コンサートは、ザ・ローリング・ストーンズのモービル・ユニット(*訳注:ザ・ローリング・ストーンズのメンバーが所有していた大型トレイら―に録音機材を装備した移動可能な録音スタジオ)を使って録音された。16トラックの最先端施設では、同年にレッド・ツェッペリンの『Physical Graffiti』やバッド・カンパニーの『Run With The Pack』が録音されている。コンサート中、会場外の道路に停められた移動式スタジオは、コンサートの美しいスピリットを忠実にとらえ、実際のパフォーマンスのちょっとしたミスも全て録音した。これらは綺麗に整えられたり、後で“修正”されることはなかった。「Trenchtown Rock」では、バックのハーモニーが乱れている。「Lively Up Yourself」では、終盤でわずかながらもテンポが上がり続けている。そして、「No Woman, No Cry」のファースト・ヴァースでは、マイクのフィードバックが一瞬聞こえる。
しかし、これでアルバムの試聴体験が損なわれることはない。こうした不完全さが自然なリアリズムを加え、アルバムは圧倒的な魅力を増しているのだ。ザ・ウェイラーズのツアー・マネジャー、トニー・ギャレットによる簡潔な紹介が終わると、アルバムは「Trenchtown Rock」で幕を開け、観客の出す音も即座にパフォーマンスの一部と化す。アルバムのA面で、バンドは「Burnin’ And Lootin’」、「Them Belly Full (But We Hungry)」、「Lively Up Yourself」を演奏。共同体的な心地好いスピリットがアルバムの溝から溢れ出てくる。「I Shot The Sherriff」は、エリック・クラプトンが前年に世界的ヒットを記録したカヴァー・ヴァージョンはもちろんのこと、『Burnin’』に収録されているオリジナル・ヴァージョンよりも遥かに強力だ。そしてグランド・フィナーレを飾る「Get Up, Stand Up」では、観客もコール・アンド・レスポンスで歌っている。コンサート会場で滅多に聴かれることのないほどの音楽的な団結だ。
同アルバム中(おそらくボブ・マーリーの全アルバムの中でも)最も完璧に演奏された曲は、オリジナル・レコード盤でB面の1曲目となる「No Woman, No Cry」だ。この夜に演奏されたこの曲のライヴ・ヴァージョンには、ソウルフルで感情に訴える独特の何かが存在する。オルガンのイントロが始まると、ボブ・マーリーが歌い始める前に、コーラスを歌う声が観客から聞こえてくる。これにより、トレンチタウンの公共住宅でキャンプファイヤーを囲んで座りながら、観客がバンドと一緒に歌っているように聴こえるという、興味深い効果を生み出している。会場のうだるような暑さを少しでもやわらげようと、会場の屋根を開けるという無駄な試みが行われたため、キャンプファイヤーのイメージはそこまで非現実的ではないだろう。7分にわたる同曲の演奏中、観客の喧噪や愛情がはっきりと聴き取れる。そしてボブ・マーリーは、友情と愛の絆が最終的には苦難からコミュニティを救ってくれると歌っている。「Everything’s gonna be all right(全て、うまくいく)」という最後の一節は、楽観主義と解放のマントラで、あらゆる分裂をも乗り越える。冷酷な世界がどんな苦難を用意しようとも、決して挫けることのない人間の魂の強靭さを讃える1曲だ。
「No Woman, No Cry」の『Live!』ヴァージョンは、すぐさま決定的な1曲となった。これはボブ・マーリー初のヒットとなり、1975年にシングルとしてリリースされると、イギリスのチャートで22位まで上がった。また、1981年にボブ・マーリーが亡くなった後に再リリースされると、イギリスで第8位を記録した。アメリカではチャートインを逃したものの、後年ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイム・グレイテスト・ソングの37位にランクインした。
パンクで揺れる激動のロンドンで録音された後期の重要アルバムにして、アイランド第6作。
1999年にタイム誌により、「20世紀最高の音楽アルバム (the best music album of the 20th century)」に選ばれた本作が40周年を迎える今年6月に3枚組豪華エディションで登場!!
オリジナル・ヴァージョンに加え、長男のジギィ・マーリーがセッション・テープを丹念に精査、これまで使われてこなかったヴォーカルや演奏、聴いたことのない歌詞を含めて再構築した”エクソダス40″をDisc 2に、更には7曲の未発表トラックを含む1977年6月1~4日のロンドン・レインボー・シアターでのエクソダス・ライヴをDisc3に収録。
Exodus[輸入盤][UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤][Gold Vinyl][40th Anniversary Limited Edition] 【アナログ】