フランク・ザッパ『Apostrophe (’)』50周年盤:ザッパ最大の“ヒット・アルバム”

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全米10位の大成功を収め、ゴールド・ディスクにも認定されたフランク・ザッパ最大の“ヒット・アルバム”である『Apostrophe (’)』50周年盤が、2024年9月13日に発売されることが決定した。

5CD+Blu-ray Audio、52ページの英文ブックレットで構成されるこのボックス・セットには二公演分の未発表ライヴ音源を含む全75トラックが収録。あわせてアナログ・レコードでも発売となる。このアルバムの公式プレスリリースを掲載。

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ザッパ史上もっとも大きな成功を収めたアルバム

1974年を迎えたころのフランク・ザッパは絶好調だった。1973年9月にはザ・マザーズ・オブ・インヴェンションのラインナップを刷新したことから生まれた大傑作『Over-Nite Sensation』をリリース。同作は熱心なファンからも新規のリスナーからも、いまなお拡大し続けるザッパの世界への入門編に最適なアルバムとみなされている。

その『Over-Nite Sensation』の作風はまた、ザッパが1974年3月にソロ名義で発表した次作『Apostrophe (‘)』へと直接繋がるものだった。そして『Apostrophe (‘)』は、ザッパ史上(現在までに)もっとも大きな成功を収めたアルバムとなった――ここでいう”成功”とは、”もっぱら商業的(strictly commercial)”な意味である――。

『Apostrophe (‘)』はザッパのアルバムとして初めてアメリカでゴールド・ディスクに認定され、最終的には全米アルバムチャート(Billboard 200)で10位まで達した。さらに、どこまでも先進的で、何年経ってもキャッチーなシングル「Don’t Eat The Yellow Snow」も全米シングルチャート(Billboard hot 100)を賑わせ、順当に87位をマークした。

それだけでなく『Apostrophe (‘)』は、宗教指導者を騙るペテン師や偽の超能力者などを厳しく糾弾した「Cosmik Debris」、現在まで続く人種的不平等を描いた「Uncle Remus」、終わりのない“臭いの恐怖”を表現した「Stink-Foot」などの人気曲も収録。それらの楽曲も、一般大衆の意識(と潜在意識)の中にザッパの存在をしっかりと刷り込んだのだった。『Apostrophe (‘)』は発表から50年が経った現在も、ザッパ史上屈指のベストセラー作品というだけでなく、その膨大なカタログの中でも屈指の人気作であり続けている。

 

50周年盤の中身

そんな『Apostrophe (‘)』の50周年を適切な形で祝うべく、50周年記念の拡張版が9月13日にザッパ・レコーズ/UMeより複数のフォーマットで発売される。中でも6枚組(5CD+Blu-ray Audio)のスーパー・デラックス・エディションには、計75ものトラックが収録される。

“Apostrophe (’): 50th Anniversary Edition”と題された今回の拡張版のプロデューサーを務めたのは、アーメット・ザッパとジョー・トラヴァース(ザッパ家のテープ倉庫管理人)だ。この拡張版には、バーニー・グランドマンが手がけたアルバム本編の2024年リマスター版のほか、テープ倉庫から発掘されたレコーディングのアウトテイク、収録曲の別テイク、さらにはクレイグ・パーカー・アダムスがリミックスと修復を、ジョン・ポリートがリマスターを担当した2024年版ミックスなどを併録。

また、本パッケージには1974年に行われた二つの歴史的な公演――コロラド州コロラド・スプリングス(会場は不明)公演と、1974年11月20日にオハイオ州デイトンのハラ・アリーナで行われた公演――のライヴ音源も収められる。なお、収録トラックのうち7トラックは、すでに廃盤となっている2016年作『The Crux Of The Biscuit』(アルバムの40周年記念作品)で日の目を見ていたものである。

ブルーレイ・オーディオには、カーマ・オーガーとエリック・ゴーベルがスタジオ1LAで新たに製作したアルバム本編のドルビー・アトモス・ミックスとサラウンド・ミックスも収録。この二人は、『Waka/Wazoo』(2022年)と『Over-Nite Sensation』の50周年記念版(2023年)でもドルビーアトモス/サラウンドの各ミックスを手がけて高い評価を得ている。このブルーレイではさらに、ザッパ本人の手によるオリジナルの4チャンネル・ステレオ・ミックス(これが収録されるのは1974年以来初めて)や、192kHz/24-bitおよび96kHz/24-bitのハイレゾ・ステレオ(2024年の最新リマスター)でも『Apostrophe (‘)』を聴くことができる。

