トミー・ナッター、ビートルズやエルトン・ジョンを魅了した男

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ランス・リチャードソンによる新著『House Of Nutter: The Rebel Tailor Of Savile Row』はザ・ビートルズやエルトン・ジョン、ミック・ジャガーなど、漂流の60年代と煌びやかな70年代を象徴する数えきれないスター達のスーツを手掛けた、トミー・ナッターについての著書である。

オーストラリアに生まれ、ニューヨークを拠点に活動するランス・リチャードソンが執筆し、チャットー・アンド・ウィンダス社によって出版された本著では、トミー・ナッターの弟で、ロック・フォトグラファーのデヴィッドへの幾度にも渡る取材をもとに、トミー・ナッターがどのようにして名声を築き上げていったかについて書かれている。

トミー・ナッターの手掛けた作品でおそらく一番有名なものは、あの『Abbey Road』のアルバム・ジャケットでジョージ・ハリスン以外の3人が着ていたスーツであろう。この仕事がきっかけとなり、後にリンゴ・スターの口添えによって、ミック・ジャガーやエルトン・ジョン、エリック・クラプトンからアンディ・ウォーホール、ヴィダル・サスーンに至るまで、様々な著名人の衣装を手掛けることになる。1971年のミック・ジャガーと元妻・ビアンカとの結婚式で二人が着ていた衣装もナッターによるものである。

本著のプレスリリースによると、1969年、26歳のトミー・ナッターはオーダーメイド店が軒を連ねていたロンドンのサヴィル・ロウに一風変わったブティックを開店した。変化を好まない名門高級店街には衝撃が走ったものの、“サヴィル・ロウのナッター”は、『Abbey Road』のアルバム・ジャケットによって彼のデザインを不朽のものにしたザ・ビートルズやビアンカ・ジャガーはじめ、若く、裕福で、魅力的な若者たちの間で瞬く間に支持されていった。

サヴィル・ロウでの彼の事業は、歌手のシラ・ブラックと彼女の夫、ボビー・ウィリス、そしてザ・ビートルズの会社「アップル」の取締役社長、ピーター・ブラウンが経済的に支援していた。プレスリリースはこう続く、一方で弟・デヴィッドは、写真家としての才能を開花させ、大西洋を越えてニューヨークへ渡り、彼のドライな機知と作品を気に入ったオノ・ヨーコやエルトン・ジョンなどの沢山のスターたちに出会った。

また本著によると、トミー・ナッターは、1984年に開かれたエルトン・ジョンと前妻・レネーテ・ブリューエルとの結婚式のために、様々な原色に包まれた衣装を、万が一に備えてそれぞれ2着ずつ、全部で20着もの艶やかな衣装を用意したという。後に、エルトン・ジョンは「トミー・ナッターがサヴィル・ロウを魅力的に変え、人々を惹き寄せたんだ」と語っている。

本著での、あの時代のイギリス階級制度の中で、北ロンドンの質素な家庭に育った2人のゲイ男性 がいかに成功を手にしていくかという、伝記としての描写はすでに高く評価されている。「Our Young Man and A Boy’s Own Story」の作者として知られるエドマンド・ホワイトは、「生意気で、気取った同性愛者のトミー・ナッターが飛んで火に入る夏の虫のように描かれていた。ランス・リチャードソンは細やかな描写と哀愁によって、トミー・ナッターの名声と魅力的なストーリーを復元したのだ」と述べている。

彼の長年の友人、アンドリュー・ロイド・ウェバーは「彼が若くて、流行の最先端を行ってた頃は、僕に沢山の服を作ってくれたんだ。アスコット競馬場に着て行った栗色のコートは素晴らしかったよ。本当に楽しい人で、『ジーザス・クライスト・スーパースター』の仕事をしていたあの頃の僕にとっては大きな存在だった。ティム・ライスにもよく服を作ってたね。僕らはすごくいい仲間だったんだ」と振り返る。

『House Of Nutter: The Rebel Tailor Of Savile Row』の詳細はこちら

Written By Paul Sexton



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