ブライアン・メイ、1998年のソロ2作目『Another World』が復刻。デラックス盤などで4月に発売決定
長年、どのフォーマットでも入手不能状態だった1998年に発売されたクイーンのギタリストであるブライアン・メイによる2枚目のソロ・アルバム『Another World』が、復刻盤として2022年4月22日に発売されることが発表となった。今回の発売は2021年に発売された『Back to the Light』の復刻に続く発売となる。
ボックスセット、CD、レコード、カセット、デジタルの各フォーマットでの発売となり、日本盤はSHM-CDでのリリースとなり2CDのデラックス・エディションと、1CDの2形態。2CDのデラックス・エディションには1998年のブライアン・メイのツアー・パンフレットのミニチュア(全編英語版)封入される(購入はこちら)。
今回のリイシューにはブライアン自身の他、オリジナル・アルバムで共同プロデューサーを務めたジャスティン・シャーリー=スミス、クイーンとBM Pro Toolsのエキスパートであるクリス・フレドリクソン、そして長年クイーンのアート・デザイナーを担当してきたリチャード・グレイが監修。
本作のマスタリングはボブ・ラドウィックが担当。最高品質を実現するために真正オリジナル・ミックスから細心の注意を払って復元されている。2枚組CDの〈デラックス・セット〉には、アダム・アヤンがマスタリングした『Another Disc』を追加。2CD+1LPの〈コレクターズ・エディション〉には、CD2枚とスカイブルーのカラー盤LP1枚が12インチ四方の蓋付きボックスに収められ、32ページのブックレットとエナメルバッジを同梱。その他、クイーン公式オンライン・ストア限定商品として、ピクチャー・ディスクとカセット・テープのオプションも用意されている。
ブライアン・メイ コメント
「親愛なるリスナーの皆さん、これは僕の “ブライアン・メイ・ゴールド・シリーズ”復刻版の第2弾です。本作は僕にとって史上2枚目のソロ・アルバムで、 前作『Back to the Light』同様 オリジナルのミックスを使用しつつ 磨き直しとリマスターを施し、愛情込めて制作しました。 24年前に発表した『Another World』が、最初に誕生した時のように、 今、生まれ変わったのです」
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2枚目のソロ・アルバム
初のソロ・アルバム『Back to the Light』のツアーを終えた後、ブライアン・メイは新たな可能性への扉を開き始めた。「外の世界から、ちょっとした依頼だとか様々な刺激やインスピレーションを得たんだ」と語るブライアンは、そういった「刺激」を自分のものにし、自らがイメージする通りの2作目のソロ・アルバムを作り上げた。
今回、ブライアンの“ゴールド・シリーズ”復刻キャンペーン第2弾として発売される『Another World』は、クイーンの伝説的ギタリスト兼ソングライターであるブライアンのルーツと彼が到達した領域を、豊か且つ騒々しく、そして十分に立証している作品だ。 開放的なエネルギーと聴く者を虜にする技巧との間を行き来しながら、このアルバムは世界最高レベルの品質を鳴り響かせている。
『Another World』は、コージー・パウエル(本作の発売前に惜しくも逝去)の強力なドラミングに支えられていた前作『Back to the Light』に続く至高の作品だ。屋根を吹き飛ばす勢いの騒々しいロックン・ロール、灼熱のギター、そして脳裏に焼きつくメロディが詰まった1998年6月発表の本作は、様々なインスピレーションの源を消化しつつ、さらに情熱的なカバーも複数収録。 ジェフ・ベックや、フー・ファイターズのドラマーであるテイラー・ホーキンスらをゲストに迎え、危険なまでに無防備な感情と高揚感に満ちた炎を燃え上がらせている。
1998年にリリースされ、プレスからも高く評価された本アルバムからは、「Business」「On My Way Up」「Another World」「Why Don’t We Try Again」といった4枚の胸躍るシングルを輩出。また、ブライアンは自身のバンドを率いて世界各地を巡る42公演のツアーも行い、ロンドンの〈ロイヤル・アルバート・ホール〉をはじめとする有名会場を満員にし、大成功を収めた。
オリジナル版の収録内容
