英国人歌手のヴィンス・ヒルが89歳で逝去。その功績を辿る
60年代の全英チャートに頻繁に登場し、テレビ出演やライヴ活動で長年人気を博していた歌手のヴィンス・ヒル(Vince Hill)が7月22日、89歳で逝去した。彼は8曲の全英トップ10ヒットを持ち、1967年に、リチャード・ロジャース作曲とオスカー・ハマースタイン2世作詞によるミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の劇中歌「Edelweiss」のカヴァーで全英2位を獲得したことで最もよく知られている。
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ヴィンス・ヒルのSNSからは次のような声明が発表されている。
「誰も聞きたくなかった悲しいニュースを共有しなければなりません。大変遺憾ながらヴィンスが私たちのもとを去ったことをお知らせします。彼は自宅で穏やかに息を引き取りました。ヴィンスは音楽的なレガシーを築いてきました。彼の曲は私たちの心に永遠に残るでしょう。V、あなたという素晴らしいレジェンドに献杯を捧げます」
BBCベテラン・パーソナリティとして知られるトニー・ブラックバーンはこう追悼を捧げている。
「歌手のヴィンス・ヒルが、昨日亡くなったとの報せを聞いて大変悲しいです。60年代に同じエージェントに在籍していましたが、とても素敵な方でした。素晴らしい歌声の持ち主で、1967年の“Edelweiss”のカヴァーは大ヒットしました。安らかにお眠りください、ヴィンス」
ウェストミッドランズにあるコベントリーのホルブルックス地区で生まれたヴィンス・ヒルは、10代で公の場で歌い始め、数々の日雇い仕事で下積み生活を送りながらプロの道に進んだ。
ヴォーカル・グループ、ザ・レインドロップスでの活動を経て、ソロ・アーティストへと転身した彼は、1962年にピカデリー・レコードからリリースした「The River’s Run Dry」で初めて全英チャートにエントリーを果たした。その3年後、EMIの英コロムビア・レコードとの新たな契約により運が上向き、1966年初めには「Take Me To Your Heart Again」で自身初の全英トップ20ヒットを記録。
1967年の「Edelweiss」は、同じく当時の英エンタメ界で絶大な人気を誇っていたエンゲルベルト・フンパーディンクの「Release Me」によって惜しくも1位獲得を逃したが、その後も、ヴィンス・ヒルは第一次世界大戦中の人気曲「Roses of Picardy」のカヴァーや、1971年の「Look Around」で全英トップ20入りを果たす成功を収めた。
彼はロンドン・パラディウムやトーク・オブ・ザ・タウンで単独公演を行うなど、トップクラスのエンターテイナーとしての地位を確立し、後にラジオの「Desert Island Discs」やテレビの「This Is Your Life」の題材にもなった。晩年は、家族の悲劇や健康問題を乗り越えながら、多忙なスケジュールでライヴ活動続けていたが、加齢黄斑変性症により、引退を余儀なくされた。
Written By Paul Sexton
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