ジャズ・トランペッター、教育者、活動家のエディ・ゲイルが78歳で逝去。その半生を辿る
2020年7月10日、ジャズ・トランペッターでバンドリーダー、教育者、活動家として高く評価されたエディ・ゲイル(Eddie Gale)が、長年暮らしていたカリフォルニア州サンノゼで、癌との闘病生活の末、78歳で逝去した。
ニューヨーク州ブルックリン生まれのエディ・ゲイルは、ジョン・コルトレーン、ブッカー・アーヴィン、ジャッキー・マクリーン、イリノイ・ジャケーなどの偉大なミュージシャンたちと共演を果たしながらサイドマンとしてのキャリアをスタートさせ、セシル・テイラー、ラリー・ヤング、エルヴィン・ジョーンズ、そしておそらく特筆すべきはサン・ラ(Sun Ra)とのレコーディング作品によってトランペッターとして高い評価を獲得していった。
60年代から70年代にかけて、エディ・ゲイルは、革新的アーティストであるサン・ラ率いるサン・ラ・アーケストラ(Sun Ra Arkestra)の一員として、大規模なツアーやレコーディングに参加した。
サイドマンとしては、キーボード奏者のラリー・ヤングの1966年のソウル・ジャズ作品『Of Love and Peace』や、サン・ラの1978年のファンキー・フュージョン作品『Lanquidity』などに参加している他、セシル・テイラーの1966年のフリー・ジャズ・アルバム『Unit Structures』(ブルーノート作品)においても欠かせない存在であり、後に19973年にスミソニアン協会からリリースされたジャズの名曲を集めた6枚組のLPボックス・セット『Smithsonian Collection of Classic Jazz』にも収録された「Enter, Evening」では、フィーチャリング・プレイヤーとして歴史的レコーディングにその名を刻んでいる。
また、エディ・ゲイルは、1968年の『Ghetto Music』と1969年の『Black Rhythm Happening』(いずれもブルーノートから)という優れたリーダー作品も残している。これら2作のアルバムは、ゴスペルやブルースの要素と、当時人気を集めたソウルやフリージャズを融合させたサウンドに、音楽活動家としての彼の思想が反映された社会的メッセージを持った作品となっている。その後も、NYの老舗コミュニティ紙“ヴィレッジ・ヴォイス”によって年間最優秀ジャズ・アルバムの一つに選ばれた1992年の『A Minute With Miles』を含む、数枚のアルバムをリリースした。
彼はジャズの力で社会を変えていけることを信じて疑わなかった。パット・トーマスの著書『Listen, Whitey! The Sights and Sounds of Black Power 1965-1975』の中で、エディ・ゲイルは、「社会意識を高める叙情的なジャズ作品でブルーノートのサウンドを変えた」と評されている。
「ブルーノートのカタログの中には、他にも政治意識を持った録音が残されているが、トランペッターのエディ・ゲイルが1968年と1969年に発表した2作のアルバムに勝るものはない。社会的メッセージはさておき、“Ghetto Music”とその続編である“Black Rhythm Happening”は、他のどの作品と比較しても非常にユニークなのだ」とパット・トーマスは続けた。
エディ・ゲイルは、そのキャリアにおいて、世代や多文化コミュニティをつなぐ架け橋を築くためにジャズを用い、音楽を通じて内なる平和の促進に励んだ。彼の教えは忠実な支持者と、25年間に渡る青少年のための奉仕活動を称えるカリフォルニア・アーツ・カウンシルからの“サンコファ賞”や、芸術界の社会奉仕を称える“ジェファーソン賞”など、数々の賞を彼にもたらした。また、2019年のシリコンバレー・アワードでは“ブラック・レジェンドの殿堂入り(Black Legends Hall of Fame)”を果たしている。
地元サンノゼの人々に愛されたエディ・ゲイルは、教育者や主唱者としても同市に貢献した。公立学校での芸術活動を支援し、音楽愛好家を巻き込むために、“エヴァーグリーン・ユース・アダルト・ジャズ・ソサエティ”と共に、We’re Jazzed! Youth /Adult Jazz Festivalを主催し、サンノゼ市内の会場で青少年にパフォーマンスを披露する機会を提供した他、晩年は、サンノゼの若者たちに何十本ものトランペットを無償で配布する活動に取り組んでいた。彼がサンノゼ市に移住したわずか2年後となる1974年に、学校にジャズを普及させたその功績が称えられ、当時の市長だったノーマン・Y・ミネタによって、“サンノゼのジャズ大使”に任命されている。
また、ヘルスケアの提唱者(とりわけミュージシャンのための)でもあったエディ・ゲイルは、募金プロジェクト“Jazz Musicians’ Self-Help Healthcare”を立ち上げ、その収益金を、無保険のミュージシャンへの医療の提供や、彼らとその家族の立ち退き防止など、他多くの重要な奉仕活動を担う“Jazz Foundation of America”の支援に充てていた。
さらにエディ・ゲイルは、20年もの間、サンノゼ州立文化遺産センター(San Jose State Cultural Heritage Center)からの後押しを得て、“Concerts for World Peace ”や“Peace Poetry Contest”、そして“Concerts for Inner Peace”のプロデュースを手掛け、これらのイベントは毎年の恒例行事として、Dr.マーティン・ルーサー・キング・ジュニア図書館とサンノゼのファースト・アフリカン・メソジスト・エピスコパル・ザイオン教会で開催された。また、カリフォルニア・アーツ・カウンシルのアーティスト・イン・レジデンスにも任命された彼は、同団体からの資金援助を受け、サンノゼ州立大学やカリフォルニア州オークランドの会場で即興音楽のワークショップを主催している。
エディ・ゲイルは、4人兄弟のうちの3人と、妻のジョーゼット、前妻のマリーン、ドナ、マーク、シャネル、ジュアナ、グイル、テヨンダという6人の子供たち、12人の孫と11人のひ孫、多くの甥と姪、友人たちに加え、世界中の熱心なジャズ・ファンを後に残した。
Written By Sophie Smith
エディ・ゲイル『Ghetto Music』
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エディ・ゲイル『Black Rhythm Happening』
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