制作の進行が遅かった理由のひとつは、例えば1990年に2作目が出たトラヴェリング・ウィルベリーズや、旧友ラヴィ・シャンカールのアルバム『Chants Of India』のプロデュース、そして1995年に放映されたザ・ビートルズのドキュメンタリー映像作品『Anthology』シリーズの制作など、ジョージ・ハリスンが他の様々な活動に注力していたからである。
傑出したトラックには、他に「Rising Sun(邦題:悠久の輝き)」や「Stuck Inside A Cloud(邦題:あの空の彼方へ)」、そしてジョージ・ハリスン版「Run So Far」等がある。この「Run So Far」は元々、旧友エリック・クラプトンが1989年にリリースしたアルバム『Journeyman』に収録されていた曲だ。 『Brainwashed』でのヴァージョンは、ジョージ・ハリスンとダーニ・ハリスンとジェフ・リンだけで録音した、完全に新しいトラックとなっている。「Stuck Inside A Cloud」は、2002年、本作のラジオ向け宣伝用にプロモCDが配布され、Billboard誌の<アダルト・コンテンポラリー・チャート>でマイナー・ヒットとなった。
「Rocking Chair In Hawaii」は1970年、『All Things Must Pass』の制作中に初めてデモが制作された曲で、本作に収録されているジョージ・ハリスンのオリジナル曲の中で最も古いものだ。更に古いもの、つまり『Brainwashed』の中で一番昔からある曲は、1932年に最初に発表されたスタンダード・ナンバー「Between The Devil And The Deep Blue Sea(邦題:絶体絶命)」である。ジョージ・ハリスンが歌唱とウクレレ演奏を担当しているこのヴァージョンは、1992年にテレビ番組用に録音されたもので、参加ミュージシャンの中には、ピアノにジュールズ・ホランド、ベースとチューバにハービー・フラワーズ、ギターに旧友のジョー・ブラウンがおり、ジョージ・ハリスン自身もウクレレ奏者として中々の腕前を披露している。