アルバムの冒頭を飾る序曲「Space」では、人が安心して呼吸をし、創造的なことが出来る空間を切り開くという考えを紹介。 聴く者を和ませる穏やかなこの曲の次に控えているのは、ブルドーザーのようにザクザクと突き進み、レッド・スペシャルが咆哮する「Business」だ。同曲は元々、1993年に放映されたイギリスのテレビ番組(*コメディ・ドラマ)『フランク・スタッブス・プロモーツ』のために依頼されたもの。コージーの貢献を前面に押し出しつつ、ブライアンはこの“永遠の楽天家”の物語を自分のものにした。ブライアンは当時こう語っていた。
「すぐに激しいドラム・トラックが入ってくるんだけど、それがすごくコージーらしいんだ。そこが極限まで強大に響くよう、意図的に仕上げている。コージーの人生を出来るだけ強烈に刻み付けたいからね。大事なのは、誰かが打ち鳴らしている楽器の音自体じゃない。この男の内なるエネルギーと強さと楽観性とを表現するってことが肝心なんだ。彼はこのアルバムで極めて重要な役割を担っている。彼を失ってしまって、これから一体どうすればいいのか途方に暮れているよ」。
遊び心のあるライヴの必殺曲「China Belle」でも、本作の燃え上がる炎が鎮まることはない。続く「Why Don’t We Try Again」では、ブライアンが心の奥底を掘り下げながら哀愁を帯びたバラードを披露。数年前に書き上げられていたものの、クイーンでやるには個人的過ぎると判断されていたこの曲では、ブライアンの声域が揺るぎない確かなものとなっている。
ブライアンのソロ・コンサートの定番曲「On My Way Up」は、クイーンのアルバム『Made In Heaven』の制作が続行する中、テレビ番組『フランク・スタッブス』のシリーズ2用に依頼を受けて書かれた、伝染性の高い痛快娯楽曲だ。 キャシー・ポーターとシェリー・プレストンというバッキング・ヴォーカルの2人が、同シリーズの主人公スタッブスのキャラクターに調和するよう、高らかにそのメロディを歌い上げている。
「この曲の主人公は要するに負け犬なんだけれど、絶対的な信念と非常識なまでの楽観主義の持ち主で、『俺は今そこに向かっているところさ』って調子で成功を目指しているんだ。そういったことがこの曲のテーマなんだよ。そしてそこには様々な別のものも染み込んでいる。でも基本的には面白い曲だね。笑えるし、くよくよせずに大きな声で歌える曲だよ」
ブライアンがビデオゲーム『ライズ・オブ・ザ・ロボッツ』及び『ライズ2:レザレクション』とコラボレーションを行った影響で、よりSF的な要素が取り入れられている6曲目の「Cyborg」は、自らを包む“殻”から抜け出したいと願うロボットの視点(人類が別の世界=”アナザー・ワールド”に憧れていることのメタファーか?)を採っており、テイラー・ホーキンスの爆裂するドラムスをフィーチャー。ブライアンは、当時フー・ファイターズに加入して間もなかったテイラーを次のように絶賛していた。
「彼はそれまで他の誰かのためのスタジオ・セッションをしたことが一度もなかったから、ご想像通り、完全に緊張していたんだ。『こいつはめちゃくちゃ最高だよ』って彼は言っていたっけ。この一人の男の全身から、サリー州に撒き散るほどのエネルギーが迸っていたんだ、凄いよね! このトラックからは彼のことがよく伝わってくると思う – そのエネルギー量といったら、常識を超えた素晴らしさだよ」
「The Guv’nor」には、さらにもう一人、別のゲストが登場。これは以前、ルール無用の素手ボクサーを描いた映画用にと作られた曲(その映画は未完成に終わっている)であったが、ゲストのギタリスト、ジェフ・ベックに対するブライアンの敬意が軸となっている。「僕らの世界では、ジェフこそが”ザ・ガヴナー(=親方、頭)なんだ」とブライアン。ヤードバーズの伝説的ギタリストであるジェフ・ベックへの敬愛の念から、彼はこの低音のブルース・ロックの名曲を生み出した。
続く荒涼としたバラード「Wilderness」は、本アルバムの制作終盤に加えられた曲で、ここでも再びブライアンが素晴らしい歌声を披露。そのあとには、彼が影響を受けてきたアーティストへのトリビュートが続く。『Back to the Light』の発表後、ブライアンは『Heroes』と題した完全なカバー・アルバムを制作する構想を描いており、そこには故フレディ・マーキュリーへのトリビュートとしてオリジナル曲「No One But You」も含まれていた。1997年にクイーンが『Queen Rocks』というコンピレーション・アルバムにブライアン作の同曲を採用した際、彼は“ヒーローたち”というコンセプトから脱却。その熱意を『Another World』収録のカバー曲へと注ぎ込んだ。
