人気YouTubeチャンネル“SBTV”の創設者ジャマル・エドワーズが31歳で急逝。その功績を辿る
人気音楽YouTubeチャンネル“SBTV”の創設者として知られるジャマル・エドワーズ(Jamal Edwards)が、2022年2月20日、31歳で急逝。この訃報は下記声明と共に、彼の母ブレンダ・エドワーズによって伝えられた。
「ジャマールは私自身に、そして多くの人々にインスピレーションを与えてくれました。私たちの彼への愛と彼のレガシーはこれからも生き続けます。MBE、MBA、PHD取得者であるジャマール・エドワーズに万歳」
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2006年、ジャマル・エドワーズは、友人たちによるラップやパフォーマンス映像をアップロードするためのYouTubeチャンネル“SBTV”を開設、やがて現代の著名アーティストたちのキャリアを後押しする新たな音楽発掘の場へと発展していった。
“SBTV”は、ジェシー・J、エド・シーラン、ストームジー、スケプタ、デイヴ、AJトレーシー、クレプト&コナン、レディ・レイーシャ、ナインズ、バグジー・マローンといった若手ミュージシャンを輩出し、グライム(UKガラージ、2ステップなどのハウス系クラブミュージックに、ラップやレゲエの要素を加えた音楽ジャンル)をメインストリームへと押し上げる上で、極めて重要な役割を果たした。
“SBTV”のローンチから約10年後となる2015年、ジャマル・エドワーズは音楽業界における功績と影響が称えられ、“新年の叙勲 / New Year Honours list”に名を連ね、大英帝国勲章(MBE)を授与されている他、2014年には、TIME誌による“Next Generation Leaders / 次世代のリーダーたち”のひとりに選出され、その前年にはチャールズ皇太子によって設立されたザ・プリンスズ・トラストのアンバサダーにも任命されている。
ジャマル・エドワーズは、“SBTV”の他にも、新進気鋭のアーティストたちを支援するためのアプリ“8BARS”も手掛けており、同アプリでは、アーティストがラップや歌、プロデュースなどのスキルを披露するための専用トラックをフィーチャーし、ユーザーが自分たちのお気に入りの楽曲に投票するイベントを毎週開催していた。
また彼は、2019年にCapo Leeの「Style And Swag」をリミックスしたチェルシーFCのテーマ曲の映像を手掛け、昨年はノッティンガム出身のシンガーソングライター、ジェイク・バグの初期の人生とキャリアを掘り下げる新たなドキュメンタリー・シリーズを制作。同年12月にはエド・シーランのヒット曲「Bad Habits」のリミックスやエド・シーランを ゲストに迎えたファイヤーボーイDML「Peru」のミュージック・ビデオを手掛けるなど映像作家としても活動していた。
音楽以外の分野では、2019年にトップマンと帽子コレクションでコラボレーションし、高級ブランドのエルメスやカートジェイガー、プリマークのモデルも務めるなどファッション業界でも活躍し、2013年には自身の成功の秘訣を綴った電子書籍『Self Belief: The Vision: How To Be A Success On Your Own Terms』を執筆・出版している。
2019年には、自身が育ったアクトンある4つのユースセンターを改修し、再開する草の根プロジェクト“Jamal Edwards Delve (JED)”を設立。彼は、当時のBBCの取材に、若者たちが情熱を見出すためにこの場所が必要なのだと主張し、こう語っていた。
「ユースセンターが閉鎖されてしまったのは、若者たちが問題を起こしたからというのは明らかですが、私は彼らをより良い人生へと導いてあげたいと考えています」
彼はまた、男性の自殺に関するドキュメンタリー作品を英ガーディアン紙と共同制作した他、メンタルヘルスに関わる慈善団体“CALM”と協力するなどメンタルヘルス問題への意識向上のための活動も行っていた。
Written By Rhian Daly
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