グラスパーやテラス・マーティンらのスーパー・バンド「R+R=NOW」がデビュー

Published on

既に今年8月に行われる東京ジャズやビルボードライブ大阪での来日公演が決定している話題の6人組バンド、「R+R=NOW」(読み:アール・プラス・アール・イコールズ・ナウ)。彼らのデビュー・アルバム『Collagically Speaking』が6月15日に発売されることが決定した。

ロバート・グラスパーの声掛けにより結成されたこのスーパーグループは、メンバー全員が個々で立派に確立された演奏家/作曲家/プロデューサーである為、あくまでもリーダーはおらず、平等主義。それぞれの担当は、ロバート・グラスパーがキーボード、テラス・マーティンがシンセとヴォコーダー、クリスチャン・スコット・アトゥンデ・アジュアーがトランペット、デリック・ホッジがベース、テイラー・マクファーリンがシンセとビートボックス、そして新人のジャスティン・タイソンがドラムスとなっている。このジャンルを超えた集合体は、あくまでもひとつのバンドとして前進しており、バンド名が表している通り、大きな目的を持って活動している。

「R+R とは‘Reflect’(じっくり考える、自分と向き合うなどの意味)と ‘Respond’(応える、対応するなどの意味)なんだよ」とロバートは言う。アイディアをくれたのはニーナ・シモン。彼がニーナのトリビュート・アルバムであり、2015年公開映画『ニーナ・シモン〜魂の歌』(NETFLIX)の為に制作されたアルバム『Nina Revisited: A Tribute To Nina Simone』の共同プロデュースを手掛けていた時だった。政治的発言に対し批判を受け、黙って歌っていれば良いのにと言われたニーナは「私は、時代と向き合うことがアーティストの使命だと思っている」と答えた。「自分の生きている時代と向き合い、応じると、その時代と深く関わる事になる。だから’R’ + ‘R’ = ‘NOW’(現在:いま)なんだ」とロバートは言う。

そういうスピリットを持ったR+R=NOWのデビュー・アルバムは、『Collagically Speaking』と題された。ネオソウル、フューチャー・ファンク、現代のウェスト・コースト・ジャズからアストラル・エレクトロニカ、またインストゥルメンタル・ヒップホップから、ミュジーク・コンクレート、アヴァンギャルド、クラシックまで、ジャンルを超え、メンバーの気分が赴くままに、その場で作曲し、一発録りでレコーディングされたものが収録されている。

 

ゲスト・ヴォーカルが起用されている楽曲もある。世界的ミュージシャンの50セント製作総指揮が企画した米ドラマ『POWER/パワー』で主役を演じるオマリ・ハードウィック、元NFLアメリカン・フットボール選手のテリー・クルーズ(米ドラマ『ブルックリン・ナイン-ナイン』、映画『エクスペンダブルズ』など)といった大人気俳優人に、女優/コメディアン/シンガー/ラッパーのアマンダ・シールズ(全米ヒット・ドラマ『インセキュア』)、リック・ロスに見いだされたラッパー、スターリーやロバート・グラスパー・エクスペリメントのグラミー受賞作『Black Radio』にも参加していたヤシーン・ベイ(モスデフ)、ムーンチャイルドの女性ヴォーカル、アンバー・ナヴラン(ムーンチャイルド)やドレイクがサンプリングした“Closer”のヒットで知られるゴアペレなどがゲストで参加している。それら全てに通じるテーマは、歌詞で歌われる事もあり歌われずに暗示されているものもあるが、ロマンティックな愛、普遍的な愛、システマティックな偏見、女性運動、クワイエット・パワー、ワイルドなクリエイティヴィティ、個々の悲しみや成長などだ。

「バンドメンバー全員が6フィート(約183cm)を超える黒人男性で、決して裕福な家庭で育ったわけじゃない」とスコットは言う。「だから、あの部屋に集まって音楽を作れるようになるまで、それぞれがそれなりの地獄を見てきたし、戦って、鎧を身にまとってやってきた。現実を曲げてでも、今の地位まで上り詰めてきた。皆、その状況を理解しているから、集まれた時は、とにかくお祝いだ!という気分なんだよ」。

