ブライアン・メイが『無敵艦隊スター・フリート』メンバーとの出会いを語る
2023年7月14日に発売されるブライアン・メイ + フレンズ(Brian May + Friends)による 『Star Fleet Project(無敵艦隊スター・フリート)』の40周年記念リマスター・エディション。
本作は、1983年4月21日と22日、エドワード・ヴァン・ヘイレン(ギター)、アラン・グラッツァー(ドラムス)、フィル・チェン(ベース)、フレッド・マンデル(キーボード)といった、ロック・ミュージック界に燦然と輝くトップ・アーティスト達と共に、ブライアンがロサンゼルスのレコード・プラントで過ごした2日間の記録が完全収録されたもの。
この新発売に際してブライアンがYouTubeで語った第2回目のミニドキュメンタリーの翻訳を掲載。(第1回はこちら、第3回はこちら)
<関連記事>
・ブライアン・メイ『Star Fleet Project』40周年盤を発売
・クイーンのブライアン・メイ、英国叙勲の式典で“ナイト”の爵位を授与
・クイーン、ライヴ・エイドの伝説的パフォーマンスをリハーサル映像と共に振り返る
エディ・ヴァン・ヘイレンとの出会い
エド・ヴァン・ヘイレンはとんでもない天才だから、あえて説明する必要はないだろうね。彼とは、ブラック・サバスのメンバーで親友でもあるトニー・アイオミの紹介で知り合ったんだ。ヴァン・ヘイレンがブラック・サバスの前座を務めた日に、私もそのステージを見に行ったんだ。だって、そんなチャンスの見逃すわけにはいかないだろう?
会場はミュンヘンのサーカス・クローネだった。私にとってはトニーの演奏を見るのも久しぶりだったし、ヴァン・ヘイレンのステージは見たことがなかった。幸運にも開演に間に合ってエドの演奏を見られたんだけど、衝撃を受けたよ。「おいおい、これは一体なんだ?この男は何者なんだ?どうやって弾いているんだ?」ってね。彼が指をどう動かしているのか、どうやって弾いているのか、まるで見当がつかなかったんだ。
その衝撃は、初めてジミ・ヘンドリックスの演奏を見たときの感覚に似ていた。「どうやったらあんなことができるんだ? 魔法のようなまったく新しい演奏ができるのはなぜなんだ?」って感じだ。とにかくあの晩のエド (・ヴァン・ヘイレン) は素晴らしかった。そのあと、トニーと私とエドで集まって話したんだ。それで、私たちはすぐに仲良くなった。エドは私たち二人から大きな影響を受けたと言ってくれたんだ。すごく嬉しかったよ。そうして色んなことを話し合ううちに、私たちは友人同士になったんだ。
ベーシスト:フィル・チェン
フィル・チェンは素晴らしい人物だった。彼はジャマイカ出身だけど、生まれはUKのはずだ。明るくてハツラツとした性格で、ベーシストとしてはタイトでユーモア溢れる演奏が彼の魅力だった。自信たっぷりにベースを弾くんだ。
彼は長いあいだロッド・スチュワートのバンドにいたから、会う機会も多かった。ロッドと彼のバンドに偶然出くわすことがよくあったんだ。だから、軽くお酒なんかを飲みながら、彼とはかなり長い時間を一緒に過ごした。でも、紅茶を飲んでいることが多かったかな。彼は大酒飲みじゃなかったんだ。私も飲み過ぎることは ―― たまにはあったけど ―― ほとんどなかった。ともあれ、そんな風にしてフィルに出会ったんだ。
フィルには独自のスタイルがあって、彼の弾くベースは一風変わっている。ロッド・スチュワートの曲で「Do Ya Think I’m Sexy?」というのがある。あの曲の“ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ”というベースこそが、フィルの真骨頂なんだ。彼はあの曲で、すごく特徴的な自分のスタイルを披露した。ジャマイカ的というか、レゲエ風でもあり、ロックンロールらしさもあるスタイルだ。実にユニークなミュージシャンだったよ。
ドラマー:アラン・グラッツァー
それから、REOスピードワゴンのドラマーだったアラン・グラッツァー。REOスピードワゴンはアメリカの中西部にいたころの私たちと共通する部分がとても多かった。私たちがまだ駆け出しで苦労していたころだ。当時はエアロスミスや、スティクス、そしてREOスピードワゴンなどがいて、そんな一群に混じってクイーンも活動していた。