そして豪華なボックス・セット仕様のスーパー・デラックス・エディションには、52ページのブックレットも付属。その中にはサム・エマーソン(アルバム・ジャケットに使用され、現在ではよく知られるザッパのクローズアップ写真を手がけた人物)が撮影した未公開写真の数々に加え、英国の有名ジャーナリストであるサイモン・プレンティスと、(いつも通り)テープ倉庫管理人のトラヴァースが執筆したライナーノーツや書き下ろしエッセイも掲載される。

本日から世界中のファンに向けて、未発表トラックである「Uncle Remus (Piano and Vocal Mix 2024)」が配信される。このヴァージョンは、オリジナルの16トラック・マスターから新たにミキシングされたもの。ジョージ・デュークの弾くピアノとタック・ピアノのみをバック・トラックから切り出しつつ、ザッパとアイケッツの面々によるヴォーカルのマスター・トラックにも光を当てている。「Uncle Remus」はザッパとデュークが共作した名曲だが、このスーパー・デラックス・エディションには、これ以外にも同曲の複数のヴァージョンが収められている。

 

アナログ盤

今回のリリースでは、スーパー・デラックス・エディション以外に二種類のアナログ盤も発売される。その一つが、2LP+7インチ・シングルのセットである。2枚のLPはいずれも高音質の180グラム重量盤で、”イエロー・スノウ・スプラッター”を施したホワイト・ヴァイナル仕様となっている。そのカッティングは、2024年にバーニー・グランドマン(バーニー・グランドマン・マスタリング)がオリジナル・アナログ・テープを基に行った。

また、「Don’t Eat The Yellow Snow」の7インチ・シングルは1974年発表のオリジナル・シングルを再現したものだが、今回は暗闇で光るイエロー・スプラッター・ヴァイナル仕様に仕上げられている。そしてもう一方の1LPエディションでは、ゴールド・ナゲット・ヴァイナル仕様の高音質180グラム盤に、アルバム本編の9トラックが収録される。

それに加えて、スーパー・デラックス・エディションはデジタル媒体でも発売され、全75トラックが96kHz/24-bitのハイレゾ音質と44.1kHz/16-bitの標準音質の両方で入手できる。また、アルバム本編の9トラックのみのドルビー・アトモス・ミックスも、主要なハイレゾ・ストリーミング・サービスで別途配信される予定だ。

 

アルバムタイトルのテーマとは?

そもそも、アルバムのタイトル及びコンセプトとしての”Apostrophe”の名前は、テープ倉庫に保管されていた2インチ/16トラックの数本のマスター・テープで最初に使用されたと考えられる。これらはおそらく1971年にザッパが制作した”ビルド・リール”であり、その中には1969年の『Hot Rats』のセッションや1970年のレコード・プラントでのセッションの成果、1971年のフィルモア・イーストでのライヴ音源など、様々な場面で録音されたマルチトラック・マスターが収められていた。だが、それがすべて小文字で記号付きの『Apostrophe (‘)』として正式なアルバム・タイトルとなったのは1974年初頭のことだ。

そのころになって、カリフォルニア州イングルウッドにあるボリック・スタジオで録音された直近のスタジオ音源が、1970年から1972年にかけて制作された古い音源と一緒に纏められたのである。そののち2月7日には『Apostrophe (‘)』のマスター・テープがレコード会社に提出され、続いてアーティザン・サウンド・レコーダーズでアセテート盤の製作とマスタリングが行われた。そうして、アルバムのリリース日を3月22日とすることが正式決定されたのである。

 

収録されるライヴ音源

スーパー・デラックス・エディションのディスク2〜5にはボーナスとして、1974年の初めごろと終わりごろに行われた2公演分のライヴ音源を収録。これら音源の選定理由についてトラヴァースは、”1974年に行われた一連のライヴを通してザッパが何を成し遂げたのかを示すこと”が目的だと説明している。そのうち3月のライヴ音源については、リリースに耐え得る音質で、なおかつその時期特有の演奏をすべて含んだ公演を見つけることが難しかったようだ。

だがコロラド・スプリングス公演(正確な会場は判明していないが、ザッパが3月21日に行ったシヴィック・オーディトリアムでのパフォーマンスだと考えられている)のテープは、当時のレパートリーの素晴らしいパフォーマンスが多く収められていた上、それなりの音質だったという(なお、テープ・リールの切り替えに伴う音の途切れは、マザーズが3月18日にユタ州ソルト・レイク・シティで行った公演のテープで補完されている)。

