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クイーンなどを手掛けたプロデューサー、ロイ・トーマス・ベイカーが逝去。その功績を辿る
1970年代から80年代にかけて活躍し、クイーンの「Bohemian Rhapsody」を手掛けたことで知られる名プロデューサーのロイ・トーマス・ベイカー(Roy Thomas Baker)が、現地時間4月12日、米アリゾナ州レイクハバスシティの自宅で逝去した。享年78。死因は明らかにされていない。
彼は、クイーンとの仕事に加え、カーズ、ジャーニー、モトリー・クルー、フォリナーといった名だたるバンドと共作する傍ら、その輝かしいキャリアの中で、さまざまなレコーディング・スタジオでプロデューサーやサウンド・エンジニアとしても活躍した。
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その生涯
1946年11月10日、イングランドのハムステッドに生まれたロイ・トーマス・ベイカーは、1963年、ロンドンのデッカ・スタジオで音楽業界でのキャリアをスタートさせた。
彼の初期のキャリアにおいて、とりわけ注目すべきは、フリーの「All Right Now」やT・レックスの「Bang a Gong (Get It On)」といったヒット・シングルでリード・エンジニアを務めたことだ。
クイーンと初めて出会ったのは1970年代で、ロンドンのスタジオ複合施設を見学していた時のことだった。当時まだ駆け出しだったクイーンは、スタジオの音響テストを手伝う代わりに、無料でデモ音源を録音していた。彼は1979年のインタビュー(現在はアーカイブ化)で当時を振り返っている。
クイーンのデビュー・アルバム『Queen』は、当時、より多くの制作経験を積みたいと考えていた彼が空き間を利用して録音した作品で、以降も『Queen II』、『Sheer Heart Attack』、『A Night at the Opera』と立て続けにクイーンのレコーディングを手掛けていくことになる。
2005年のニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、彼は「Bohemian Rhapsody」のレガシーについて次のように語っていた。
「この曲はヒットするだろうと思っていた。でも、まさかあそこまで大きな存在になるとは思っていなかったんだ。30年経ってもまだ語られているなんてね。この曲が時代を超越している最大の理由は、音楽のジャンルにとらわれなかったことだ。何とも競合しない。独自の世界を確立しているんだ」
その後の別のインタビューでも、彼はこの曲がどれほど大きくなるかまでは予想していなかったものの、そこに何か本質的なものがあることは感じていたことを明かしている。
この曲の最終ヴァージョンは、ラウンドハウス、サーム・イースト・スタジオ、スコーピオ・サウンド、ウェセックス・サウンド・スタジオなどでの調整を経て完成された。そのとき、クイーンが何か特別な作品を作り上げたという確信があったという。彼はPerforming Songwriter誌のインタビューの中でこう語っている。
「6分間のこの曲がひとつの作品としてどう聴こえるのか、誰にもわからなかった。でも、コントロールルームの後ろに立っていて、歴史の大きな1ページが今生まれたと感じた。今日は特別な日なんだと、心の奥でわかったんだ」
Written By Sam Armstrong
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