「Slow Down」はラリー・ウィリアムズの古典的な12小節ブルースで、コージー、ベーシストのニール・マーレイ、クイーンのキーボード奏者スパイク・エドニー、ギタリストのジェイミー・モーゼスと行ったライヴ録音である。
それに続くのが、ブライアンの永遠のヒーロー、ジミ・ヘンドリックスへの類い稀なトリビュートだ。 リキッド・ギターで奏でる「One Rainy Wish」では、ヘンドリックスの名曲を幻想的にアレンジしており、アルバム『Another World』の別世界を思わせる黙想的雰囲気に完全に合致している。ブライアンはこう語る。
「あれはジミの夢を、詞と曲とで正確に表現した曲だった。僕なりの解釈で、それに挑戦してみたいと、ずっと思っていたんだ」
一連のカバーの最後は、ブライアンにとって生々しくも懐かしい曲だ。「All The Way From Memphis」を1973年にヒットさせたモット・ザ・フープルは、クイーンのごく初期、若きクイーンの面々をオープニング・アクトとしてツアーに帯同させてくれた。その大西洋横断の旅こそ、ブライアンがクイーンの壮大なロック・ナンバー「Now I’m Here」を生み出すきっかけとなったのである。その時のツアー経験をブライアンは語る。
「目が眩むほど素晴らしかった。彼らが毎晩“All The Way From Memphis”を演奏するのを見ていたんだけど、会場は地震が起きたかのように激しく揺れたものだった。彼らは本当に素晴らしいライヴ・バンドだったんだ」
モット・ザ・フープルのフロントマンであるイアン・ハンターは、ブライアンによるアドレナリン全開の本カバーに“スペシャル・ゲスト朗読家”として登場している。
アルバムを締め括るのは、ブライアンが手掛けたサウンドトラックから生まれたオリジナル曲だ。『Back to the Light』の発表後、ブライアンは映画『ピノキオ』(1996年)や、ラジオ版『アメイジング・スパイダーマン』など、映画作品用の音楽を折に触れて担当。
アルバム・タイトル・トラック「Another World」は、ブライアンの友人で映画脚本家のピーター・ハウイットが、グウィネス・パルトロウ出演予定の映画『スライディング・ドア』のために曲を依頼した際に生まれた曲だ。それに応じたブライアンが提供したのは、密かな願望や、パラレルワールド、選択しなかった道をテーマにした極上の幻想曲で、映画のストーリーに合わせ愛情を込めて仕上げられている。
しかし、契約上の行き違いから、結局この曲は映画には使われずにいた。ブライアンはこの曲を自身のアルバム『Another World』に収録するため取り戻し、彼のメロディの才を見事な形で証明している。 リイシューCDの最後には、ボーナス・トラックとして「Being On My Own」を収録。これは以前シークレット・トラック扱いされていたピアノ曲で、今回は本作のCDフォーマット内に正式に組み込まれることとなった。
亡き二人に捧げたアルバム
ブライアンにとって『Another World』は、『Back to the Light』発表後に受け入れた“門戸開放主義”という価値観を確認する作品だ。ブライアンはこう言う。
「ここに入っている全ての曲をまとめ上げるまでに、数多くの旅をし、数多くの道を辿らなければならなかったんだ。ブライアン・メイの次のアルバムとして相応しい作品を生み出すためには、自分が何者であるかを再発見しなければならなかった。完全に内省的なアルバムをまたもう1枚作るのは嫌だったから、外に出て沢山演奏をして、進んで様々なプロジェクトに参加することにしたんだよ。外の世界に出て行って、色々なことを経験し、自分のルーツを再発見しようと思ったんだ」
この自己支援プログラムは、様々な形を取って行われた。ブライアンは当時、クイーンのアルバム『Made In Heaven』の制作に時間を注いでいたが、クイーンの活動が徐々に停止へと向かっていたことから、今までは断らざるを得なかった依頼を幾つか引き受けることが可能になった。そういった楽曲の一部が、2枚組デラックス盤『Another World』のディスク2である15曲入りレア曲集『Another Disc』に収録されており、そちらは深い感動を喚び起こす雰囲気で幕を開ける。
