ABBA最新のベスト盤『The Singles』と国王/王妃からの勲章の授与やその功績
ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第90回。
今回は、10月に世界デビュー50周年を記念した最新のベスト・アルバム『The Singles』を発売したABBAについて。
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国王・王妃から勲章の授与
2024年5月31日、ストックホルムのロイヤル・パレスにて、ABBAのアグネタ・フォルツコグ、ビョルン・ウルヴァース、ベニー・アンダーソン、アンニ=フリッド・リングスタッドに、スウェーデンのカール16世グスタフ国王とシルヴィア王妃からヴァーサ勲章が授与されました。
フリーダは真っ白のドレス、アグネタはオフホワイトのドレス、ベニーとビョルンは、ノータイのスーツ姿で登場しました。フリーダが杖をついていたのが気になりましたが、とても厳かな雰囲気の中で、ゆっくりと席に着く4人が揃って公の前に姿を表すのは、2022年5月に行われたヴァーチャル・コンサート『ABBA VOYAGE』の開幕以来のことです。動画サイトを通して、全編見ることができますが、一人一人名前が呼ばれ、国王から勲章を授与される式典は、シンプルながらも、格式の高さを感じ、国内でライヴ放映され、ストリーミングでも世界に発信されました。
このヴァーサ勲章は、スウエーデン国から、その努力に対する感謝として贈られる賞ですが、1975年にスウェーデン国民への勲章授与が停止されていました。それが、2022年になって、スウェーデン国民への王立騎士団勲章の授与が復活し、およそ半世紀ぶりに、スウェーデン国民に勲章が授与されることになったという経緯があります。
ABBAは、1982年に活動を休止していますが、これは解散ではなく、あくまでも休止であったことは、2018年4月、活動再開宣言する際に明らかになりました。多くのファンを喜ばせることとなったABBAの復活は、2021年の最新作『Voyage』をリリースしたことにより現実となったのです。
それからは、ロンドン・オリンピック会場の跡地に作られたABBAアリーナでのヴァーチャル・コンサート「ABBA VOYAGE」を長期にわたって開催、2013年からオープンしていたスウェーデンでのミュージアムには彼らの軌跡を称える聖地に多くのファンが訪れ、改めてABBAの功績に圧倒されました。
ミュージカルで映画化もされた『マンマ・ミーア』でABBAを知った若いファンにも、彼らのポップ・ミュージックの素晴らしさを、さらに深く知る機会があるということは、ストリーミングでしか聴かなくなってしまった音楽ファンに、新たな音楽の楽しみ方を提供し、ABBAは新しい時代になっても音楽業界に刺激を与えてくれる存在であることがわかります。
世界デビュー50周年のベスト盤
そんなABBAは、世代を超えたファンに届けるベスト・アルバムを節目節目でリリースしてきました。今年は、世界デビュー50周年を迎えた記念すべきベスト・アルバム『The Singles: The First Ten Years』です。これは、1972年に発売されたビヨルン、ベニー、アグネタ、アンニ・フリード名義による、実質デビュー・シングルとなった「People Need Love」がオープニング曲、国内でヒットした3曲目の「Ring Ring」の流れを受け、ようやくABBA名義の「Waterloo(恋のウォータールー)」に繋がる選曲になっています。そしてアルバムは2021年の『Voyage』からの5曲で締められ、まさに50年の歴史が詰まった選曲になっています。
ヴァーサ勲章の式典で4人が揃って立つ姿を見ながら、音楽業界に多大なる功績を残し、現在も素晴らしい楽曲が世界に流れ続けているグループの姿に感動を覚えました。ABBAのサウンド、メロディ、歌声は、時代を超越した作品ばかりです。
1974年に、ユーロビジョン・ソング・コンテストで優勝した時から50年、名曲の数々は、色褪せることなく、世界中の人たちが口ずさむ歌として、聴かれ続けています。ちなみに私のフェイヴォリットは、「Knowing Me, Knowing You」「The Name of the Game(きらめきの序曲)」「Summer Night City」です!みなさんの究極のABBA Songは?
Written By 今泉圭姫子
2024年10月25日発売
日本盤デラックス・エディション/通常盤で発売
著者の新刊
『青春のクイーン、永遠のフレディ 元祖ロック少女のがむしゃら突撃伝』
2023年9月5日発売
発売
今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー
- 第1回 :U2『The Joshua Tree』
- 第2回 :バグルス『ラジオ・スターの悲劇』
- 第3回 :ジャパン『Tin Drum』(邦題:錻力の太鼓)
- 第4回 :クイーンとの出会い…
- 第5回:クイーン『世界に捧ぐ』
- 第6回:フレディ・マーキュリーの命日に…
- 第7回:”18 til I Die” ブライアン・アダムスのと想い出
- 第8回:ロキシー・ミュージックとブライアン・フェリー
- 第9回:ヴァレンシアとマイケル・モンロー
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- 第54回:ABBAの新作と、“第2のビートルズ”と言われていた40年前
- 第55回:ザ・ウォンテッドの復活:休止前の想い出と最新インタビュー
- 第56回:アンとナンシーのウィルソン姉妹、ハートの想い出
- 第57回:80年代後半に活躍したグラス・タイガーを振り返る
- 第58回:ブライアン・メイのソロ2作目『Another World』を振り返る
- 第59回:ブライアン・メイ復刻盤『Another World』の聴き所
- 第60回:ポリスのドキュメンタリー『Around The World』とインタビュー
- 第61回:フィル・ライノットの生涯と音楽を振り返るドキュメンタリー映画
- 第62回:10代のジャネット・ジャクソンとのインタビューを思い返して
- 第63回:ブロンディのデボラ・ハリーとUK音楽シーンの女性達を振り返る
- 第64回:セバスチャン・イザンバールが語る新作や、故カルロス・マリンへの想い
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