルスに拠点を置くサセックス・レコードから、1970年と1971年にそれぞれ2枚のアルバムをリリースしたが、いずれも目立った成績を残すことなく、アメリカではやがて廃盤になった。

その後、かなりの歳月を経てどういうわけか南アフリカへと渡った彼の音楽は、一部の歌詞の反人種差別的なメッセージが反アパルトヘイト運動に湧く人々の共感を呼び、何千ものコピーが海賊盤として流通するほどの人気を博していく。反アパルトヘイト活動家のスティーヴ・ビコもまたその海賊盤を所有していたと言われており、もしもそれが事実であれば、これ以上望めないほどのお墨付きだっただろう。

一方で、ロドリゲスがどこの誰であるのかを知る者はひとりもいない。“ものすごい死に方をした人らしい”という噂が広まる中、数人のファンが真実を確かめようと動き出す。

同映画の監督を務めたスウェーデン人、故マリク・ベンジェルールは、ケープタウンに住む2人のファンがロドリゲス捜索に乗り出し所在を突き止めるまでを記録していく。そうしてロドリゲスが存命で、デトロイトにて携帯電話やインターネットと無縁の生活を送っていることが判明する。ロドリゲスはその後南アフリカへ招かれ盛大なライヴを行い、映画は、その模様を記録した感動的なシーンでクライマックスを迎える。

同映画の公開後、彼の物語はさらなる展開を迎えた。彼はオーケストラと共に米人気TV番組“The Late Show With David Letterman”に出演を果たした他、ニューヨークのビーコン・シアターでの単独公演をはじめ、数々の音楽フェスティバルに出演するなど世界中をツアーで巡った。

Written By Sam Armstrong



Share this story

Don't Miss

{"vars":{"account":"UA-90870517-1"},"triggers":{"trackPageview":{"on":"visible","request":"pageview"}}}
モバイルバージョンを終了