アルバム『Another World』は、ブライアンの人生で心から愛された2人の人物、つまり亡き母と、交通事故により1998年4月5日、50歳の若さでこの世を去ったコージーに捧げられた作品だ。1998年の日付で『Another Disc』の冒頭に収録されているコージーに捧げた語りで、ブライアンはこう述べている。
「仲間のコージーがここにいないことで、この先、僕らの人生にどれほど埋め難い穴があいてしまうのか、言葉で言い表すことは出来ません。途轍もなく大きな支えとなってくれた彼は、途方もないエネルギーとオーラの持ち主でした。人生に対する彼の姿勢はこの上ないほど素晴らしく、それが彼の行動全てに染み渡っていたのです」
パウエルのドラムを強調した「The Business (Rock On Cozy Mix)」には、彼のそんな姿勢が轟いている。
ディスク2の内容
また、『Another Disc』には、1998年に『Another World』の購入者限定で入手可能だったEP『Retro Rock Special』用にブライアンがT・E・コンウェイ(T E Conway)という別名義で録音した、カバー4曲を収録。
映画/ミュージカル『ロッキー・ホラー・ショー』の「Hot Patootie」から、バディ・ホリー&ザ・クリケッツの魅惑的な「Maybe Baby」、ザ・シャドウズの刺激的な「F.B.I.」(ステータス・クォーのフランシス・ロッシとリック・パーフィットがレコーディングに参加)、コンウェイ・トゥイッティの不朽の名曲「It’s Only Make Believe」まで、嬉しい曲揃いだ。
このディスクにはその他にも、「Another World」の秀逸なスペイン語ヴァージョン「Otro Lugar」や、インストゥルメンタル版「Cyborg」、ハード・ロック・ギター・ヴァージョンの「On My Way Up」も収録。
また、ブライアン・メイ・バンドの当時のライヴ表現形式を伝える素晴らしいライヴ音源も収められている。「On My Way Up」が活気に溢れている一方、ブライアンが“ここに居ない友”に捧げた「Hammer To Fall」は、愛情のこもった優しげな始まりで幕を開けた後、轟音を立てながらロックン・ロール・ライフへと突入していく。
「Business」の3種の別テイクからは、ブライアンがこのTVシリーズのために“苦心”を重ねたことが窺える。そしてこのディスクの最後を飾るのが、これまでほとんど公には知られていなかった、1980年にブライアンが録音した真情溢れるピアノ・バラード「My Boy」だ。
このアルバムのコンセプト
あらゆる面において、『Another World』はブライアンの個人的な旅路を記録した作品であり、「時空を超えた、ここではない別の場所」を念頭に置きつつ、素朴なまでに正直な感情をその核としている。本アルバムのコンセプトについて、ブライアンはこう説明する。
「このプロジェクトが終わる頃には、自分自身に変化をもたらしていたいと思っていたんだ。『アルバムが完成したら、僕はある旅を終え、ある別の場所に辿り着き、いかにしてそれを成し遂げたかを皆に伝えられるだろう』と考えていた。でも、正直なところ、それは実現出来なかったんだ。このアルバムの真理は、その旅は今も続いているってことなんだよ」。
今回新たに書き下ろした2022版のライナーノーツで、1998年のアルバム発売以来、我々がどれだけ遠くまで旅をして来たかについて記しているブライアン。しかし、同時に、この作品が今の時代に非常に合ったものであるとも述べている。
「ことによれば、2022年、僕らは“もう一つの別の世界”にいるように思えるかもしれません。ですが、それがもし僕らの求めていた世界だとまでは言えないにしても、それでもやはり僕らは、あの完璧な世界に恐らく辿り着くことが出来るのです……そう、夢の中で。僕と一緒に!!!」
力強いロック・アンセムや、率直な切望、華やかなメロディ、そして刺激的なギター・ワークで一杯の『Another World』は、その通りにしようと聴く者を誘う、輝かしいほど魅力的な作品だ。
Written By uDiscover Music
ブライアン・メイ『Another World』
2022年4月22日発売
国内盤2CD / 国内盤1CD
復刻シリーズ第1弾
ブライアン・メイ『Back To The Light』
2021年8月6日発売
(国内盤CD発売は8月11日に変更)
国内盤2CD / 国内盤1CD / 2CD+1LP / LP
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