グループ結成のきっかけは、ロバートが、2017年にエンパイア・コントロール・ルームで行われたSXSWのライブの為に、オールスター・ラインナップのバンドを集めてほしいと依頼された事だった。コモンからハービー・ハンコック、シェウン・クティまで、様々なアーティストのプロデュースを手掛け、マイルス・デイヴィスやニーナ・シモンの楽曲を現代風にアレンジし、自身の『Black Radio』シリーズでジャズの枠を超え続けるヒューストン出身のオールラウンダーであるロバートが、ベスト・メンバーだと思って選んだのが今回の5人。

photo by Todd Cooper

バンドの全メンバー6人を簡単に紹介しよう、

  • 『Black Radio』でジャズに革命をもたらせたロバート・グラスパー
  • ケンドリック・ラマーの2016年グラミー受賞作『To Pimp a Butterfly』の作者の一人として有名なLA出身のテラス・マーティン
  • 2017年にリリースしたジャズ100周年三部作『The Centennial Trilogy』でアフリカ音楽を取り入れ、大きな注目を集めたカリスマ・トランペッター、クリスチャン・スコット・アトゥンデ・アジュアー
  • スパイク・リー監督映画のスコアを手掛け、マックスウェルの音楽監督も努めた経験を持つフィラデルフィア出身のデリック・ホッジ
  • グラミー受賞アーティスト、ボビー・マクファーリンの長男としてブルックリンで生まれ、フライング・ロータスが主催するインディー・レーベル、ブレインフィーダーで活躍中のテイラー・マクファーリン
  • そしてエスペランサ・スポルディングのバンドでプレイし、ロバート・グラスパー・エクスペリメントのドラマーに就任したミシガン州グランドラピッズで育ったジャスティン・タイソン

この6人のメンバーが持ち寄った幅広い経験が美しく融合するのに、時間はかからなかった。

「リハーサルもなければ、段取りも決まってなかったんだ。ただ簡単なサウンドチェックだけ」とロバートは、オースティンでバンドが初めてパフォーマンスした時の事を振り返る。しかし「俺たちからはヴァイヴスが出てたし、お互いに耳を澄まし、その場で色々な音を生み出していた。ヤバかったよ。だから、ブルーノートから出す自分の次回作を考えた時には“これをやろう”って思った。同じバンド、同じ方法をスタジオに持っていこうと思った」。

そこで4日間、ハリウッドのヘンソン・レコーディング・スタジオにバンドが集結した。次に何が起こるかなんて、誰も考えずに。たまたま、その日程はNBAのオールスター戦の週末で、彼ら自身も同じくオールスターだったが、テラス曰く「スタジオの中で一番大切な存在は音楽だって、誰もが思っていたよ。ああいうプロジェクトで、ああいうバンドでプレイすると、それぞれがジャズのオリンピックでチャンピオンになろうとする事が多々あるんだけど、俺たちは、そこの空気感をリスペクトしてた。忍耐力を持ち、お互いを愛し、ひとつになって動くという良い例として、聴く人に伝わると思うよ」。

R+R=NOWは、アルバム発売して直後、アトランタ、、ワシントンDC、ブルックリンでライヴを行い、その後、世界各地のフェスをはじめ、夏にはヨーロッパ・ツアーを開催。8月末には第17回東京ジャズへの出演をはじめとする日本でのツアーも決定しており、現在(いま)の音を奏でるスーパー・バンドのライヴは見逃せない。


R+R=NOW 『Collagically Speaking』
2018年6月15日発売

01. Change Of Tone
02. Awake To You
03. By Design
04. Resting Warrior
05. Needed You Still feat. Omari Hardwick
06. Colors In The Dark
07. The Night In Question feat. Terry Crews
08. Reflect Reprise feat. Stalley
09. HER=NOW feat. Amanda Seales
10. Respond
11. Been On My Mind feat. Amber Navran
12. Reflect Reprise – MC Rob G Version *
*日本盤のみボーナス・トラック

 

■来日公演
・第17回東京ジャズ
2018年8月31日(金)~9月2日(日)
場所:NHKホール、代々木公園ケヤキ並木ほか
ジャズ公式HP

・ビルボードライブ大阪
2018年8月29日(水)、30日(木)
1stステージ開場17:30 開演18:30
2ndステージ開場20:30 開演21:30
billboard live公式HP


Share this story

Don't Miss

{"vars":{"account":"UA-90870517-1"},"triggers":{"trackPageview":{"on":"visible","request":"pageview"}}}
モバイルバージョンを終了