ナッシュヴィルのRCAスタジオAがバック・トゥ・ザ・フューチャー
ドリー・パートン、ウィリー・ネルソン、クリス・ステイプルトンやケイシー・マスグレイヴス、それからカントリー・アーティスト以外、例えばエルヴィス・プレスリー、ザ・ビーチ・ボーイズやザ・モンキーズ等、数多くの人達のセッションを受け入れてきた、ナッシュヴィルにあるRCAスタジオAが、1960年代全盛期を呼び戻すべく、模様替えを行なう。
ザ・テネシアン紙の報告によると、現在も営業中で、近年ではケイシー・マスグレイヴスやミランダ・ランバート等のレコーディングを行なっているこのスタジオが、$500,000の費用を掛けてリフォームを行なうそうだ。スタジオ・スペース自体が変わることはないものの、オフィスやより小さなスタジオを含む一部分が、アーティストであり幹部であったチェット・アトキンスとプロデューサーのオウエン・ブラッドリーによって、1965年にオープンされた当時の姿に復元される。
2014年に開発業者が土地を買収し、そこにコンドミニアムを建設する計画が立てられたが、文字通り取り壊される土壇場で難を逃れている。アーティストのベン・フォールズを中心とする救済者により、スタジオは14年間営業し続けた。彼は昨年、プロデューサー・イン・レジデンスとなったナッシュヴィルの売れっ子プロデューサー、デイヴ・コブにその座を譲った。コブはジェイソン・イズベル、ア・サウザンド・ホーセズとクリス・ステイプルトン等アーティストの作品を手掛けたことで知られ、クリス・ステイプルトンの大ヒット作『Traveller』はここで制作されている。
「チェットとオウエンがここを建設し、ここで働いていた当時、思い描いていた環境に敬意を表したいんだ」と建物の共同経営者オーブリー・プレストンが新聞取材に答える。彼は仲間である慈善家チャック・エルカンとカーブ・レコード創設者マイク・カーブと共に土地買収に参加。「この建物はナッシュヴィルで右に出るものはないくらいの歴史を誇っている。そして我々の目標はこの内部を破壊するのではなく、チェットが働いていた当時の姿に戻るよう、マイナー・チェンジをすることなんだ」とプレストンは付け足す。
改修により、RCAビクターのサインのレプリカが建物正面に置かれると共に、アトキンスのオリジナル・オフィス(現在はプレストンのオフィスとして使用)に作り変えられ、エントランスには1960年代末風の人工大理石の床が導入される。
ザ・テネシアン紙は、スタジオAをそのオープニングに際して、世界で最も技術的に優れたスタジオと表現する。初期にはカントリー・スターのウェイロン・ジェニングスやエディ・アーノルドや、ペリー・コモやマキシン・ブラウン等ナッシュヴィル以外のアーティストのセッションも行なった。
アトキンスの名高い“ナッシュヴィル・サウンド”が誕生し、その後ウィリー・ネルソン、ウェイロン・ジェニングス、その妻ジェシー・コルターとトンポール・グラサーの1976年アルバム『Wanted! The Outlaws』を通して、アウトロー・カントリー・スタイルが産声を上げたのもこの場所だ。エルヴィス・プレスリーの「Don’t Cry Daddy」や「The Wonder of You」といったトラックのオーヴァーダブが行われたのもこのスタジオAであり、その他にもヴィンス・ギル、ロニー・ミルサップ、オーク・リッジ・ボーイズ、レディ・アンテベラム等、ここで仕事をしたカントリー・スターは数多い。