韓国を代表するテノール・シンガー、イム・ヒョンジュが日本語で歌う「春よ、来い」

Published on

ローマ法王とイム・ヒョンジュ @Vatican Media

ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第93回。

今回は、今年日本20周年を迎えた韓国を代表するテノール・シンガー、イム・ヒョンジュについて。

<関連記事>
エルトン・ジョン、自身のドキュメンタリーのためにブランディ・カーライルと新曲を共作
エルトン・ジョンの新ドキュメンタリー『Elton John: Never Too Late』の予告編公開


 

ユーミンも認めた「春よ、来い」

2024年、日本デビュー20周年を迎えた韓国を代表するテノール・シンガー、イム・ヒョンジュ。彼は、オペラティック・ポップ・テノール=ポペラを世界へ広めた第一人者であり、今年韓国の国民栄誉賞を叙勲したビッグ・アーティストでもあるのです。そんな彼を、私は、親しみを込めてヒョンジュ君と呼んでいます。

松任谷由実のユニットFriends Of Love The Earthのメンバーとして、愛・地球博閉幕式のステージを踏んだのが2005年でした。ユーミンのピアノ伴奏で歌う「春よ、来い」のコラボレーションは、当時19歳でしたが、堂々としたものでした。その年には、Friends Of Love The Earthが紅白歌合戦に中継地上海から出演し、オリジナル曲「Smile again」を歌いました。後日、瞬間最高視聴率42.5%を叩き出した時には、大喜びしたものです。

「春よ、来い」は、イム・ヒョンジュのデビュー・アルバム『Salley Garden』のボーナストラックとして日本盤に収録されました。その音源を気に入ってくださったことがきっかけとなり、ユーミンのユニットに参加することになったという経緯があり、日本デビュー20周年の記念曲は、迷うことなく「春よ、来い」の再カバーになりました。

17歳の時の歌声は、日本語がまだわからない時代のレコーディングでしたので、日本語を積極的に話し、日本のドラマを毎日観ている今のヒョンジュ君が表現する「春よ、来い」は、歌としての深みを増しました。そして、特別なものに仕上げるために、LUNA SEAのSUGIZOさんにヴァイオリンを弾いていただき、さらに新しい「春よ、来い」として完成しました。ユーミンからも「最高のカバー」とお褒めをいただき、感動してくださいました。

 

プロモーション来日での出会い

私はこの楽曲のプロデュースに関わっているのですが、20年間ヒョンジュ君を近くに見てきた立場として、その成長振りが感じられる楽曲に仕上げられたのではないか、と自負しています。嬉しいニュースとしては、韓国GENIE MUSICクラシック・チャートの1位に輝いたと。日本語による楽曲がクラシックのトップを飾るのは、初めてのことだそうです。

本国では、クラシック界を牽引しているヴォーカリストとして、揺るぎない地位を確立していますが、日本では、10年振りの正式なリリースのため、2週間のプロモーション期間を精力的に活動しました。お世話になった懐かしい人たちに会うのも楽しみの一つでした。

SUGIZOさんとは、ソウルと東京、別々に録音をしたので、日本で初対面。それにしても作品は、会っていないにも関わらず、お互いの想いが通じたかのような素晴らしい音の世界が展開されています。いつかステージ上でのコラボレーションが実現されたらと夢が膨らみました。さっそく、LUNA SEA東京ドーム公演を観る約束をしていました。

松任谷由実さんは、せっかくプロモーションで来日したのだから、とご本人のSNSに生歌披露の動画をアップしてくださいました。こんなことってあるんでしょうか? ユーミン、マネージャーさんに感謝です。

さらに、ヒョンジュ君のサントリーホールでのコンサートにゲスト出演してくれた平原綾香さんともお互いの近況を報告し合うことができました。

ポペラというジャンルは、20年経ってもなかなか日本には浸透しないのですが、サラ・ブライトン、イル・ディーヴォもそのジャンルに属すると言えます。ローマ法王の前でも披露した癒しの歌声は、多くの人を感動させる不思議な力を持っています。ヒョンジュ君の歌声は、日韓国交成立60周年を迎える2025年も、さまざまなプロジェクトを実現させ、両国の架け橋となって活動していくことでしょう。それを使命だと感じているイム・ヒョンジュです。

