プライマル・スクリーム/フェルトのキーボーディスト、マーティン・ダフィーが55歳で逝去
プライマル・スクリーム(Primal Scream)やフェルト(Felt)のキーボードを担当したマーティン・ダフィー(Martin Duffy)が2022年12月18日に55歳で亡くなった。
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フェルトでの活躍
マーティン・ダフィーは1967年5月18日に英バーミンガムで生まれ、バーミンガムの南西端レッドナルで育った。パンクロックやツートーン、ザ・ビートルズ、レッド・ツェッペリンなどを聴いていたマーティンはヴァージン・レコードのバーミンガム支店に「ロックンロールスターになりたいか?」というバンドメンバー募集の張り紙を彼の友人が見たことがきっかけとなり、1985年にインディー・バンド、フェルトに加入した。
フェルトは1986年の『The Seventeenth Century』(旧タイトル: Let the Snakes Crinkle Their Heads to Death)でクリエイション・レコードと契約し、ファンにとっては彼らの黄金期といえる時期に突入する。1988年のアルバム『The Pictorial Jackson Review』には、12分を超える大作「Sending Lady Load」を含むマーティンのインストゥルメンタル曲が2曲収録されている。
一時期マーティンが参加していたザ・シャーラタンズのティム・バージェスは以前、マーティンについて「実は今まで会った中で唯一の音楽の天才だった」という証拠としてこのアルバムを挙げ、「僕と(マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの)ケヴィン・シールズは一晩中、口を開けて彼の天性の才能を賞賛していたよ」とThe Quietusに語っている。
マーティン・ダフィーは1989年の解散までフェルトのメンバーであり続け、フロントマンのローレンスは10年間で10枚のシングルと10枚のアルバムをリリースするという目標を達成したと語っている。
プライマル・スクリームへの加入
マーティンはプライマル・スクリームの最初の2枚のアルバム、1987年の『Sonic Flower Groove』と1989年の『Primal Scream』にゲストプレイヤーとして参加した後にバンドの正式メンバーとして活動していた。Mojo誌のティム・トゥーハーはマーティンのことを次のように評している。
「おそらくバンドの中で最も純粋なミュージシャンで、セロニアス・モンク、ジョニー・ジョンソン、ジェリー・リー・ルイス、セシル・テイラーの響きをバンドに持ち込んでいる。彼のサウンドは、まるで生まれる前からウィスキーに漬けていたような音だ。マーティンはプライマル・スクリームにブルースを持ち込んだんだ」
プライマル・スクリームの現時点での最新スタジオ・アルバム『Chaosmosis』は2016年にリリースされ、マーティンはバンドのフロントマン、ボビー・ギレスピーの2021年のコラボレーション・アルバム『Utopian Ashes』でも演奏している。
ザ・シャーラタンズ、ティム・バージェスとの絆
マーティン・ダフィーはザ・シャーラタンズの創設メンバーでキーボーディストのロブ・コリンズが事故で亡くなった後、1996年8月にネブワースでオアシスのサポートアクトをした際に、亡きロブの代役としてステージで演奏し、翌年に発売された1997年のアルバム『Tellin’ Stories』にも参加している。
また、マーティンはプレイヤーとしてベス・オートン、スティーヴ・メイソン、ポップ・グループのマーク・スチュワート、ケミカル・ブラザーズ、ポール・ウェラー、ヴィック・ゴダードとサブウェイ・セクト、ジェシー・バックリーといった多くのアーティストたちとコラボレーションし、2018年の映画『ワイルド・ローズ』のサウンドトラックに参加している。
マーティンは2014年にティム・バージェスのレーベルO Genesisから、1997年までの楽曲を収録したソロ・アルバム『Assorted Promenades』をリリース。このアルバムは、マーティンとティムが道端で車が燃えているのを目撃したことがきっかけだったとマーティンは語っている。2人はちょうどジョン・フォックスの曲「Burning Car」を聴いていたところで、マーティンは「ティムはそれを“サイン”だと思った」とも述べている。
ティム・バージェスはツイッターでマーティン・ダフィーに追悼を捧げている。
「美しい魂のもうひとつの悲劇的な喪失。マーティン・ダフィーはロブを失った時にザ・シャーラタンズを救ってくれた。彼はネブワースで一緒に演奏したし、真の友人でもあった。彼は俺のソロ・バンドで一緒にツアーもしたし、一緒に過ごすのが楽しみだった。ダフィー、良い旅を」
Written By Tim Peacock
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