デンゼル・カリー、日本文化からも影響を受けた新作アルバム『Melt My Eyez See Your Future』を発売
マイアミを拠点に活動するラッパーのデンゼル・カリー(Denzel Curry)が、ニュー・アルバム『Melt My Eyez See Your Future』をリリースした。
5作目のスタジオ・アルバムとなる本作には、同郷のラッパー、T-Painをフィーチャーした「Troubles」、映画 『キル・ビル Vol.2』やサムライ映画からインスピレーションを得た「Zatoichi」、スペース・ウェスタンのような壮大なビデオが制作されたシングル「Walkin」などに加え、サンダーキャッケニー・ビーツ、ロバート・グラスパー、ジェイペグマフィア、スロウタイ、J.I.D, 6LACK、リコ・ナスティー、454らをゲストに迎えた多様なコラボレーション曲が収録されている。
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アルバム『Melt My Eyez See Your Future』は、デンゼル・カリーの音楽的進化を感じさせる作品だ。14曲のそれぞれのトラックの中で、彼はジェダイ・マスター級のフォースを器用に、魔法のように操りながらバーを切り裂き、自身の内外の葛藤を、勇敢に、境界を打ち破るようなディテールでもって描写していく。
デンゼル・カリーの音楽は常に告解であるため、多くのファンにとって、このアルバムにおける大胆な自己探求は驚きではないだろう。自身のセックス依存症を丹念に掘り下げた同名のオープニング曲から、“アメリカと彼のコミュニティにおける銃暴力”をテーマにした外向的な「John Wayne」に至るまで、これは最も美しく、力強いかたちで真実を物語るヒップホップ作品なのだ。
2021年の終わりは、デンゼル・カリーの人格やオルター・エゴ(分身)の終わりという、ひとつの時代の終焉を意味した。新作『Melt My Eyez See Your Future』について、彼はこう語っている。
「俺は伝統的なヒップホップが好きだし、ドラムやベース、トラップやポエムも好きだから、このアルバムには、僕が子供の頃、実家で聴いて育ったジャズや様々なジャンルの音楽など、様々なものが織り込まれている。この作品は、僕がうつ病や怒りに関わる問題を抱えていたために、『TA13OO』や『Imperial』では表現できなかった全ての要素で構成されているんだ」
また、今作を引っさげ、来週から北米を皮切りにワールド・ツアーをスタートし、夏にはヨーロッパとイギリスも廻る予定だ。
Written By Will Schube
デンゼル・カリー『Melt My Eyez See Your Future』
2022年3月25日発売
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