ポール・マッカートニーが舞台版『素晴らしき哉、人生!』でミュージカル音楽作家デビュー

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ポール・マッカートニーが、今尚愛され続けるフランク・キャプラ監督による1946年の映画『素晴らしき哉、人生!』のミュージカル化に取り組んでいることを発表した。ポール・マッカートニーは、このプロジェクトのために新曲を書き下ろし、劇作家やTV・映画の脚本家として知られこのミュージカルの脚本も手掛けるリー・ホールと歌詞を共作している。さらに、演劇や映画の興行主で、ポールの地元リバプールでの高校の後輩で、長年の友人でもあるビル・ケンライトがプロデューサーを務めている。

ビル・ケンライトがポール・マッカートニーにこのプロジェクトの話を持ちかけたのは、3年ほど前に彼がこの作品の所有権を獲得した時のことだった。『素晴らしき哉、人生!』は、フィリップ・ヴァン・ドーレン・スターンの作品『The Greatest Gift』から着想を得たクリスマス映画の名作で、今尚テレビや劇場で公開され、世代を超えた幅広いファンを魅了し続けている。ビル・ケンライトとポール・マッカートニーの二人は、共にリバプールで生まれ育っただけでなく、現在はポールが設立したリバプール・インスティテュート・フォー・パフォーミングアーツ(LIPA)として知られる、元リバプール・インスティテュート高校に通っていた(ポールが3年先輩)。

「多くの出来事がそうであるように、すべては一通のメールから始まったんです」と、ブロードウェイやミュージカル音楽への愛を、父ジムから受け継いできたポール・マッカートニーは語った。「最初にビルは、僕がこの仕事に興味があるかどうかを訊いてきました。今までミュージカル音楽を書くことにはあまり惹かれたことはなかったんですが、ビルと一緒にリー・ホールに会って、話をしているうちに、面白いかもしれないと思えるようになりました。“素晴らしき哉、人生!”は誰もが共感できる普遍的な物語なんです」。

ビル・ケンライトはこう明かす。「“素晴らしき哉、人生!” でポールと一緒に仕事するという夢を実現することができました。正直言うと、僕はザ・ビートルズの‘I Saw Her Standing There’のデモ音源で出だしの“ワン/ツー/スリー/フォー”のカウントを初めて聴いた時からファンなんです。それからとてつもない歴史が刻まれていくわけですが、過去の全ての楽曲において、ポールのユニークなメロディーと作曲の才能を感じることができました。これはミュージカル劇場でありつつ、マッカートニー劇場でもある。ポールとリーと僕が、原作について話をするとき、いつも“大事にする”っていう言葉を使っているのですが、まさにそれが僕たちがこのプロジェクトでやろうとしていることで、フランク・キャプラ監督の作品を大事にしたいんです」。

「“素晴らしき哉、人生!”は僕の一番好きな映画です」とリー・ホールは語った。「この作品には、喜劇、悲哀、そして生々しい人間愛、すべての要素が詰まっていて、それこそが世代を越えて感動を与え続ける理由なんです。いまだこれに匹敵する作品はない。舞台版として、この作品に命を吹き込むというこの機会は、それだけでも大変光栄なことですが、それをポール・マッカートニーと一緒にできるなんて、とてつもないことです。ポールのウィットに飛んだ、率直な感性とメロディーの輝きがこの古典作品に新たな奥行きと広がりをもたらしてくれることでしょう。まるで天使が味方してくれているような気分です」。

ビル・ケンライトがまだ若きプロデューサーだった頃、彼はフランク・キャプラ監督に、この映画のミュージカル化の権利を直接求めたことがあったが、その当時は直筆の手紙によって断られていたという。それから数十年の歳月を経て、思いがけず今作の所有権をオファーされた彼は、ポール・マッカートニーにこの話を持ちかけた。実際にポールから返事があったのは、最初の打診からまる2年経った時のことだったという。

「それはある金曜日の夜、僕がオフィスで仕事をしていた時のことでした。たくさんの映画や舞台のプロジェクトが滞っていたり、エヴァートンFC(彼が2004年から会長を務めるサッカー・チーム)が前週の試合に負けていたりと、決して良い週だとは言えなかった」と彼は当時を振り返る。

「そんな時、突如ポールがメールで、オープニング楽曲のデモ音源を送ってきて、僕の意見を聞きたいと言うんです。彼はあまりしっくりきていなかったのか、僕とリーがその曲についてどう思うか知りたかった様子でした。そこで僕はそのデモ音源を再生した。リーと僕は満場一致で、僕たちのヒーローはミュージカル音楽作家でもあったと喜んだものです」。

ポール・マッカートニーは昨年リリースした新作『Egypt Station』のツアーやプロモーションの合間を縫って、アメリカとイギリスでこのミュージカルのための数曲をリー・ホールと共作してきた。その後、リー・ホールは二人で共作した6曲以上のデモ音源をニューヨークから持ち帰った。

「それは僕たちの想像を超える出来でした」とビル・ケンライトは語る。「その音楽は僕たちを思いもよらぬ場所へと連れて行ってくれるんです。とてもシンプルなんですが、出し抜かれるような。それこそがポールの才能なんです。彼がどんなに素晴らしいかなんて語る必要もなく、ただただ彼の音楽に息を呑んでしまう。そしてリー・ホールは、2007年に戯曲『鉱夫画家たち』で初めて一緒に仕事をしてから、僕にとってはずっと特別な作家であり、人物なんです。だからこそ、このプロジェクトでポールとリーが活き活きと共作している様子を見ることができるのは何よりの特権でした」。

ポール・マッカートニーは、7月13日(土)にロサンゼルスのドジャー・スタジアムで、<Freshen Up Tour>の全米公演日程を終え、ミュージカル劇場デビューに向けて、作品の仕上げ作業に入っている。ミュージカル版『素晴らしき哉、人生!』は2020年後半に初演を迎える予定だ。

Written by Paul Sexton



ポール・マッカートニー『Egypt Station』
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