モータウンのベリー・ゴーディとスモーキー・ロビンソンが、二人で米音楽業界の功労賞を受賞
モータウンが誇る2人のレジェンド、ベリー・ゴーディ(Berry Gordy)とスモーキー・ロビンソン(Smokey Robinson)が、第32回ミュージケアーズ・パーソン・オブ・ザ・イヤー(MusiCares Persons of the Year)を授与された。
“ミュージケアーズ・パーソン・オブ・ザ・イヤー”は、グラミー賞を主催するナショナル・アカデミー・オブ・レコーディング・アーツ・アンド・サイエンスが、毎年音楽業界における芸術的功績と慈善活動に対する献身性を讃えて授与する賞だ。
今年の授賞式では、スティーヴィー・ワンダー、ライオネル・リッチー、テンプテーションズ、クローデット・ロビンソン、フォー・トップスのロニー・マクネア、アブドゥル・ファキールといったモータウンを代表するスターたちに加え、クロイ&ハリー、今年のグラミー賞で最優秀新人賞を受賞したサマラ・ジョイ、コロンビア出身の新星セバスチャン・ヤトラら次世代を担うアーティスト、さらに、5度のグラミー賞を受賞したシンガーソングライターでプロデューサーのレイラ・ハサウェイ、ジョン・レジェンド、マーカス・マンフォード、今年のロックの殿堂入り候補にもなっているシェリル・クロウらパフォーマンスを披露した。
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フォー・トップスによる言葉
この授賞式のステージで、フォー・トップスのロニー・マクネアは次のように語っている。
「私は子供の頃に音楽を始めました。それまではパントマイムをやっていたんですが、10歳くらいの時に、父が母にピアノを買ってきて、いつでもピアノを弾けるようになり、それで両親に弾かされるようになったんです。当時の私はあまり気が進まなかったんですが、今は本当に感謝しています。なぜって、ミシガン州ポンティアック出身の私がフォー・トップスのメンバーになれたのですから」
同じくフォー・トップスのアブドゥル・ファキールはこう語った。
「モータウンに入って、私の人生は変わりました。お陰でとても良い教育を受け、それまでストリートのチンピラだった私の人生と物事の見方を変えてくれました。そしてもちろん、それによって私の未来が変わりました。私たちはそのことをとても誇りに思っています。そして、ベリーとスモーキーを誇りに思っています。才能のある2人は、その全てにおいて報われるべきです」
また、テンプテーションズの唯一の存命創設メンバーであるオーティス・ウィリアムスは、バンドメンバーとともに、「The Way You Do the Things You Do」「Ain’t Too Proud to Beg」「I Can’t Get Next to You」「My Girl」といったグループのヒット曲をメドレーで披露し、エルトン・ジョン、下院議員のナンシー・ペロシとその夫のポール、トム・ハンクス、ゲイル・キング、ナイル・ロジャース、リッチー・サンボラらを含む観客席からスタンディング・オベーションを受けた。
テンプテーションズやスティーヴィーの言葉
テンプテーションズのロン・タイソンはステージ上のMCで次のように語っている。
「モータウンという国がその旗を掲げ、人々の心に平和をもたらしてくれているかのようです。デトロイトから生まれた素晴らしい音楽をベリー・ゴーディが世界的なものにした、という事実は今や確立されています。(オーティス・ウィリアムスを名指しして)そして、テンプテーションズの最後のオリジナル・メンバーである彼はそのメッセージを伝える手助けをしてくれました」
オーティス・ウィリアムスもそれに応えるかたちで、こう付け加えた。
「彼が“確立されている”と言ったのはまさにその通りで、決して崩れることのない礎を築いたモータウンはずっと手付かずのままです」
また、父ドニー・ハサウェイのもと、モータウン、スタックス、そしてソウル・ミュージックと共に育ったレイラ・ハサウェイは、モータウンのアーティストたちは、単に芸術を創造したのではなく、“青写真を作り上げた”とモータウンの功績を讃えている。
「私が聴いて育ったそれらの音楽は、この国のリズム&ブルースやポップミュージックを越え、世界の音楽の基礎となっています。別次元の音楽なのです」
ミラクルズのメンバーで、“ファースト・レディ・オブ・モータウン”として知られるクラウデット・ロビンソンは、娘、息子、孫娘とともにレッド・カーペットに登場し、こう語っている。
「モータウンはすべてを意味します。世界中に多大な影響を与えているモータウンの一翼を担えたことを、とても光栄に思っていますし、この称号を与えてくれたゴーディ氏に心から感謝しています」
長年の友人、仲間、コラボレーターたちが再会を果たしたレッド・カーペットと共に、この夜のハイライトは授賞式を彩った数々のパフォーマンスだった。
スモーキー・ロビンソンとベリー・ゴーディが共作したミラクルズの初期の名曲「I’ll Try Something New」をソロ演奏で、またスモーキー・ロビンソンと共作した大ヒット曲「The Tears of a Clown」をバンド共にレゲエ・アレンジで披露したスティーヴィー・ワンダーは、モータウンで過ごした自身のキャリア初期に思いを馳せ、冗談混じりにこう語った。
「すべての感謝、尊敬、そして愛は、私が歌えないと思っていたベリー・ゴーディに捧げます。本当のことなんです。彼は、“君は演奏はできても、歌は歌えないと言っていました」
会場が笑いに包まれる中、彼はさらに、スモーキー・ロビンソンに「君よりうまく歌える」と言ったことがあることを明かしつつ、パフォーマンスの最後には真剣な表情で、「ありがとう、愛しているよ。ありがとう、愛しているよ」と2人へ感謝の言葉を繰り返した。
スモーキーの言葉
この日の授賞式は心温まる場面が多かったが、最も感動的だったのは、スモーキー・ロビンソンが親愛なる友人であり、コラボレーターでもあるベリー・ゴーディに贈った賛辞だった。
「これまでの人生で、私はいくつかの賞を受賞する機会に恵まれました。しかし、この賞は私にとって本当に特別なものです。なぜなら、世界で最も優れた友人と一緒に受けることができたからです。私が今夜ここ立っているのは彼のお陰であり、彼との出会いが、私の夢を実現するきっかけとなりました。私は、歌手になり、ショービジネスの世界に入り、曲を書き、音楽を作ることを夢見ていました。私が育った境遇から、まさかこんなことが実現できるとは思ってもみませんでした。それでも彼は私を受け入れてくれました。愛してるよ、君は本当にかけがえのない存在なんだ」
Written By Will Schube
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