ロックンロールの元祖の一人、チャーリー・グレイシーが86歳で逝去。その功績を辿る
1957年発表のヒット・シングル「Butterfly」でミリオン・セラーを記録したロックンロールの元祖の一人、チャーリー・グレイシー(Charlie Gracie)が、現地時間2022年12月17日に86歳で逝去した。現時点で死因は明かされていないが、彼の公式フェイスブック・ページは、近日ファンに向けて正式な声明を発表することを約束している。
フィラデルフィア出身のチャーリー・グレイシーがカメオ-パークウェイ・レコードからリリースした初期の作品は、大西洋を越えて、ザ・ビートルズ(特にポール・マッカートニーとジョージ・ハリスン)、ヴァン・モリソン、グラハム・ナッシュなど後に次世代のスターとなる若手ミュージシャンたちに多大な影響を与えた。彼は、初期の成功以降もそのキャリアを通して英国のファンとの絆を深め、しばしば英国を訪れてはツアーを行っていた。
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その生涯
1936年5月14日、チャールズ・アンソニー・グラーチとして生まれた彼は、幼い頃にサックスに慣れ親しみ、10歳でギターを弾き始めた。その早熟な才能で1950年にバンドリーダーのポール・ホワイトマンが司会を務めるティーンの才能発掘番組“Teen Club”に出演すると、翌1951年にはキャデラック・レコードからのデビュー・シングル「Boogie-Woogie Blues」をリリースし、その後トゥエンティース・センチュリー・レコードでも楽曲を録音。彼は、当時の人気音楽番組『バンドスタンド』(後の『アメリカン・バンドスタンド』)のレギュラー出演者でもあった。
1956年にピアニストのバーニー・ロウが立ち上げた新レーベル、カメオ-パークウェイ・レコードと契約した彼は、その直後から急速に成功を収めていく。1957年初頭に発表したバーニー・ロウとカル・マンの共作曲「Butterfly」で米ビルボードのジューク・ボックス・チャートで2週にわたって1位を獲得した他、全英チャートでは12位を記録。同時期に多くのカヴァーが録音されていたこの時代において、アンディ・ウィリアムズによるヴァージョンは、米英の両チャートで1位に輝いている。
さらに、同年リリースした「Fabulous」は、大西洋の両側で再びベストセラーに返り咲いた。全米でTOP20入り、イギリスでは8位を記録した同曲は、彼のイギリスでの人気を際立たせ、彼は1957年と1958年にイギリスで2度にわたるツアーを行っている。
1957年夏に発表したジミー・ウェイクリーの1940年代のカントリーNo.1ヒット「I Love You So Much It Hurts」のカヴァーは、アメリカではマイナー・ヒットに終わったが、イギリスでは自身最高位となる6位を記録。彼は1960年の「Cool Baby」でも全英チャート入りを果たしている。
その後も、コーラル、ルーレット、フェルステッド、ダイアモンドなどのレーベルで録音し、元祖ロックンローラーとして愛されながら、2000年代までアメリカやヨーロッパで大規模なツアーを行った。
2011年、ABKCOはアル・クーパーとクエンティン・ジョーンズがプロデュースしたトリビュート・アルバム『For The Love of Charlie』をリリースし、チャーリー・グレイシー本人やグラハム・ナッシュ、ピーター・ヌーンといったゲストが参加した。また、2011年から2016年にかけては、ニュージャージー州の放送局WVLTのラジオ・シリーズ「A Fabulous Hour with Charlie Gracie」で司会を務めている。
1999年、ポール・マッカートニーは、彼の思い入れのあるロックン・ロール・ナンバーを愛情たっぷりに歌うアルバム『Run Devil Run』の中で「Fabulous」をカヴァーしており、同アルバムのリリース・パーティーにチャーリー・グレイシーを招待した。今年リリースされたボックス・セット『The 7″ Singles』にも同曲は収録されている。80代に突入した2019年、チャーリー・グレイシーは、マーティー・ワイルド、マイク・ベリーらと再びイギリス・ツアーを行っていた。
Written By Paul Sexton
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