イングランド出身の私たちは“よそ者”ではあったけど、劇場からアリーナ級の会場にステップ・アップするために彼らと同じライヴ・シーンで切磋琢磨していたんだ。だけど不思議なことに、なぜだかREOスピードワゴンと一緒になる機会はなかった。彼らのライヴを見たことは一度もないはずだよ。だからアランと初めて会うことになったとき、自分が彼らのことをどれだけ知っているか事前に下調べをしたんだ。すると、彼らの大ヒット・シングルは何曲か聴いたことがあった。
アランは私の出会ってきた中で一番強くドラムを叩く人物だ。太いオーク材のドラム・スティックを使って ―― 確かオーク材だったと思う ―― それを逆さにして叩くんだ。つまり、スティックの太い部分を握るんじゃなくて、太い部分をドラムに当てるのさ。もちろん、だからといって音を録りやすいというわけではないんだけど、とにかくドラミングが力強くてエネルギッシュなんだ。実のところ、彼のドラムをうまく録音するのは至難の業だった。
エンジニアも彼の音を録るのに苦戦していたと思う。ミキシングをやり直す中で何点か修正を施して、それでドラムの音をうまく馴染ませたんだ。アランと一緒に出来栄えを確認したんだけど、彼は満足してくれていたよ。彼もその新しいドラム・サウンドを気に入ってくれたし、私も気に入っている。とにかく彼は強烈なドラマーだね。さっきも話したように、彼らとは育ってきた環境こそ違うけど、共通点がとても多かったんだ。
キーボード:フレッド・マンデル
最後にフレッド・マンデルは、個性的で面白い人物だ。“偶然キーボードの名手でもあった、一発屋コメディアン”という感じかな。とにかく、じっと大人しくしていることがないんだ。彼はレコーディングの盛り上げ役だね。
『Star Fleet Project』のレコーディングでもふざけて楽しませてくれていたのがわかるはずだよ。だけどキーボードに関して ―― 特にピアノについて ―― いえば、彼は素晴らしい感性に恵まれている。少しクラシック的でもあって、エルトン (・ジョン) のような雰囲気があるんだ。実際、彼はエルトンとも共演していたことがある。そうそう、エルトンのバンドにキーボード奏者がいたんだよ。そんなの、上手い人に決まっているよね。
エルトンのバンドではシンセを弾いていることが多かったけど、エルトンが彼を高く買っていたことは間違いない。それは私たち (クイーン) も同じで、「Radio Ga Ga」や「Machines (or Back to Humans)」などたくさんの曲のレコーディングに彼を起用した。彼はシンセで私たちにできないような演奏をしてくれたんだ。私たちはシンセに馴染みが薄かったからね。彼はすごく達者で、本当に素晴らしいミュージシャンだった。そう、彼が5人目のメンバーだ。
Written By uDiscover Team
2023年7月14日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Amazon Music
- クイーン アーティスト・ページ
- クイーンのデビュー作発売50周年を記念して、BBC Radio 2が楽曲のリスナー投票開始
- クイーン「Now I’m Here」:ライヴのオープニング曲として愛されてきた不滅のアンセム
- クイーンのブライアンとロジャーが語るオープニングの重要性と彼らの哲学
- クイーン、ライヴ・エイドの伝説的パフォーマンスをリハーサル映像と共に振り返る
- クイーンのブライアンとロジャーが語るライヴでのリハーサルの重要性と“カイゼン”
- クイーンの歴史を紹介する映像全50本が約1年間かけて毎週公開
- クイーンによるライヴ・エイドでの21分間の伝説的パフォーマンス
- 映画『ボヘミアン・ラプソディ』が伝えるクイーンについての10の事実
- 「Bohemian Rhapsody」歴史的名曲の背景と制作秘話
- ロジャー・テイラーの最新ソロ・ライヴ盤が日本でのみ一般発売決定