ジャック・ブルースの共作者としてクリームの名曲を手掛けた詩人のピート・ブラウンが逝去
ジャック・ブルース(Jack Bruce)の長年のコラボレーターとして、クリームのヒット曲や数々の名曲の歌詞を手掛けたイギリス出身の作詞家、ミュージシャン、カウンターカルチャー詩人のピート・ブラウン(Pete Brown)が、5月19日、82歳で逝去した。彼は数年前から様々な癌を患っていたという。
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クリームの元メンバーらの追悼コメント
ジャック・ブルースの家族はソーシャルメディアで次のような声明を発表している。
「ジャックの長年の友人であり、共作パートナーだったピート・ブラウンが昨夜亡くなったことを知り、非常に悲しんでいます。ピートの妻シェリダンとピートの子供たち、そしてピートのご家族、友人たちに心からお悔やみ申し上げます。ブルース・ファミリーより愛を込めて」
同じくクリームの元メンバー、ジンジャー・ベイカーの家族も、「ジンジャーの長年の音楽的コラボレーターだったピート・ブラウンに深い哀悼の意を表します」と述べており、近日発売予定のピート・ブラウンの遺作アルバムに参加しているジョー・ボナマッサは、「わが友よ、安らかにお眠りください。最高の歌詞を書く、最もかっこいい男の1人でした。あなたと一緒に曲を書き、仕事ができたことは光栄でした」と追悼を捧げている。
ピート・ブラウンが残した名曲
ピート・ブラウンの歌詞とジャック・ブルースのメロディーは、「I Feel Free」や「White Room」といったクリームの代表曲や、「SWALBR」「Politician」「Deserted Cities Of The Heart」「Doing That Scrapyard Thing』といった忘れがたいアルバム収録曲で輝きを放っている。また、バンドの不朽の人気曲である「Sunshine Of Your Love」には、彼らとエリック・クラプトンがクレジットされている。
ピート・ブラウンは、1968年のクリーム解散後も、ジャック・ブルースのキャリアを通じてコラボレーションを続けていただけでなく、自身の名義でも多くのアルバムを発表し、頻繁にライヴも行っていた。また、1988年の子供向け映画『Felix the Cat: The Movie』を筆頭に、映画の脚本も精力的に手掛けていた彼は、後に自身の映画制作会社も設立。2010年には自叙伝『White Rooms and Imaginary Westerns』を発表し、プロコル・ハルムの14年ぶりにして、最後のスタジオ・アルバム『Novum』では、キース・リードに代わって作詞を担当した。
2017年のアルバム『Novum』リリース時にuDiscoverの取材に応じたピート・ブラウンは、自身の関わり方についてこう語っていた。
「妙な話だけど、私は雇われソングライターというわけではないんだ、そもそもそんなのは私に向いていない。何らかの形でクリエイティブに、あるいは音楽的に興味を持ったプロジェクトに関わる、それが私のやり方なんだ。UFOで行われたプロコル・ハルムの最初のライヴを観に行ったことがあって、実際かなり良かったのを覚えている。あの頃の私たちはお互いのライヴをよく観に行っていたし、シーンで何が起こっているのかに興味を持っていた。ライバル心や嫉妬心もなかったし、誰も誰かを切り捨てようとはしなかったんだ」
その生涯
1940年にサリー州アシュテッドに生まれたピーター・ロナルド・ブラウンは、若干14歳でアメリカの文芸雑誌Evergreen Review誌に詩人としてデビューを果たす。1960年代前半は、イギリスにおけるビート・ジェネレーションに根差したビート・ポエトリーを牽引し、若き日のジョン・マクラフリンをギターに迎えたザ・ファースト・リアル・ポエトリー・バンドでの詩と音楽を融合させたパフォーマンスが、当時結成されたばかりのクリームに注目されるきっかけとなった。
「ジャックとジンジャーは少しばかり競争心は強かったが、他のバンドがやっている音楽も聴きに行っていたよ。特にジャズは、彼らのルーツでもある。音楽的にはとても面白い時代で、開放的且つ変化に富んでいて、非常に興味深い影響が渦巻いていたんだ。当時の私は、ミュージシャンになる前で、主に詩を書いていていたんだけど、競争が激しいシーンでは全くなかった」
ジャック・ブルースとの永続的なコラボレーション
クリームがそのあまりにも短い活動期間を終えた後、彼はピート・ブラウン&ヒズ・バタード・オーナメンツを結成し、1969年に『A Meal You Can Shake Hands With In The Dark』と『Mantlepiece』という最初の2作のアルバムを発表した。
その後も、グラハム・ボンドやヴィヴィアン・スタンシャルといった、当時の最先端を行っていたイギリスの音楽家たちとの共作を含む、無数のアルバム、コラボレーション、マルチメディア・プロジェクトに参加してきたが、そんな中で最も長く続いたのは、ジャック・ブルースとの共作だった。
彼は、亡くなる直前にエリック・クラプトンやジャックの息子でベーシストのマルコムらが参加した最後のソロ・アルバム『Shadow Club』のレコーディング・セッションを終えており、このアルバムは今年10月に発売予定となっている。
この遺作アルバムのレコーディング中に行われたGuardian紙のジャンルカ・トラモンタナとの生前最後のインタビューで、彼は率直にこう語っていた。
「おそらく最後のレコードを完成させようとしているんだ。すごく楽しんでるよ。自分の年齢に嘘はつけない。このアルバムはある意味、今の自分がどこにいて、どこへ行くのかを見極めるための、再評価のような作品になるだろう。一方で、中にはかなり奇妙な道を辿った楽曲もある。音楽的な影響や、自分が知り得たものが、どんな風に自分の中に残っているのかというある種の錯乱のような。それから、猫の歌、犬の歌、トリビュート・ソングのような3曲、そして“Whodunnit”っていう、いかにもイギリスっぽいおどけた曲といったバラエティ豊かな楽曲が収められているよ」
彼が言及する「Whodunnit」では、同じくイギリス出身の独創的なベテラン・ミュージシャン、アーサー・ブラウンがヴォーカルを務めている。
映画界の巨匠マーティン・スコセッシもピート・ブラウンのファンを公言しており、『グッドフェローズ』や『カジノ』などの映画でクリームの楽曲を使用している。言葉の魔術師でありミュージシャンでもあったピート・ブラウンの人生を描いた近日公開予定のドキュメンタリー映画の予告編の中で、マーティン・スコセッシは、「ピートは偉大なソングライターだった。歌詞が頭の中で繰り返される度、そのイメージは私の中に残るんだ」と語っている。
Written By Paul Sexton
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