Written By 今泉圭姫子


イム・ヒョンジュ「History Of Love」
2024年12月12日配信
iTunes Store / Apple Music / Spotify / YouTube Music / Amazon Music


イム・ヒョンジュ(Lim Hyung Joo)Profile

1986年5月7日、ソウル(韓国)生まれ。 12歳でデビューし、その歌声から≪声楽の神童≫と称され、オペラとポップスを融合した≪ポペラ≫という新ジャンルを確立し、韓国で社会現状を巻き起こした。 その後、数々のコンクールで優勝。ジュリアード音楽院の予備学科で声楽を学びながら、2003年、アルバム『Salley Garden』で世界デビュー。アルバムは、クラシック・チャートで週間、月間、年間すべてにおいて1位を記録し、国内だけで40万枚以上を売り上げている。

同年2月には、ノ・ムヒョン元大統領の就任式で、歴代最年少歌手として国歌を披露、一躍韓国を代表するアーティストとしての地位を築いた。また6月には、ニューヨーク・カーネギー・ホールにて、海外で初のデビュー・コンサートを行い成功した。

2004年1月、デビュー・アルバム『サリー・ガーデン / Salley Garden』を日本でリリース。日本盤ボーナス・トラックとして松任谷由実の「春よ、来い」をカバーし、その歌声の美しさから、のちに松任谷由実が手掛けるコラボレーションFriends of Love The Earth参加の招待を受ける。

日本デビュー曲となる「サリー・ガーデン / Salley Garden」は、コンピレーション・アルバム『Image4』にも収録され、アルバムはオリコンウィークリー16位、ヒーリングミュージック&クラシカルクロスオーバー・チャート1位となった。

アジアのミュージシャンによる、“音楽でアジアが繋がる“をテーマにしたFriends Of Love The Earthは、2005年9月23日愛・地球博の閉幕式に、「YUMING Love The Earth Final」の中で登場し、ヒョンジュは「春よ、来い」を松任谷由実と共演し、Friends of Love The Earthの5人のメンバーによるオリジナル曲「Smile again」を初披露。同年12月31日には、第56回紅白歌合戦に上海から出演し、瞬間最高視聴率42.5%を叩き出した。2011年3月には、東日本大震災の復興を祈願して放送されたフジテレビ『FNS音楽特別番組 上を向いて歩こう 〜うたでひとつになろう日本〜』で、松任谷由実の呼びかけによりメンバーが再集結し、「Smile again」を生歌唱している。

その後コンスタントにアルバムをリリース。2013年にはJ-Popのカバー・アルバム『Two Hearts, One Love』を発売。2014年5月にはUniversal Koreaにレーベル移籍。「千の風になって」の韓国語ヴァージョンがセウォル号の事故の被害者への追悼歌として多くの人に聞かれ、韓国人の心を癒した。

2015年には日本語楽曲も収録した『Finally』をリリースし、翌年、日韓国交正常化50周年を迎え、4月サントリーホール・ブルーローズ、12月には韓国文化院の招聘で、大阪いずみホールにて単独ライヴを成功させ、その後入隊する。そして、約10年振りに、日本デビュー20周年記念曲として、思い出の「春よ、来い」をLUNA SEAのSUGIZOがヴァイオリンで参加した新録音としてリリースした。

2024年5月23日、音楽で青少年を対象とした文化芸術教育の功労が認められ、国民福祉の向上と国家発展に貢献した人に与えられる国民勲章冬柏章を授与された。


今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー

 

Share this story


Don't Miss

{"vars":{"account":"UA-90870517-1"},"triggers":{"trackPageview":{"on":"visible","request":"pageview"}}}
モバイルバージョンを終了