ボブ・ディランやジミヘンのドキュメンタリー監督、マーレイ・ラーナー死去
ボブ・ディランやジミ・ヘンドリックスといった偉大なフォーク、ロック・ミュージシャンの伝説的なパフォーマンスのドキュメンタリー作品の監督マーレイ・ラーナーが、2017年9月2日土曜日に彼の自宅であるニューヨーク州ロングアイランド・シティ、クィーンズの自宅で亡くなった。90歳であった。彼のアシスタントである、エリオット・キシレフによると死因は腎不全だ。。
マーレイ・ラーナーは1960年代中期に開催されたニューポート・フォーク・フェスティバルを4年間撮影し、中でも1965年にボブ・ディランがエレクトリック・ギターを鳴らした瞬間を収めたことで知られている。さらに1970年のワイト島フェスティバルも撮影している。
マーレイ・ラーナーは1927年5月8日、フィラデルフィア生まれ。父親であるナチャムは、彼が幼い頃に家族の元を去り、母である旧姓ゴールディ・レヴィンにミューヨークで育てられた。マーレイは1948年に詩の学位をハーバード大学で取得し卒業。しかし、在学中から彼のキャリアの始まりと言える映画監督を目指すサークルの設立に関わり、自らも映画作りの勉強を始めていた。
1956年、彼が水面下で手がけていた初めての映画『Secret Of The Reef』をロイド・リッター、ロバート・M・ヤングと共に制作。しかし、彼は自らの意思で1963年のニューポート・フォーク・フェスティバルを収録することを決める。彼はその後3年連続このイベントに参加し、ボブ・ディラン、ジョーン・バエズ、ミシシッピ・ジョン・ハート、ジョニー・キャッシュ、ドノヴァン、ピーター・ポール&マリーなど数多くを撮影。それらの素材から完成した初のドキュメンタリー映画『Festival』は1967年に公開された。彼の作品は貴重な資料でもあり、文化を記録した作品となり、アカデミー賞にノミネートされた。
『Festival』制作から40年後、マーレイ・ラーナーは同じ素材からある特定のストーリーに基づいてもうひとつの作品、『The Other Side of the Mirror : Bob Dylan Live at the Newport Fork Festival』を作り上げた。そこには3年分のボブ・ディランのパフォーマンスが収められ、中でも観客から賛否両論があがった(誰に尋ねるかによるが)彼がエレクトリック・ギターを演奏するシーンも含まれており、いかにボブ・ディランが現在に至るまで重要な人物であるかを否応なしに伝えている。
「シンプルであるゆえに素晴らしく純粋で、パワフルなドキュメンタリー」とニューヨーク・タイムズ紙でA.O.スコットは彼の作品を評した。「素晴らしい音質、白黒のフォトグラフィーも素晴らしい、そして何より彼らの真面目で、不思議な栄光を聴くことができる」。
マーレイ・ラーナーは、1970年にイギリス南岸で、恐ろしく強烈なラインナップで何万ものファンを集め、その多くがチケットを持たない観客だったワイト島フェスティバルを記録したドキュメンタリー・シリーズを発表。フェスティバルは、ファンたちにより柵がなぎ倒され、一部のパフォーマンスを中止に追い込むまでとなった。
マーレイは1991年に『Jimi Hendrix At The Isle Of Wight』をリリースし、その後フェスティバル全体を記録したドキュメンタリー作品『ワイト島1970/輝かしきロックの残像』を1996年に発表。こちらの作品にはザ・フー、ジェスロ・タル、マイルス・デイヴィス、そしてレナード・コーエンのパフォーマンスなどを収録。そして、マーレイ・ラーナーは自分の亡くなる直前に、ワイト島でのジョニ・ミッチェルの パフォーマンスを集めた作品を完成させたばかりであった。
皮肉にも、彼が唯一アカデミー賞を手に入れることが出来たのは、1981年に制作した『毛沢東からモーツァルトへ/中国のアイザック・スターン』という全く異なるジャンルの作品であった。このドキュメンタリーはヴァイオリニストであるアイザック・スターンが1979年に中国を訪れ、1976年に亡くなった毛沢東を追悼するという文化的に重要なイベントを記録し、絶賛された。
2011年に行われたインタビューはYouTubeで閲覧でき、良質な音楽ドキュメンタリーには何か自分の要素を入れるものだと語った。
「私は自分の感じたことを記録している、ただコンサートを記録しているだけとは違うんだよ」。「多くの人が素晴らしいグループが目の前にいてカメラのスイッチを入れれば、それだけで良いと思っているが、そうじゃないんだ」と彼は付け加える。「私がバンドを撮影するときは私はバンドの一員なんだ。そこが秘訣であり、秘密なのかもしれない。(これは秘密だから)誰にも言うわないでくれよ(笑)」。
Written by Team Peacok