1974年のツアー活動中、ザッパは多くの楽曲を作曲したり、手直ししたりしていた。実際、「Is There Anything Good Inside Of You?」(別名「Andy」)や「Florentine Pogen」はこの時期の新曲である。また、「Babbette」は滅多に演奏されることのない楽曲だったが、このコロラド公演では「Approximate」(同曲もまだ十分に新しかった)に見事な形で繋げられている。そしてもちろん、「Inca Roads」のアレンジは常に変化し続けていた。

ザッパはこの時期も通常通り、すべての公演の模様を1/2インチ/4トラックのテープ・マシンで録音していた。それらのテープの音質は理想的といえるものではなかったが、これらの公演は、ほかのツアーでは披露されなかった楽曲のアレンジを含んでいるという点で歴史的に重要なのだ。

他方、ディスク4と5に入っている11月20日のオハイオ州デイトン公演に関しては、今回のパッケージに収録すべき理由がいくつもあった。まず、全編を通して右チャンネルに断続的な音の歪みがあったものの、テープの音質が非常に良かった。

また、バンドのラインナップは1974年のあいだに何度も変化し、同年の後半には以下の6人編成となっていた。

・フランク・ザッパ
・ジョージ・デューク(キーボード/ヴォーカル)
・ナポレオン・マーフィー・ブロック(サックス/フルート/ヴォーカル)
・トム・ファウラー(ベース)
・チェスター・トンプソン(ドラム)
・ルース・アンダーウッド(パーカッション)

このグループのメンバーは長きに亘ってファンに愛されており、現在ではザッパ史上もっとも優れ、もっとも人気のあるバンドと広く認められている。そのメンバーのほとんどは、(常にではないにせよ)この時点でザッパと約2年間の活動を経験しており、練習を十分に重ねていたのだ。グループの中では素晴らしい化学反応が起こり、そこからは特別なサウンドが生まれた。そしてザッパは唯一無二のギタリストとして、メンバーたちを率いていたのである。

11月のデイトン公演を迎えたころ、同年のツアー日程は1週間半ほどを残すばかりだった。このデイトン公演は、素晴らしい才能を持ったミュージシャンたちの現存する最後のライヴ・ドキュメントだ。彼らの腕前は、「Penguin In Bondage」、「Dinah-Moe Humm」、「Pygmy Twylyte」などの楽曲の卓越した演奏からも明らかである。このライヴはまた、ザッパのキャリアの中でもとりわけ大きな成功を収めた時代の終焉を告げたイベントでもあるのだ。

 

重要なアルバム

重要なのは、『Apostrophe (‘)』が前作に続いてフランク・ザッパの名を世間に広めたということだ。ずる賢い大企業はスタジオにこもる彼の様子を常に窺っていたように思えるが、70年代中盤を迎えたころのザッパは、そうした企業の気まぐれや策略にいっそう無関心になっていたのである。

『Apostrophe (‘)』のスーパー・デラックス・エディションは、ザッパ史上屈指の名作の50周年を祝う上で申し分ないパッケージである。そこには、”ザッパが監修したお食事やダンスを楽しむための音楽に乗せ、きちんと届けられる歌や物語”がふんだんに収められているのだ。

また、7月19日には『Frank Zappa For President』のアナログ盤が、4月のレコード・ストア・デイ限定盤(赤・白・青のスプラッター・ヴァイナル仕様)に続き、史上初めて一般発売される。もともと2016年に発表されたこの編集盤は、ザッパの政治的な側面に焦点を当て、彼の政界進出への野心(彼は1991年に大統領選への出馬を模索していた)を示した一作。シンクラヴィアで制作された未発表曲や、テープ倉庫から発掘された関連トラックなど、政治性を含んだ楽曲群を纏めたアルバムである。

今回リリースされる2LPは180グラムのブラック・ヴァイナル仕様で、2枚のディスクの各面のうち3つの面には音楽が記録され、4つめの面にはシルク・スクリーンによるザッパの肖像がプリントされる。このほかにも”ミステリー・ヴァイナル・エディション”のアナログ盤が、Zappa.com、uDiscover Music、Sound of Vinylのみで限定販売される予定だ。こちらは全世界で3,000セット限定となり、購入したファンのもとにはレッド・ヴァイナル、ホワイト・ヴァイナル、ブルー・ヴァイナル(各1,000セット限定)のいずれかの2枚組がランダムに届けられる。ご予約、そして、民主主義への参加と選挙への投票をお忘れなく。

Written By uDiscover Team


フランク・ザッパ『Apostrophe (’)』50周年記念盤
2024年9月13日発売
5CD+Blu-ray Audio / Tシャツ / アナログ



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