『ツイン・ピークス』等のリンチ作品のサントラを手掛けたアンジェロ・バダラメンティが逝去
グラミー受賞歴を誇るニューヨーク出身の作曲家、アンジェロ・バダラメンティ(Angelo Badalamenti)が 2022年12月11日に85歳で逝去した。
55年以上のレコーディング・キャリアを持つ彼は、『マルホランド・ドライブ』、『ストレイト・ストーリー』、『ブルーベルベット』、『ツイン・ピークス』など、デヴィッド・リンチ作品のサウンドトラックでよく知られている。
彼の家族は次のような声明を発表している。
「デヴィッド・リンチ監督との仕事(『ツイン・ピークス』、『マルホランド・ドライブ』、『ブルーベルベット』)で知られる作曲家のアンジェロ・バダラメンティの家族は、愛する夫、父親、祖父である彼が、2022年12月11日に家族に見守られながら自然死で安らかに逝去したことをお伝えします。今は家族のプライバシーにご配慮いただけるようお願いいたします」
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そのキャリア
映画ファンや音楽仲間たちから敬愛されていたアンジェロ・バダラメンティは、1990年に「Twin Peaks Theme(ツイン・ピークスのテーマ)」でグラミー賞の最優秀ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞を受賞。
また、2008年にはワールド・サウンドトラック・アワード協会から特別功労賞を、2011年には米国作曲家作詞家出版者協会(ASCAP)のヘンリー・マンシーニ賞を授与されている。
1990年代のポップス・ファンにとっては、長年活動する英国バンド、ジェイムスのフロントマンであるティム・ブースとのコラボ・プロジェクト“Booth and the Bad Angel”も懐かしく思い出されるだろう。1995年にリリースされたアルバム『Booth and The Bad Angel』では、ギターにバーナード・バトラーを迎え、シングル「I Believe」が全英TOP30を記録。アンジェロ・バダラメンティの訃報を受け、ティム・ブースはこう追悼を捧げている。
「今夜は、私の美しい友人であるバッド・エンジェルことアンジェロ・バダラメンティに献杯します。彼は私に多くのことを教えてくれましたが、とりわけレコーディングをいかに楽しむかを彼から学びました。彼とのレコード制作は最初から最後まで笑いに満ちていて、意見の食い違いは一度もありませんでした。彼のことが大好きでした」
その生涯
1937年3月22日にニューヨークで生まれたアンジェロ・バダラメンティは、若くしてピアノの才能を発揮し、1962年には最初期の作品を録音している。
作曲家としては、Andy BadaleまたはAndy Balaele名義で、ジャズピアニストのウィントン・ケリーが1964年のヴァーヴから発表したアルバム『It’s All Right!』に収録の「Escapade」や、ニーナ・シモンの1967年の名盤『High Priestess of Soul』に「I Hold No Grudge」と「He Ain’t Comin’ Home No More」の2曲を提供している他、ナンシー・ウィルソン、ディー・ディー・ワーウィック、シャーリー・バッシー、デラ・リース、メルバ・ムーアなど、多くのアーティストが彼の楽曲をレコーディングしている。
彼が手掛けた最初のフルサウンドトラックは1973年の映画『ゴードンの戦い』だったが、デヴィッド・リンチと初めてタッグを組んだ1986年の『ブルーベルベット』は、その謎めいた映画の雰囲気を見事に盛り上げるサウンドトラックで一躍大きな注目を集めた。
その後も、数多くのデヴィッド・リンチ作品を手掛けていったが、とりわけ有名なのはグラミー賞を受賞した『ツイン・ピークス』をはじめ、『ワイルド・アット・ハート』『ロスト・ハイウェイ』、そして前述の『ストレイト・ストーリー』や『マルホランド・ドライブ』などだろう。
アンジェロ・バダラメンティのその他の話題作には、『ホーリー・スモーク』『ザ・ビーチ』(オービタルと収録曲「Beached」に参加)、2006年の『ウィッカーマン』のリメイクなどがあり、生前最後の作品は、メインテーマを担当した2018年の『トゥ・ヘル』だった。
Written By Paul Sexton
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