約90年の歴史で初めて閉鎖されていたアビイ・ロード・スタジオが再開:最初の録音はメロディ・ガルドーの新作
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、約10週間の閉鎖を余儀なくされていたロンドンのアビイ・ロード・スタジオが、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のために再オープンした。ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のミュージシャンたちにとって、ロックダウン後初の再開となった今回のセッションは、ジャズシンガー、メロディ・ガルドーの5作目のスタジオ・アルバムのために行われたものだ。
この日、様々な楽器を持ったマスク姿のミュージシャンたちは、ザ・ビートルズの1969年のアルバム『Abbey Road』ジャケット写真でお馴染みの、新たな塗装が施されたアビイ・ロードとグローブ・エンド・ロードの交差点を歩いて渡っていった。封鎖が始まった3月24日からの数週間、同スタジオは、新型コロナウイルスの感染防止対策として、オーディオ・レコーディングやプロダクションに関する新たな安全基準を導入するために、イギリス中のスタジオ関係者と連絡を取り合っていた。
アビイ・ロード・スタジオの社長であるイザベル・ガーベイはこうコメントを寄せている。
「音楽が、気晴らしになったり、気分を和らげてくれることで、困難な時期を乗り越える手助けをしてくれることは実証済みで、それがかつてないほどに重要視されています。この閉鎖期間中、私たちは、新しい音楽を創りたい、自分たちの気持ちを伝えたいというクリエイティブなコミュニティの欲求を目の当たりにしてきましたし、クライアントからも仕事に戻りたいというリクエストを数多く受けてきました。ですから、安全なレコーディングのための新たな基準を確立した上で、アビイ・ロードを再びオープンすることができて大変嬉しく思っています」
ジャズ・シンガーで、ソングライター、マルチインストゥルメンタリストとしても知られるメロディ・ガルドーが、パリからリモート参加した今回のセッションは、同じくロサンゼルスの自宅からリモート参加した著名プロデューサー、ラリー・クラインによる指揮のもと行われた。
2009年に放送されたTVシリーズ『Live from Abbey Road』のために同スタジオで実際にレコーディングした経験を持つメロディ・ガルドーは、「私たちのセッションが、アビイ・ロード・スタジオ再開後の最初のセッションになることを知って、非常に光栄です。新型コロナウイルスによるロックダウンが実施されるまでの約90年間、スタジオが営業休止したことは一度もなかったと聞きました。第二次世界大戦中も営業していたそうです。ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団がレコーディングを始めたという事実は、全ての関係者にとって安全な方法で、音楽コミュニティが再び軌道に乗るための手助けとなるでしょう。歴史に触れているような気さえします」と語っている。
1931年に設立されたアビイ・ロードは、世界初のレコーディング専用スタジオで、以来、ピンク・フロイド、レディオヘッド、カニエ・ウェスト、オアシス、そして最も有名なザ・ビートルズなど、数え切れないほどの歴史的レコーディングが行われてきた。近年では、フローレンス・アンド・ザ・マシーン、フランク・オーシャン、エド・シーラン、ブロックハンプトン、サム・スミス、アデルらがセッションが行った他、『ロード・オブ・ザ・リング』の3部作、『ハリー・ポッター』、『スター・ウォーズ』などの映画のスコアもこのスタジオでレコーディングされている。
一方、メロディ・ガルドーは、先日、自身のシングル「From Paris With Love」のために世界中のファンやミュージシャンに協力を呼び掛けていた。彼女は失業中のミュージシャンたちを雇う機会をつくり、参加者全員がそれぞれの自宅からレコーディングを行った。またファンは、手作りの愛のメッセージを掲げたビデオや写真などでこの曲のミュージック・ビデオに参加できる。
デッカ・レコードからリリースされるこの曲の収益金は、新型コロナウイルスと最前線で闘うフランスの医療従事者を支援する慈善団体“Protégé Ton Soignant”に寄付される。
Written By Sophie Smith
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メロディー・ガルドー『Live In Europe』